「映るんDEATH」知るかアホ!
■まえがき
カメラに映った裸の女透明人間の明野さんに自分の部屋に連れ込まれ、帰って来るお母さんは本物か偽物かを派手な口紅で判断出来るん違うか言う明野さんの話が未だ理解出来てないのに話は進み、明野さんの話からドッペルゲンガーの正体が公安や協力団体の人殺し作戦の一部やと解いたシズは偽物の栗子とお母さんはカルト化した協力団体の実験目的やと解くも、帰って来るんはドッチやろかと……
■本文
S「なんやかんやでもう九時近いで、今調べたら金沢からコッチに帰れる最終が向こう20時40分位でそれ乗ってもコッチ着くんは23時半過ぎから日付け超えて帰って来るんは夜中やろな。とりあえずこの透明人間はドッペルゲンガー連中に見付かったらマズイんやろし、私が何とかしたるけど。栗子アンタどうする? ウチ泊まった処で偽物のオカンが明日には消えて元の本物オカンに戻るかも判らんしな」
透「あの、だったらみんなで外で見張りません? この子のお母さんが帰って来たら口を見て判断して、本物だったら彼女はそのまま家に帰る、偽物だったら一旦みんなでシズちゃんの家に泊まって対策を練る。それでどうかな?」
どうかな言われても……
どないかした処で判らんモンは分らんやん。
S「選択キビシイなぁ。ちなみに明野さん、茶毛猫見ぃひんかった?」
透「茶毛猫・・・あぁ、そういえば後ろを歩いてたような」
S「どっちの?」
透「んんんと、確か、偽物のこの子の後ろに居たんじゃないかなぁ……」
いや、何で今ヴィネの心配しとん、シズにとって私のドッペル問題は迷い猫探しと同レベ扱いか?
腹立つけど何やろか、不思議と何やヴィネが居った言うん聞いて、何でか私も安心しとるな……
アレ?
そういや、あん時もヴィネが……
S「栗子! 大丈夫や! 何とかなる!」
何なんその自信?
どっから出とるねん?
て、ヴィネか。
何やろか、この……
S「栗子! 一旦みんなでウチ来て夜中にコッチ来て確認しよや!」
『ん、おおぉ、そやな』
あれ、何か軽ない?
シズもう何や安心しきっとるやん。
どんだけヴィネ大事なんか知らんけど、私の家は大事なっとんのやで!
とはいえまぁ、待つしか無いかぁ……
『ほんなら先ずは……』
シズの家行くんなら私の春コートと帽子を明野さんに貸して、ファンデを顔と一緒に手にもつけたらどないやろか?
私も顔が見え難いフード付きの服に着替えて、伊達眼鏡も掛けとこかな……
何やまるでシズと怪しい儀式に行くみたいに三人身を寄せ合って人目を避けて監視カメラに映らんように歩みを進め、絶対カメラ付いとるエレベーターは使わんと、階段上がってゼェハァ言うて家に上がったらシズのお母さんに遅い時間に出歩くな、言うて少し怒られながらもきっと出してくれはる食事をシズの部屋で頂くと、行きまひょか……
――FUNYAAA――
ん?
S「ヴィネ!? 何でお前がココに居るねん・・・・・て事は」
んん?
何、ベランダにヴィネ来て喜び勇んで戯れるん違うんか?
さっきまでエラい心配しとったクセに、ツンデレかっ!!
S「アカン! 想定外や、偽物栗子と本物オカンがもう帰って来んで!!」
え、何で?
アンタ、お母さん帰るん夜中や言うたばっかりやん!
――GATYA――
母「ただいまー。お母さん食べ行こう思ててんに、もうしゃーないから晩の買い出し行って来るけど、栗子どないするねん?」
ホンマや!
帰って来たで。
けどコレどっち?
て、口紅見なアカンのか!
いや、判るかあ?
母「栗子ー! 恥ずかしいから先帰るう言うて、アホの思春期みたいな事言って、なんばの改札出たら走って行きよってからにもう、お母さんの方が恥ずかしいわ! 鍵も開けっ放しにして、部屋居るんやろ?」
いや・・・あの、それ私と違うねんけど、何やこの、ものごっつう恥ずかしいんは、家庭訪問された時に先生にトイレ貸したら洗濯物出しっぱなん気付いて『見られたああぁっ!!』みたいに顔赤なって来たわ!
けどまぁ、よう考えたらココに居るんはシズと透明人間やし……
まぁエエか。
S「栗子、口紅見るまでもないやん! 話の筋からしても間違い無く本物オカンや!」
透「え、何でそんな断言出来るの?」
いや、聞くなよ!
わざわざ聞かんでも判るやろ!
こんなんお母さんにしか言われへんわ!
S「それに、恥ずかしい言うて走り去って行ったんは偽物栗子の本音やろ。金沢行く筈が電車の中で大阪人丸出しな普段の栗子とオカンの会話させられて、異国の地ぃで初めて味わう周囲の目ぇに羞恥心言うモンが生まれてもうて、与えられた使命も忘れて恥ずかしなって逃げ出した。そんなトコと違うか? 所詮は人造人間や! 盗んだ遺伝子で身体を造って盗んだ情報で人格データ創った所で、結局人の気質言うモンまでは真似出来へんかったあ言う事や!」
・・・・・んんん、と。
これ、褒められとるんか貶されとるんかドッチ?
