貴方に出逢えてよかった…。
平凡中学校男子が『あくま』で主人公の御話です。
そして擬人化が苦手な方はあまり見ない方が良いかと…。
不束者の駄目文ですが、宜しくお願いいたします。
相崎 穂
ここは〇〇県の〇〇市、殺人事件も誘拐事件や、事故も平均よりは少ない、けれどやはり『安全』とは言えない。
そんな場所にぽつんとぼろくも、綺麗でもない普通の一軒家があった。
周りにはマンションやアパートが沢山あって、その中での一軒家はとても珍しいものだった。
そんな家に住んでいるのは最近親が離婚して、バラバラに暮らすことになった中学校三年生の鈴木拓哉。
拓哉の両親にはもう再婚相手がいて、どちらにも引き取られる事なく、一人で住んでいるのだ。
* * * * *
いつも通り部活を終えて帰ってくる拓哉。その表情は疲れでいっぱいだった。
(はぁ、もう学校なんて嫌いだ。)
もうすぐで中学を卒業する拓哉は密かな願望があった。
(早く、一人から解放されたい。)
両親が離婚したのは丁度半年前、原因は両親諸共不倫をしていたことだ。
両方が不倫していることをしったのは拓哉で、二人に聞いたことが人生の分かれ道だったのだ。
そして一人になった拓哉。半年経っているのにまだ言ってしまう言葉がある。
「ただいま」
玄関の鍵を開けてドアを開けて思わず声を張り上げて言ってしまうその台詞。
拓哉はあちゃーと言う顔をして靴をバラバラに脱ぎ、リビングに向かう。
普通の、平凡な一軒家だが一人で住むのには広くて、部屋が二つ余っているのだ。
そこには嘗ての両親の部屋で何もなく、拓哉は淋しい思いをしていた。
制服を着替えもせずに拓哉は冷蔵庫に入っていたお茶をコップにいれずに一気に飲んだ。
一リットル入りペットボトルだがもう半分もなかった。
ちらりと開けっ放しの冷蔵庫を見た拓哉。
そこには腐りかけた野菜ややたらと沢山ある冷凍食品。
少々の調味料に一パックずつの豚肉、牛肉、鶏肉…そしてジュースやお茶が入っていた。
そんなちっぽけな冷蔵庫を閉めて、溜息を一つついた。
その時だった。
ピンポーン
と家のチャイムが鳴ったのだ。拓哉は、何だ?そう思いながら玄関のドアを開ける。
「はい」
「鈴木さんの御宅、ですよね?」
「…はい」
拓哉の戸籍上、ここは鈴木家となっている。母方ではなく父方に引き取られる筈だったからだ。
「御届けモノです。判子を下さい――」
* * * * *
段ボールで届いた荷物はとても重たかった。
まるで人間が入っているのか…?と思ってしまったほどに。
拓哉は荷物を開けてみる事にした。差出人は不明だが、折角だから開けてみたくなるのが人の性。
そんなことを思いながらビリビリとガムテープを破いていく。
そしてごくっと息をのみ、思いっきり段ボールを開けてみた。
そこにいたのは、
拓哉は思わず目を開いた。そこにいたのはスヤスヤと呑気に眠る女子高校生の制服を着ていた少女だったからだ。
その少女の明るい茶色い髪の上には髪よりも少々暗い茶色い耳、腰には耳と全く一緒の色の尻尾らしきもの。
(なんなんだ、一体…!)
バクバクとなる胸をぎゅうと制服ごと握り締める。
そして嗚呼、これは夢だ。悪夢なんだ…。
そう考えながら拓哉は恐る恐る少女の耳を触ってみる。
「…んっ」
「…!?」
小さく声をあげた少女に拓哉は猫のようにビクッと反応した。
そして間抜けに寝ている少女に少しだけいらっとなった。
「おい、」
今度は体を揺すってみた。
しかし少女はうめき声をあげるだけで起きようとはしない。拓哉の苛々はすぐに限界を超えた。
「おっきろぉおお!!」
拓哉は少女の耳元で大きな声をあげる。
「ぴぎゃああっ!?」
そんな拓哉の声で少女は更に間抜けな声をあげて耳と尻尾のような色の目を大きく開けて飛び跳ねるかのように起きだした。
「はぁ、やっと起きたか」
「ふぇ…こ、ここはっ」
ため息をつく拓哉とあたりをきょろきょろと見回す少女。そして不意に少女と拓哉の目があった。
「貴方!鈴木拓哉さん…ですか?」
「あ、嗚呼…っ」
名前を言い当てられて少し不安になるが、
「よかった、貴方に出逢えて…」
不思議な事を言い、へにゃりと微笑む少女に拓哉は顔が赤くなるのを感じた。
これが、少女…赤井みこと(あかいみこと)と鈴木拓哉の出逢いだった。
2010 01 13
平凡中学生男子、拓哉と犬の擬人化…みことの出逢いでした。
ラブコメになれるよう努力したいと思います。