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 途中豚学の生徒に絡まれながらも、おれたちが辿り着いたのは屋上だった。


 その屋上で、豚学の生徒がかしずく形でとある人物の方を向いている。


 そこには教師? らしき人物が椅子にふんぞり返っていた。


「おい! 酒を持ってこい!」


「はっ、ただいま!」


 ん? なんだこの状況は。教師が生徒を従えている? それも生徒を奴隷のように扱っている?


 やだ怖い、豚学の真のボスって教師なの?


「あれが鬼よ」


 と、比渡は言う。


 鬼? ただの鬼教師ってことか? 豚学の生徒よりも確かに鬼っぽいな。


「ん? そこのお前ら、ここの学校の者じゃないな?」


 おれたちに気付いた鬼教師は立ち上がり近寄ってきた。


 ヤバいよヤバいよ、怒られるよ。怒られるだけで済むかな? 奴隷にされちゃったりするかな?


 と、比渡は冷静に竹刀袋から日本刀を取り出した。


 あの比渡ヒトリさん、それって本物の日本刀じゃありませんよね?


 鞘から引き抜くのは真剣そのものの輝きをした刀。


「殺す」


 えぇ? 殺すって比渡ヒトリさん、それはまずいですよ。相手は人間ですよ? 殺したら大事件ですよ。


「ほう、鬼狩りに来たか。まさか女一匹と……なんだその生き物は、闘気も何も感じないぞ」


 と、鬼教師はおれを指差してくる。あ、おれですか? おれは比渡ヒトリの犬です。とは死んでも言えない状況だ。


「これはわたしの犬よ」


「犬? 日本刀を持つ女と犬? さては貴様、犬夜叉の使い手――黒犬か?」


 黒犬? なんかもう話が見えないのだけど、帰っていいかな? おれは争う気はないので、土下座で許してもらえるなら今すぐ土下座します。


「元黒犬だけどね」 


「ほほう、これまで多くの仲間を失ってきたからな。ここで仲間の無念を晴らしてやろう!」


 バキバキ、メキメキと、音を立てて教師は姿を変えた。


 先ほどの教師の見た目はそこには無く、ただの鬼が存在している。


「サア、コイ! ニンゲン!」


 その姿はまさに――鬼だ。


 ひええぇぇぇ! おれは夢を見ているんだ、そうだこれは夢だ。起きろおれ!


 と、自分のほっぺを勢いよく叩いたところで目覚めるわけでもなかった。


「比渡さん、これはどういう状況ですか?」


「あなたの欲していた非日常よ」


 いやいや聞いてない聞いてないよこんなの! おれやっぱり日常の方がいいよ!


「死ね! ニンゲン!」


 鬼はおれを狙ってきた。おれの思考する時間は与えてもらえないらしい。


 と、おれの前に出てきた比渡は鬼の攻撃を日本刀で防いだ。


「この駄犬! 戦えないならさがっていなさい!」


 はい! 分かりました! おれは急いで比渡と鬼から距離を取った。


 こんなの聞いてない、こんな現実あり得ない。非日常なんてまっぴらごめんだ。


「そこのニンゲンを捕らえろ!」


 鬼の命令によって豚学の生徒はおれを捕らえにきた。


 おれを捕らえろだ? これでも逃げ足だけは早いんだぜ。


 と……おれは豚学の生徒に簡単に捕まった。ごめん比渡、おれ捕まっちまった。


「馬鹿犬」


「そこのニンゲンが心配なら武器を捨てろ」


 鬼の命令に対して比渡は刀を地面に置いた。


 クソッ、おれが捕まったせいでこれかよ。


「いい選択だ。おい野郎共、その雑魚は放してやれ。どうせ何もできやしないゴミクズだ」


 ゴミクズだと? そうだな、否定はしない。おれは産まれた時からゴミクズだし今でもゴミクズだ、何も変わっていないだけさ。そう、おれは人間の中でも希少種なんだよ。


 と、おれは解放されたが、比渡は鬼の手に捕まった。


 不意に比渡のポケットから犬用の首輪が落ちたのが見えた。

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