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4、クロワッサンのサンドウィッチ

よろしくお願いします!

3と4を連続で投稿しております。

 


 自分の部屋に戻ると食べ損なった朝食がなくなっていた。

 そっか、下げられちゃったんだね。クロワッサン、食べたかったな。きっと食べたら笑顔になれると思うのに。

 だって、この屋敷の食べ物はなんでも美味しい。

 男爵家にいた頃は、少ないけれど食事を出されていた。スープは水マシマシの薄味でパンは冷たくて硬かったけれど。

 伯爵家に来た時はびっくりした。伯爵は関心がないくせに乱暴だし伯爵夫人は無関心ーー、でもご飯は平等にだった。夕食、一緒に食べるだけでもびっくりなのに、温かくて濃厚なクリームのスープを口にした時は、なぜか耳の下が痛くなった。


 だから、美味しいものを食べると嬉しかった。嫌な事があっても美味しいものを食べたら元気になれる。

 でも今日は、ない。


 悲しい気持ちでいっぱいになった。すると涙が溢れてポロポロと流れた。



「失礼します、お嬢様」


「・・・クロエ?」



「ああっ、お嬢様!おそばを離れて申し訳ございません。召し上がれるかどうかわからないのですが、お持ちいたしました」



「え?」


「紅茶とクロワッサンのサンドウィッチです」



 クロワッサンのサンドウィッチ?

 なにそれ、クロワッサンもサンドウィッチできるの?


 キッチンワゴンで持って来てくれたクロエは、まずテーブルにクロワッサンのサンドウィッチを乗せたお皿を置いた。温かい紅茶をポットからカップに注ぎ、「お嬢様」と言ってにっこり微笑んだ。


 魔法にでもかかったように足は自然と動いて、ストンと椅子に腰掛けた。



「わぁ・・・」



 手のひらサイズのクロワッサンのサンドウィッチをかぶりつく。


 クロワッサンのサンドウィッチは今朝、食べ損なったクロワッサンを横に切り込み、きゅうりと、あ、鴨肉。スモークされた鴨肉が挟まれている。


 淑女教育の先生が見たら大目玉だろう。でも男爵家にいた頃、お母様が病に倒れて以降、食事の回数が減ったからキッチンでこっそりとパンを盗ってすぐかぶりついたことがある。

 だから躊躇いなく食べられる。



「・・・美味しい」


「よかったです。お嬢様にご満足頂けることが私の仕事です」


「クロワッサンもサンドウィッチになるんだね」


「ええ、クロワッサンのバターの甘さときゅうりやお肉の塩味がとっても合うんです」



 クロエが嬉しそうに語るのを聞いて、私も嬉しくなった。



「お嬢様、午後からお出かけになると伺っております。今日はいつもの授業はお休みです。お食事の後すぐにお支度の準備に取り掛からせていただきます」


「え、まだ朝だよ?」


「先方に失礼のないよう『バッチリ』決めていきましょう」


「えっと『バッチリ』って、なに?」


「えーと、隙のない?うーん、完璧に仕上げたいんです!」


「なんかよくわかんないけど・・・。クロエはどうしてそんなに私に親切にしてくれるの?」


「・・・私、親切でしょうかね。

 それはさておき、私はお嬢様が毎日笑顔でいてくださることを目指しております。そのために私のできるサポートをしたいのです。

 旦那様の暴言やお嬢様のその頬に対する仕打ちやら、一個人として許せません。まだ十五歳の未成年に、いい大人が暴力を振るうのは犯罪です。

 表立ってお助けできればいいのですが、私は使用人です。情けないのですが、お庇いできない身としてはこうやって少しでもお嬢様がお寛ぎいただけるよう努めるしかありません。

 だから識っているものは、ばんばん使います!まだこの世界にない美味しいものがありますから、料理長に頑張ってもらって作ってもらいましょう!」


「・・・うん、なんか後半わかんない事言われたけど、クロエが私を心配してくれている事はわかったよ」



 びっくりだ・・・。普段無口なクロエが饒舌に話したかと思えばよくわからない単語や、この世界?なんだろう、クロエは違う世界があるような言い方をした。



「さあ、紅茶もどうぞ」



 優しい声で勧められたので、私は紅茶を飲み、クロエの不思議な言葉も飲み込むことにした。

ありがとうございました!

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