「滲みる沁みる」
14「滲みる沁みる」
本文
そうだ! WEBカメラ仕掛けたんだった。
スマホスマホ……
え、嘘でしょ?
いや、めっちゃ見えるやん!
何この線。
ー_ー
菓子ケースにした箱の傷、何や顔に見えるわ。
アレ何言うんやったか……
シミやコラ・・・違うな、アカン検索や。
【線 顔に見える】
そおコレや【シミュラクラ】
・・・シミやコラ、近いな。
揺れて見えた影、アレ窓に反射した何かかなぁ?
――GATYA――
『ただいまー』
母「おかえり、丁度ええわ! コレ昨日貰ってんけど、塗ったらシミが消える言うてな、どない見える?」
・・・どないも何も、どれがどれなん?
言えん。
言えんけど、何やそのシミ……
╹−╹
見えるなぁ、顔。
コレもシミュラクラか。
うぅぅぅぅ、何やここに括弧付けたなるわ。
あ、そや!
ケースの線に括弧描いたろ。
とりあえず……
『シミ、ワカランでえ!』
母「ほんまかあ? ほなコレ買おうかな……」
いや、私嘘は言うてない。
シミ、どれがどれだかワカラン言う意味やし。
けど、ソレ買わせんのは何か違うなぁ。
『ワカランけどワカラン物買うんは判るまで待っといた方がええん違う?』
母「そらそやな! 言うようなったやないの。何やお母さんが心配か?」
面倒臭っ!
『着替えて来るわぁ』
――GATYA――
あぁ、この傷か……
カメラ通さんでも顔に見えるなぁ。
ー_ー
とりあえず爪で、と……
(ー_ー)
やっぱ顔やな。
お菓子ケースや言うのに、なんともな顔やな。
食べるん我慢しとるみたいやん。
『無我の境地ぃいい!』
( ̄◇ ̄)「勝手な事言うなや」
え、今何や聴こえたような?
外か?
まあええ、着替えて数学の宿題やらな。
どうせならシャワー先にしよかな……
まええか。
(゜ο゜人)「いや、スマン」
ん? 外で喧嘩か?
(:˘∧˘:)「見てないでえ!」
いや、どんな喧嘩よ?
さて、数学・・・面倒臭っ!
まあ小テストされるよりええかぁ。
家で解いて出すだけやし。
けど机に出すだけでお腹いっぱいやで……
( ̄︿ ̄)「気張りや」
何や外ワケのワカラン喧嘩しとんな。
先ずは頭に糖分補給やな!
(ー_ー)
今日は、毎日果実にしとこかなぁ……
( ̄ヘ ̄;)「何もせんと菓子食うんかい!」
・・・ん?
『何やキモいな』
(ノ`Д´)ノ彡「誰がキモいねん!」
何やろか?
(!_"_)「スマンな、黙っとくから勉強してくれ」
何やキィーキィーキィーキィー騒ぎよる。
(;ー︿ー;)
・・・・・ちょ待て!
何なんコレ?
さっき書いた顔と変わってるやん!
(°o°)「バレてもた!」
『え、何やコレ!』
動いたで……
顔、動きよるっ!!
『何コレッ?』
(ー_ー)「何や言われてもな……」
ひっ!
『キモッ!』
(ノ`Д´)ノ彡「キモい言うな!」
アカン、コレはアカンでえ。
とりあえず部屋から出とかな、何されるかワカラン。
――BATANN――
『お母さん! 私の部屋で大変な事なっとるねん!』
母「何がよ?」
『それがな・・・お母さん、それどないしたん?』
母「何がっ?」
『いや、そのシミ・・・』
(╹−╹)
母「何や見えるんか? さっきはシミワカラン言うてたやん! まさか、コレ浸けたら増えたんか?」
『ぃゃ、増える言うか・・・喋る言うか』
(╹−╹)
母「どないやねん!」
『・・・・・シズに聞くわ』
母「何をよ?」
(╹−╹)
『シズ、あんな……』
私は冷静を装って色々説明した。
お母さんのシミの話はボヤかしながら……
S「そら、栗子がアホみたいに意味無いモンに意味与えてもうたからやろ? Pareidoliaは錯覚やけど、アンタが括弧描いた事で意味持つ命吹き込まれた言う事と違うか?」
『ほなコレ、どないしたら消えんの?』
S「そんなもん、意味消したらええやん!」
・・・意味を消す?
意味が分からんのに、意味を消す言われても。
『それ、どないな話?』
S「アホには解らんかあ? 括弧描いて意味持たせたんやったら、ソレ赤ペンで塗り潰せば血塗れ言う事にして殺せるんと違うか? 言うてんの!」
なるほど!
て、エラい恐ろしい話を平然と、この女は……
けどまあ、案外簡単やったんやな。
いやっ!!
ほな、お母さんのシミどないするねん!
(╹−╹)
私はキッチンから離れて小声で聞いた。
S「アンタ最低やな・・・まあせやからホクロなんか数えたらアカン言うねん。数えたら増えるとか云うアレと同じや。泣きぼくろ欲しい言うてツンツンしよる女に、それホクロ増えんでえ! 言うたら止めよるやろ? ソレの逆したら減るん違うか?」
『・・・どういう事?』
S「無い所ツンツンしたら増えるんやから、在る所ツンツンしたら減るん違うかあ言うねん!」
『ほんまか?』
S「嘘やで」
・・・・・何やねん!
この、クソ女ほんま。
『ほな、どないせえ言うねん!』
S「どないもこないもこの世は銭次第やで! 栗子がすべきは……」
電話を切ってスグに私は、ケースの顔を殺す事にした。
意を決して部屋に戻った私に、何かを察した顔が警戒する中……
先ずはと一文字、ササッと矢印と共に付け足した。
(ー_ー)←死亡。
それから暫く、動かなくなったのを確認して、その顔もろともヤスリで削って消した。
念入りに、削り跡が無くなるまで平にして……
まるで土に埋めた遺体を隠すように。
そんで翌日、私は渋々小遣いはたいて買うて来た。
決してやましい気持ちを隠す為ではない。
どっちか言うたら隠すより消して欲しいねんから……
母「どしたん栗子、お母さん今日誕生日やないで! こんな高そうな化粧品。何や怖いな・・・何があった?」
『ええから、お母さんそれタップリ塗って早うキレイに消してや! 特に喉元な……』
母「キレイに・・・消して? なってと違うんか?」
『ん、うん。まあ、まあええやん!』
(╹−╹)
お母さんのシミは喋ってない。
けど、喉元にあるし。
喋らへんけど何や物言うとる感じがするねん。
アレは口にしないお母さんに代わって物言うてる顔や思えて……
めっちゃ怖いねやん!
(╹−╹)「掃除したんか?」
■あとがき
シズの言った「Pareidolia」とは
★パレイドリア効果
意味のない物に意味を当てる事で錯覚する。
視覚聴覚に本来関係無い知覚をあてはめて違う物に錯覚する現象がパレイドリア効果。
パレイドリア効果の一種で、三つの点が顔に見えてしまう錯覚をシミュラクラ現象と言う。