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7

間が空きすぎだろう、自分!

ト、ツッコミタクモナルガ。

時間が経つにつれ、空に浮かぶ城にも慣れてきた。

もちろんずっとそれが視界にあるわけでもないが、ふとした拍子に目に付いて、ぎょっとすることはなくなった。

月だって空に浮かんでいるのだ。城が浮かんでいたって不思議じゃない。

そう考え納得してしまう自分に

頭、大丈夫?

ト、ツッコミタクモナルガ。

ともかく、深く考えないことにした。

あの城に住んでいたというヒメこそ気にするべきなのに、そのことを話題にのぼせることもないし、空を見上げることもしない。

だから理子も気にしないことにした。

もしかするとヒメがさっき言ったことは冗談なのかもしれない。

そんな冗談を口にしたことすら忘れているのかも・・・。

さかさまの城が空に浮かんでいるのは、やはり現実なのだけれど。

ヒメは飽きることなく、学校について根掘り葉掘り聞いてくる。

理子はげんなりしていた。

これ以上いったいなにを話せというのか。

飼い主の困窮を救うべく、麦丸はヒメに食って掛かる。

当然ヒメも言い返す。

朝と同じように言い争いをはじめる一人と一匹だったが、理子にそれを止める気力はなかった。

ついに学校が見えてきた。

「おお、これが『学校』か。大きいな」

三回建ての建物だから、確かに大きい。

が、そのことで理子は驚いたわけではない。

校門の前に人だかりができていたのだ。

「そしてあれが『生徒たち』だな。なるほど、みな同じ格好をしている」

もちろん男子と女子で制服は違うが、デザインに統一性をもたせていることはわかるのだろう。

はしゃぐヒメに「ああ、うん」と生返事をして、理子は人だかりへ近づいていった。

クラスメイトの姿を見つけ声をかける。

「おはよう、三沢。どうしたの、これ?何の騒ぎ?」

理子の声に女生徒が振り返る。

「アー、天音。おはよう」

挨拶を返してから

「んー、よくわからんけど、妙なやつがいるらしいよ」

「妙なやつ・・・」

理子は思わずヒメを見やる。ヒメはそれに気づかなかったようだ。

そこへ突然大きな声。

「ただいま戻りましたあ!」

男子が一人駆け寄ってきて、理子たちの前で立ち止まった。

敬礼をする。

ビシ!

その男子もまた理子のクラスメイトだった。

名前は武藤かける。

クラスで一番背が低く、それゆえに威圧感がないためか、女子に便利に使われている男子だった。

本人もそれを嫌がっているようではなかった。

嬉々として引き受けているようにも見える。

だが、男子の使い走りをすることはなかった。

断固として男子からの頼みごとは引き受けない。

結果、男子からは軽蔑を持って『パシリ』と呼ばれている。

「おお、偵察ご苦労」

そう答え、三沢はいい加減な敬礼を返した。

「で、どうだった?」

「いた。一人と一頭。男と馬」

「馬?馬かあ。そう来るかあ」

「おかしな格好してた。妙に古臭いデザイン。ファンタジーものみたいな」

「中世ヨーロッパ風ってとこか?役者か?」

「一人、劇の練習してたのかも?」

「馬を連れてか?何の練習だよ」

「すごいなあ!」

感嘆の声を上げたのはヒメだ。

「ガッコウ、とはやはりすごいところなんだな!理子!」

目をきらきらさせている。

「いや、これは・・・」

こんなことが日常茶飯事だと思われては困る。

これはイレギュラーだ。

事件だ。

ありえないことなのだ。

不審者が構内にいるなんてことは。

「天音、この子、誰?」

「ヒメだ!」

胸をはり、ヒメ自身が答えた。

「うちの居候」

理子はとりあえずそう答えるしかない。

考えてみれば、ヒメこそ不審者だ。突然、家の中に居たんだから。

「ふーん」

ヒメをじろじろと観察する三沢。

これ以上追求されては面倒になる。

理子は話題を戻した。

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