「リフレッシュ」〜善生〜
そうだ! WEBカメラ仕掛けたんだった。
スマホスマホ……
え、嘘でしょ?
部屋ん中にシズ居るやん!
もう着替えて遊び来とる。
同じ電車乗って帰って来たんに、どないな足しとるねん……
けどまた何やこの紫の服、坊さんか!?
椅子が在んのに態々どかして仰々しく床で正座してからに。
ほんで何やこの座布団、私こんなん買うた憶え無いで。
何やコレ、妙にテカテカしたビニールみたいなんヴァサァァァ拡げて、幅取り過ぎやろ!
んん?
脇に置いとるこの箱の柄……
これ、アッコの有名なチーズケーキと違う?
せや、シズ美味しいお菓子買うてくう言うてたわ!
エラい奮発しよったなあ……
けど、目敏いお母さんがあの箱に気付かん訳なぃ……
これ早よ帰らな、お母さんに食われてまうわ!
――GATYA――
『ただいまあ』
母「おかえり、シズちゃんチーズケーキ持って上で待っとるよ」
めっちゃバレとる!
何なら代わりに食うたろかあ? 位のトーンや。
母「今美味しい珈琲淹れて持ってったるから、手ぇ洗たらフォーク三つ出して部屋に皿と二つ持って行き」
て、もう皿に一個チーズケーキ乗っとる!
てか、ケーキには紅茶と違うの?
母「あ、その顔、アンタ知らんな! このチーズケーキには珈琲の方が合うねんで」
『いや、合う合わんより、お母さんもケーキ食べるんやったらシズもココで食べといたらエエのに』
母「何言うてんの、アンタの部屋やったら汚れてもかめへんやんか!」
ああ、なる・・・いや、ワカラン!
これ解ってもうたら負けや!!
母「上でシズちゃん待っとんのやからとっとと手ぇ洗て持って行きいて!」
そやったわ……
――GATYA――
S「よう来たな〜!」
『おう、邪魔すんで〜! て、何言わすねん』
S「まあエエからお上がりぃて」
て、何やこのシート?
あ、コレさっき見たテカテカ……
『てこれ、魔法陣やん! どないしてん?』
S「ふふん、買うてんよ。コレようやっとオカルトショップでも扱いよんでな! ほんなら明野さんの社員割引や言うて、三割負けてくれてん。いやホンマは暗い所で見せたかったんやけどな、ここの文字や線やが青やピンクに光るねんで!? 凄いやろっ!?」
厨二や……
完全な厨二病向け商品やん……
コレ言うたら、厨二病の処方せん薬みたいなもんやろ……
ほんで光るて、LEDの線めっちゃ見えとるし、端っこ見たら電池入れる所まであるやん。
これシート乗って足ぐりんっ! てしたら中の線切れてまうんと違うか?
エラいガキ臭いもん買うてからに……
て、何でかシズがキレとるわ!?
S「何や馬鹿にしてんのか? 不味い葉っぱ食ったキリンみたいな顔してコッチ見てからに、ケーキやらんぞ!?」
くッ! 読まれとる。
いや待って、不味い葉っぱ食ったキリンの顔て、私どんなよ?
まあ馬鹿にしたんは私も悪いけd……
『ちょ待て! アンタそれ何を下に敷いとるねん?』
S「お、よう気付いたな! コレ京都水族館で買うた大山椒魚のぬいぐるみやねんけどな。この魔法陣の上に置いたら召喚された沙羅曼蛇みたいに見えるやん! 呼び名変えたらアンタの好きなドラグニルやで!」
『お! ぃゃ……』
アカン、一瞬ノリそうなったわ。
これ、それとなしに私の厨二心突付いて仲間にしようしとる。
そいやあん時、ドラグニルて私言うたんシズに聴かれとったな……
ほんなら、私も厨二病やってんや!
――GATYA――
――BOKONN!!――
『痛っ!』
母「何や栗子か、ドア前に立ってなよ鈍臭い子やなあ。珈琲ビチャァなるとこやったわ。なあシズちゃん、今これ美味しい珈琲淹れて来たでね。て、ええやんそれ! キレイなテーブルクロスやなあ。ヨーロッパみたいな文字いっぱい書いてあってめっちゃ可愛いやん!」
テーブルクロス言われとんで。
ほんでヨーロッパみたいな文字て何やねん? 何処の国よ? 私も知らんけど……
S「これ古いギリシャ語とかヘブライ語をルーン文字らしく書いてあるもんで、私もよう読めんのですけど色とかカワイイな思て買いましてん!」
嘘吐けっ!
今厨二晒したばっかでようそれ言えるな。
母「こんな汚い部屋に友達呼んでからテーブルクロスまで買わせてもうて、栗子、ええ加減に部屋片付けや!」
ちゃうちゃう、それシズが自慢しよ思て持って来ただけやで!
て、今言うた処で分からんもんな……
シズ、お母さんの後ろでエラい小憎たらしい笑み浮かべて、それ学校で私が先生に怒られとる時と同じ顔やで。
まあええわ、美味しいチーズケーキと珈琲で暗なる午後の気持ちもリフレッシュや!
母「都合悪いと黙りよる。政治家か!」
S「栗子が政治家なったら秘書も黙ってられんようなるんと違います?」
母「せやな。秘書より家政婦さん雇わなアカンわ」
S「ウマい! 政治家やなく家政婦!」
母「ウマいか? さすがシズちゃんや、漢字も解らん栗子に言うても気付かへんもん!」
何やねんこの二人、アフタヌーンティーの優雅なひと時みたいな涼しい顔して、ケーキ出して並べながら私を小馬鹿にして意気投合しとる。
何やアフタヌーンティーのイメージ、物凄質悪いモンに思えて来るわ!
てかそも、私のお母さんなんとちゃうんか!? 何で娘の悪口楽しんどるんよ。
もうええ、今日はブラックで行ったろ!
こないなコーヒーフレッシュよう要らんわっ!
――POI!!――
『苦ッ!』
――GWIIIIIIIIII!――
え?
何やコレ?
床、いや、これ部屋ごと上に吹っ飛んどるような、何が起きとるんよ?
て、シズもお母さんも何固まってんの?
ちょ、え? え? ええぇぇぇ……?
まさか、この魔法陣か!?
これ私、どっかエラい所に転生されるんと違うの?
家ごと?
いや、これ部屋だけ?
ドア開いたら異空間が広がってるとかやったら、どないしよ……
冷蔵庫ん中のゼリーとかアイスとか、昨日作ったビーフシチューの余り物で今晩ストロガノフにしたろ思てたんに……
アカン、このままやと……
『全部食えんようなってまうわっ!!』
――IIIIIIIIIIII!――
続く!





