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2、クロエ

一話と二話と続けて投稿しております。

短めのお話です。





やがて到着しました伯爵家。

何代も前に造られたというこのお屋敷は皇都の貴族エリアの中でも引けを取らない豪奢なものらしい。

他の屋敷に比べて品がない、古いものと新しい物がごちゃごちゃで統一性なし、ついでに伯爵家は今まで勤めた家の貴族より横柄だ、などなど召使い達がぼやいているのを聞いたことがある。


なぜ召使達の話を聞けたかというと・・・。

ああ、こんなところで生家の男爵家で培った気配を殺す能力が役に立つとは。お役御免の愛人であるお母様は男爵家では肩身の狭い思いをしていた。

娘である私も。

だからいつも存在していない様に暮らしていた。


たまたま通りかかったらお掃除していた召使達の会話が聞こえたので、少し話を聞いていたのだ。気配を殺して。

召使達の会話、大事。会話には情報が溢れているのだ。


伯爵の愛人になって傾いた家を建て直したと言っても、人間喉元過ぎれば熱さを忘れる。

お祖父様の先代男爵や叔父である現男爵もお母様と私の扱いに困っていた。

もう亡くなった先代男爵と男爵の顔が脳裏に浮かぶ。

目元がお母様とそっくりな男爵はいつも私の顔を見るとすぐに目を逸らすのだ。奥さんである男爵夫人がお母様と私の事をよく思っていなかったから板挟みにあってたんだろうな。

結局伯爵のところに来るまで従兄弟である男爵の息子とは一度も顔を合わすことがなかったから、相当嫌だったんだろう。従兄弟はそろそろ一歳になる頃だと思う。赤ちゃんの元気な泣き声がたまに聞こえたから会ってみたかったけどな。


次々と昔の取り留めの無い事を思い浮かべていると自室に着いていた。私付きのメイド、クロエがドレスを脱ぐのを手伝ってくれる。

はーやれやれ、このドレスとっても綺麗だけどスカート部分をふんわりさせるために何枚もパニエを穿いていたから太ももあたりが暑かったのよね。


クリーム色のアフタヌーンドレスを着せてもらってやっとソファに腰を下ろした。

すると目の前のテーブルに紅茶が差し出された。

クロエは無口だけどさすがは伯爵家のメイド。ナイスなタイミングで紅茶を出してくれる。しかも適温。

私が飲みやすい温度をいつの間にか把握して出してくれた。他にもたくさん有能なところがあるけど、特に感動したのはこの紅茶だ。庶子である私を蔑ろにもせず過度に関わらず接してくれるクロエに感謝している。


紅茶で一息つくとクロエが小さなサンドウィッチを出してくれた。

園遊会ではしっかり食べられなかったから嬉しい!

ううん、塩気のあるきゅうりが挟まれたサンドウィッチは最高だ!美味しい!


楽しくないことは考えない、美味しいものや温かいものを口にできたら嫌なことは忘れる。

これが私のモットーなので、今はこのサンドウィッチと紅茶が美味しいことに集中しよう!

お腹いっぱいにならず、六分目?満足したけど夕飯はしっかり食べられそうというお腹具合になった私はクロエに感謝した。


「お嬢様にご満足頂けることが私の仕事です」


優しい目元に小さな微笑みをうかべてクロエはお辞儀した。

私はバルバラ伯爵家に来て唯一良かったと思った。


ありがとうございました。

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