「開花する採脳」〜蕾〜
そうだ! WEBカメラ仕掛けたんだった。
スマホスマホ……
え、嘘でしょ?
なんで私、ベッドで寝とるんも私?
これLIVE配信やんなあ?
そやんな、LIVEマーク付いとるし、おうてるわ。
ほなこの寝とるんは誰?
え、待って!
これ寝とる私と今見とる私とどっちが偽物なん?
ん?
・・・・・ワケワカランな。
いや、偽物?
え、これまたアレか?
ほんならまた、お母さんも偽物なっとる可能性ある言う話か?
アカン、マズい事なったで……
けどこれ、寝とる私にエラいけったいなもん絡まっとるけど、何やねんコレ?
ワケワカランけど、コレ蔦みたいやな!?
クリスマスのケーキ用に育てた苺の苗木缶から伸びとるけど、これ苺なんかなぁ……
ほんで何やのコレ、寝とる頭の上に扇風機みたいなデッカイ花咲いとるやん!
いや、よう見たらベッド脇にどエラいデカさの蕾まであるわ!
苺て、こんな花なるもんなん?
そや、これまたレンズ使たら花の種類とか出るんと違うの?
――KASYA!――
私の寝顔は切り取って……
よし! これで検索っと。
『なんでやねん!』
アカン、声出てもうた。
検索結果に扇風機出てるやん!
どんな選別しとんねんAi、もちっと勉強せえや!
・・・・・・何やろか。
誰も居いひんのに、聞かれる筈もない私の心の声を誰かにツッコまれとる気がするわ。
ほんで嫌な予感しかせえへんな……
S「誰を嫌いよるん?」
『ほら出たシズ!』
来た挙げ句に心まで読みよる。
おっそろしい女やでホンマ。
けどまあ、丁度ええわ。
S「何や、来たら悪いんか?」
『いや、今はむしろエエねんけどな。てかタイミング良過ぎるし、尾行でもしてたんと違うの?』
S「そやで」
怖っ!!
何やこの女、あっさり尾行認めよったで。
前から頭可怪しい思てたけど、普通にストーカーやないの!
S「ストーカーと違うわ! アンタの頭に可怪しなもん付いとるし、ここ何日かアンタの事観察しとったら靴に水淹れとるし、食う物食わんと飲み物ばっか口淹れて、休み時間は日向ぼっこや言うてこの寒い中に屋上へ行きよる。前からアホや思うてたけど、ここまでアホなん見せられたらそら何かあったかな思うに決まっとるやろ!」
『え、心配して見に来てくれたん?』
S「ん、あぁぁ、まあな……」
絶対違う!
そも私の頭ん中に返事してからに、この女が他人の心配なんかする訳無いわ。
詰まる話に私を玩具に遊ぼう思とるだけやろ?
けど私の行動のそれ、何が可怪しい言うんよ?
普通と何が……
あれ?
言われてみれば、靴に水淹れたら足フヤケて臭なる筈やんな?
それにコレなってからまともに食べてない気がするわ。
いや、そも記憶が曖昧なっとる気がするけど……
S「アンタの記憶力あれへんのは元からやろ」
『そんな事……』
あるような気ぃするわ。
何やろか、こんな記憶も曖昧なっとる……
S「ほいでアンタさっき何覗いてたん?」
『部屋に仕掛けたWebカメラの映像、スマホで観たら私が寝とって、なんでやねんな事になっとってやなぁ……』
あれ?
何や微妙に可怪しい記憶が混ざっとるな。
今朝私が私に『いってらっしゃい』言うてたで、何やこの記憶?
S「スマホ観せてみ!」
あ、取られた。
けど、これ何や日常的な感じするわ。
S「はっはぁ〜ん、なるほどな! これはアホに寄生した所でアホはコピーしてもアホにしかならん言う証拠やな!」
『ん、何の話よ?』
S「いや、アンタ自分が栗子や思うとるみたいやけど、アンタ栗子と違うで!」
『はあ? 私が栗子やなかったら誰が栗子や言うねん! て、あれ? まさか、寝とる私が私言う話か? ほな私は誰?』
S「まあアホもアホなりには考えるんやな。けど後少し経ったら今日一日の記憶を根っ子に渡して枯れ果てるだけやで! 一応は自分でちいっとばっか気付きよったんやから大したもんや! アンタ栗子よりも人としての才能は開花しとった言うんを私が覚えといたるでな!」
『何の話しとんねん?』
あれ?
根っこ……
そや、根っこに記憶還さなアカンやん!
記憶還して養分を還したらな……
『ほなシズ、またな』
S「いや、アンタとはここまでやけど、私は栗子に用あんねん」
て、何で家の中まで入って来よるんかな、この娘は……
あれ?
お母さん何処行ったん?
お母さん自転車乗られへんから仕事行くんやめる言うてたやんなぁ。
あれ?
ほな何で自転車が無うなっとるんよ?
色々可怪しな話なって来たでコレ。
とりあえず、風呂場で水を浴びとこか……
この根っこに触れて、私もここの私達と一緒に養分にして還らな……
続く!
 





