「ヴィネの憂鬱」〜鮮魚〜
――FUNYAA!――
そう、我の脚では抉れぬそこを、もっとこうあま爪で掻くように……
――GORORORORO――
おおおおお、そう! それだ!
よう解っておるではニャいか!
汝は中々に猫心というものを心得ておるニャ……
――FUNYA?――
否!
我なるは偉大なる王にして伯爵であるぞ!
誰が猫じゃ!
否、シズに猫で居れと申し付けられておるが故、猫ではあるが……
――WUNAAAAAAA――
腹立たしい!
あ、……
ここならとんぼり川沿いを見渡せるからと来たが、これは道楽屋の屋上であったな。
良く見れば汝は千石のせがれの、名を確か……
芳魚!
前に栗子がそう呼んどったわ!
近所の幼馴染だとか……
いや、どうでもいいわ。
汝のせいで肝心な警戒が疎かになってしもうたではニャいか!
――UNYAU――
ふうむ。
腹まで撫でられ油断しておったわ。
さて、行くかの。
「お、またな。ビネガー」
――UNNNYA!?――
酢と一緒にするで無いわっ!!
我なるはヴィネ!
そもそも汝はVの発音がなっとらん!
・・・いや、シズも栗子もか。
この国の者は皆Vの発音だけでなく……
ええい、どうでもいい。
汝にかまってる暇など無いわ!
「何や、ビネガーも食わんのなら刺し身の余り物も今日は処分やな……」
――NYA!?――
聞き捨てならぬ……
何故に食せる物を捨てるを良しとするのか!
この世には道に落ちた物すら食えぬ者が居るのを知りつつ募金箱なるものを置き、偽善に欺瞞し賞味期限切れと言っては誰にも食わすなと廃棄処分する。
――WUNAAAAAAA――
そもそも何がSDGsか!
利益率を上げる為だけの取り組みの社欲を、よくも環境の為等と言えたものだ。
欺瞞に満ちた守銭奴共がっ!!
解せぬ故、その刺し身は警戒しつつ我が食してやろう。
「なんや、ビネガー鼻利くなぁ」
――UNNNYA!?――
だから汝はV……
まあ、今はこの赤身の大魚に免じて許し・・・ニャむニャむ……
「お、何やアレ! 今日はとんぼり川荒れとるのぉ」
――FUNYA?――
て、ヨシオ! 汝は馬鹿ニャのか?
アレに見えるは川の水がハネた物ではニャいぞ!
アレは生きておるっ!!
我もあまり詳しくは分からぬが、悪魔の類では無い。
別の惑星の生命体に相違ないぞ!
しかしあの軟体質なフォルムからして知性はそう高くはニャいだろうが、その分、攻撃にも守勢にも一切の手抜きはニャいであろうな!
寄生の類なら尚更に、この星の知的生命体など あっと言う間に駆逐されてしまうであろう……
――NYA!――
そうであった!
アレなるものが寄生しておるからか。
どうりで皆アホみたいな顔してフラフラと……
まあ、普段とあまり代わり映えはせぬがの……
続く!!