――BATANN――
母「アレ? この靴、シズちゃん来とるんかあ? 何や遊ぶ約束忘れてたん思い出して焦ってたんか、アホやな。栗子ー?」
――FUNYAA――
S「そやんな、ヴィネもお疲れさんや! 栗子、ナニはともあれや! 安心して本物オカンにオカエリ言うて来い。序でにウチのオカンに電話しといて貰ってエエか?」
そこん処もシズはチャッカリしとんのぉ。
まぁそやんな、本物帰って来てくれて良かった思えば私の偽物がした事も許せ・・・いや、許したらアカンのやけど。
『おかえりー! シズ、ココで待っとったわ! シズのお母さんに謝っといてんかー!?』
母「アホ栗子、ほなシズちゃん何か食いたい物あるか聞いといて、電話したら買うて来るわ!」
『分かったあ』
で、問題はアンタや!
何処に居るんか知らんけど、気まずそうに黙ってからに。
アンタも安心せえ!
今日はココに泊めたるわ。
序でに風呂で鼻毛と眉毛も何とかしてもらわんとな!
『明野さん、シズと一緒に風呂お入りぃ。ようけ洗って鼻毛眉毛も何とかしときんさいよ! ほんでシズ、何食いたい?』
S「んぐっ! 汚な!」
透「え、私一応昨日まではシャワー浴びてたから汚くはありませんよ!」
S「栗『そういう意味や無いねん!』」
鏡にも映らん者には自分の状態を確認する事も難しいらしい。
言われてみれば なるほどな話に、思わず色々な透明人間モノの映画やアニメやを調べて観るも、鼻毛眉毛ぼうぼうなっとる透明人間は居らんかった。
そら、そうやわ。
そもそも女の透明人間自体が珍しいモンやと知って、透明人間は男の夢や言う書き込みばっか並ぶネット社会にイケてへん男の闇を覗いた気が……
いやほんで、一応みんなで下降りて、お母さんの口紅を確認したケド、思わず声が揃ってしもた。
S透「栗『こんなモン判るかあっ!!』」
ほんで翌日の昼過ぎ……
S「エエ隠れ家見付けて来たでえ」
言うてシズが外に連れ出そするも……
服を着せるか否かに監視カメラに映るかの確認が必要と気付き、透明人間 明野さんはスマホに映らん事が判明するも、他も試さな言うてシズの家に在るカメラを幾つか持って来て試した結果、私の安いこのWEBカメラにしか明野さんは映らん事が判り。
S「監視カメラにも映り込まんやろし、都合エエやん!」
と、今は暖かいし透明人間は当面の間は裸のまんま出歩いても問題無いやろ言う結論に至った……
知らんけど。
まぁ一回着せたら、私の服着て苦しい言うたでね、貸せる服なんかあらへんわっ!!
そうして昨日シズと一緒に出て行ってんけど、よう考えたら何処へ連れてかれたんよ?
透明人間は今……
S「何の話?」
『は? 明野さん何処にやったんよ?』
S「ああ、よう働いとるみたいや」
『働く??? どないして?』
S「警備員」
『け、どがして何を警備するんよ?』
S「おぉ、アレをウチに泊めるんは割に合わんし、それやったら住み込みバイト探した方が早いな思て、例のオカルトショップの姉ちゃんに住み込みで働ける警備員要らんかあ? 言うたら喜んで採用したで!」
『いや・・・軽っ!』
てかショップの姉ちゃんも何をお手軽感覚で透明人間受け入れとるんよ。
アカンアカン、明野さんええ人や言うても透明人間やで!?
そら姉ちゃんオカルトショップで働く位やからなんぼオカルト好きか知らんけど、透明人間を住み込みバイトみたいに雇うかあ?
てか雇うて、あの姉ちゃん店長やったんか?
S「いや、それが笑えるねんて! この間も万引き犯が盗んだモンを鞄から出して元の場所に戻したらしいでな、万引き犯も何が起きとるんかワケワカラン上にイキナリ視えんもんに腕掴まれるもんやから、ウワァー! 言うて鞄放って逃げ出したんやて! ほいで鞄の中に在ったモンから身元割れたらそこら中の書店で漫画を大量に盗んどった常習犯だったらしゅうてな、あっちゅう間に逮捕や!」
『そら、万引き犯もビックリやろな……』
けど、オカルトショップで万引きなんかようする気になるなぁ、あがいな店で何を盗むねん。
ヘタなモン盗ってったら持っとるだけで“命”取られ兼ねん物まであるねんで!
S「まあ明野さんもあっこが在る限りは安泰やろ! トイレ風呂エアコン完備でテレビパソコンネットも見放題やし、冷蔵庫には毎日姉ちゃんが食べ物入れとるしやな、病気にならん限りは引き籠もりより高待遇やし、姉ちゃんポケットマネーからバイト代として明野さん用に貯金してくれてはるらしいでな、最高やん! ああ見えて歳行っててんなぁ姉ちゃん。流石は年の功やわ」
いやまあ明野さんには最高で何よりやろけど、最後の言葉を姉ちゃん聞いたら、アンタいてこまされんで。
『な、ヴィネ』
――NYA?――
「映るんDETH』
おしまい。
その後の偽物栗子が気になる方は、★やいいねの後にリンクから
『カメラの前に居る私は誰……』
を、ご覧下さいませ。