「殺処分の理由」
そうだ! WEBカメラ仕掛けたんだった。
スマホスマホ……
え、嘘でしょ?
何で ニワトリ が居んの?
てか、凄っ!
超器用なんですけど。
足の爪でビスコの箱開けとるし。
ああ、袋は普通に爪で裂くんか。
『へえぇぇぇ……』
ってえ!
何してくれてんのよっ!
『お母さーん! 私の部屋にニワトリ居るんやけどー!』
「はあ? その前に栗子、ただいまは?」
『え? ああ、ただいま・・・いや、そうやなくて!』
「何? 今お母さん忙しいねん。近所のペットショップでヒキガエルがボスだかオスだか何かの卵を温めてたんがどうの言うて『今スグ殺さんと大変な事なるで!』とか騒いどる人が居ったとかでな! 今、ここの町会長さん動物愛護団体に傾倒しとるもんやから五月蝿くて、何や変な申請書に署名しろだの何やので、副会長の例のあの人は自分の宗教関係の店やから文句言うなら敵になる。とか何とか、ほれ見てみ、この変な資料の山。これなんか完全に勧誘やないの。こっちも、どっちも勧誘。町内会費も何処に流れとんのやら……」
『・・・ああ、いや、何か、ごめんなさい。あの、私の部屋にニワトリが居るんやけど、どうすればええかな? って……』
「せやからペットショップはヤバいて言うとるやろ! 飼いたいなら金魚にしとき。ほれ、確か来週あっこの神社でお祭りあるやないの! アレでいっぱい獲って来たらええ!」
『あぁ、うん、多分このままやったら餌にされるんやけどね……』
「お母さんこの回覧板に判子押したないから、お隣さんとちぃとばっか相談して来るからな! あんたお腹空いとっても何も作ってへんから、自分で何か作って。あ、この豚肉は夕飯に使うからアカンよ! ほな行って来るわ。恨むんやったらこんな回覧板回しよった会長副会長やからな。もおっ! ホンマ迷惑。」
『・・・うん』
元々あの人等、朝から徘徊して人の家覗いとるし、目も気持ち悪うて嫌な感じやったからな……
ほな!
アカンわ。どないしよ?
とか言うとる間に、既に居らんく……
居るなあ。
いや、めっちゃビスコ食い散らかしとるやん!
器用に開けたクセに、汚ない食い方してからに!
まあ、クチバシやからしゃーないか。
とりあえず、部屋から出さな……
「ただいま。お隣さん今買い物中やわ。栗子それ何観てんの?」
『私の部屋。あと、おかえり』
「うん、栗子? これ、金魚やないやろ!」
『観たら判るやん!』
「どしたんコレ?」
『こっちが聞きたいわっ!』
「いや、聞かれても……」
『どしたらええ?』
「会長の家に放ったろか?」
『いや、そこやなくて……』
「ほな副会長?」
『せやから、そっちでも無うて! どう捕まえるかよっ!』
「首根っこ押さえたらええやん」
『誰が?』
「栗子。お母さん鳥肉アレルギーやから」
『捕まえるの関係無くない?』
「判らんやないのっ! それで夕飯作れんくなったら今夜から栗子が皆の分も作るんやからね。それでもええの? それでええならお母さんやるけど」
『汚な……』
「そや、手洗ってないわ。あっこの門に鳥の糞付いてたんよ。ひょっとしたらそのニワトリが犯人やないか?」
『いや糞触っとるんなら大丈夫やん! 早よ捕えんと、私の部屋があっ!』
あ、逃げた。
いや、ニワトリ、アンタが逃げえよっ!
何故そこに居る!
て、何で辞書開いとるんよ。
・・・読んどるん?
ページ捲っとるし……
やっぱ器用やわ。
「あんたより真面目に勉強しとるな」
『私はニワトリ以下ってか?』
「これ、卵産む?」
『飼う気?』
「これで、朝栗子を起こしに行かんで済むわ」
『・・・いや、ココでかいっ!』
「嫌ならとっとと捕まえて外に……」
『どしたん?』
「テレビ。ほれ!」
『え、とんぼりファームって、川向うの?』
「鳥インフルエンザで三千羽殺処分やて……」
『うぅわ、防護服着た役人臭いのがいっぱい来とるやん。あのマスコミのカメラとか、ちゃんと消毒しとるんかなあ?』
「・・・いや、栗子。あんた本当に馬鹿なの?」
『何? あっ! うそ、マジ? ヤバくない?』
「せやから言うとるのに」
『いや、言ってはないけど』
「ちょっ栗子、スマホ見して!」
『これ、今とんぼりファームに電話したら来てくれるんと違う?』
「うん、テレビにも出れんで。一生バイキン扱いでな!」
『あ! 私の部屋もアノ怪しい消毒剤で真っ白に……』
「ヤバいねぇ……」
『ヤバい。絶対ヤバい。卵どころやないわ』
「栗子、あんた・・・何でもない」
『うん、言わんといて』
――KOKEEEKOKKO――
「うわっ! これはヤバい!」
『お母さん私、部屋の音楽爆音でかけて来るわ!』
「ん、ぅうん、オッケー!」
――KOKEEEKOKKO――
――KOKEEEKOKKO――
――KOKEEE――
――KOKKO――
――KONNNI――
――KONNNI――
――KONNNITI――
――KONNNITIWA――
――KONNNITIWA――
「・・・なな、何? 何今の?」
――KONNNITIWA――
『お、お母さん・・・ちょっ』
「栗子? 何や、このニワトリ変やないか?」
――KONNNITIWA――
――KOROSANAIDE――
――KOROSANAIDE――
――KOROSANAIDE――
『何か、聴こえ…』
「これ、気付いたらアカン気がするわ……」
――KONNNITIWA――
――KOROSANAIDE――
『うん、鳥インフルエンザやからやろ……』
「鳥インフルエンザで、体こんな風に変わるんか? 栗子、それ」
――KOROSANAIDE――
――KOROSANAIDE――
『羽? だってニワトリは飛ばれへんから……』
「なんや、コウモリみたいな羽やし、尾っぽもなんや蛇みたいやな?」
――KOROSANAIDE――
『これ、人にも伝染るんやんね? 伝染ったら、どうなるん?』
「確か熱で、うなされて……」
――NETUUSO――
――NETUUSO――
『私、もううなされとるかも』
――NETUUSO――
――KOROSANAIDE――
「栗子、私も、何やニワトリが大きなって……」
――KOROSANAIDE――
――KOROSANAIDE――
――TORINITINOUKOWAI――
――TORINOTINOUKOWAI――
――KOROSANAIDE――
あ! 確か私のビスコを全部……
まさか、ビスコで知能が?
いや、鳥インフルエンザて……
――WATASI――
――MAMONOTIGAU――
――KOROSANAIDE――
――KOOKA――
――TORISUKI――
魔物て……
そういえば
こんなんが、聖書にも……
あれ、ホンマやったんや。
ごめんやで、ファンタジー小説。
――COOOOO――
――COCKATRICE!!――
■あとがき
(これはフィクションであり、ファーム・畜産業を動物愛護的な攻撃をする意図はありません。)