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【リレー小説】サイキック学園  作者: 柴野いずみ キハ アホリアSS 高取和生 しいなここみ 弓良十矢No War 愛猫家奴隷乙 サカキショーゴ 柴犬
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第十話(柴野いずみ)

(ごめんね)

(ごめんね匠)


 次々と頬を伝う涙。

 そして私の意志に反して流れ出す心の声に、私は困惑していた。


 転校生の佐々木くんの方も戸惑っているようで、(どうしたんだ?)と私に尋ねかけてくる。しかし私はそれに応える余裕がなかった。


(何、これ……)


 頭の中に、知らないはずの光景が、情報が、次々に溢れ出してくる。

 まず最初に見えたのは、私が佐々木くんと友達のゆめとにこにこしながら帰っているところ。次は、私と佐々木くん二人だけで抱き合っている姿が脳内に浮かび、消えていった。

 まるで走馬灯のようだな、とぼんやり思った。


 私以外の超能力者たちとの出会い。戦い。佐々木くんを……匠を好きになったこと。それを意識していなかった自分の心。秋村たちの襲撃。謎の用務員さん。嶋ゆめの実態。嶋ゆなという少女の話。そして、この世界の真実。

 それから――私のせいで死なせてしまった、匠の姿。


(……!)


 知らない。私はこんな光景、知らない。

 なのに懐かしさが込み上げてくる。悲しみが、胸の痛みが襲いかかってくる。


 そうだ。そうだった。私は戦っていたんだ。

 私たちテレパスをこの世から抹消しようとする生徒たちと。秋村、市野村、城山さんと戦っていたんだった。

 そこには私たちが知らない事情がたくさんあって。それでも立ち向かうと決めて、そして……私は全てを失った。


 記憶の雪崩は止まらない。

 次に思い出したのは、匠がいなかった(・・・・・・・)世界での記憶。


 ゆめを守ろうとして力及ばず、彼女が無惨に殺された世界があった。

 仲間になってくれた相川くんを庇って私が死んだ世界もあった。

 学園長先生と一対一の戦いをして敗北することも、そもそもその前に秋村たちの操り人形にされて殺されたことだって。

 世界は繰り返していたんだ。毎回一つずつ、繰り返す度に『何か』が変化しながら。


 例えば、十回目の時はどういうわけか秋村が協力的だったし。

 例えば二十三回目の時は、私がテレパシー以外の能力に目覚めたりした。

 三十九回目の変化は『佐々木匠』という新たなテレパスが世界に存在したこと。そして四十回目である今回は――。


「私の記憶が、あること」


 頭の中に渦巻いていた記憶の嵐が吹き止み、視界がクリアになる。

 それから再び、転校生の佐々木匠を見つめた私に、迷いはなかった。


(匠。私は小沢心音。あなたと同じ、テレパスなの)


(ちょっと待て。すまないが頭が追いつかない。君が俺の声に応えた時点でテレパスなのは認めるが、その前にさっきのあれは何なんだ)


(後で説明するわ。だから……お願い)


 私は、とんでもないことを心で呟いた。


(私と付き合って)



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ――放課後、誰もいなくなった教室にて。


 私は、匠に私が知る全てを話した。

 話したと言っても念話だ。他の誰かに聞かれては困るから。


 サイキックバトルが始まった、一回目の世界から、匠がいてくれた三十九回目の世界のことまで。

 何もかも伝えた。信じてくれるだなんて保証は何もなかったし、バッサリ切り捨てられる可能性だってあった。が、匠がそんな人間じゃないことくらい私はわかっているつもりだ。

 匠は優しい。このループの中で――と言っても今回に至るまでループしていること自体知らなかったが――一番私に寄り添ってくれた人だった。


(その話は、本当なのか)


(うん。これが私の覚えてる全て。黒幕は学園長先生で、そのために超能力者の生徒たちをけしかけてくる。きっと今回もそう。……全部妄想だって言われたら私には否定する余地はないけど)


(普通なら否定したいところだ。けど、君の心を見たらわかる。だから俺は一応君の話を信じてみることにするよ)(ただし付き合うかどうかは保留にさせてくれ。いくら君が俺のことを好きでも初対面の女の子に言われても困る)


(わかった。ありがとう)

(信じてくれて)(生きててくれて)


 匠の手をぎゅっと握りしめる。温かい。何でもないことなのにそれが私にはとても嬉しかった。


(これからよろしくね、匠)


 にっこり笑いかけると、匠の方から(可愛い)という心の声が飛び込んできて、思わず顔を真っ赤にしてしまったのだった。


 ……ここから壮絶な戦いが幕を開けるというのに、なんとも呑気な光景だった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「今回は最後になるかも知れんな」


 夕刻の教室、そこで戯れる少年少女二人を見つめながら、用務員の秋津はボソリと呟いた。

 あの二人がこれほどまでに親しげにしているということは、今回の『世界の歪み』は、あの少女に、今までの世界での記憶を引き継がせたのだとわかる。


 『世界の歪み』とは、大幅な時間の巻き戻しによる副作用のようなもの。

 時間遡行する度、その負担によって世界の形が捻じ曲がり、以前の世界とはどこか一点だけは違うものになる。そして今回の『世界の歪み』は今までにないほど大きなもののようだった。


 秋津は願う。今回でこの繰り返しの日々が終わることを――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 戦いが始まるまでそんなに時間の猶予はない。

 私と匠は二手に分かれ、それぞれ行動を始めた。


 そして翌日の昼休み、私は屋上に相川とゆめを呼び出した私は、開口一番に言った。


「ゆめ。相川くん。協力してほしいの」


 私が頼ることにしたのは、ゆめと相川智浩の二人だった。

 相川とは今までの世界で何度も共闘したことがあるし、ゆめは私の親友だから。


 ……たとえゆめの人格が作られたものだったとしても、いや、だからこそ、全てを知ってほしかった。


「どうしたのココ? なんか怖い顔してるよ?」

「小沢、だったよな。協力してほしいことって……」


 ゆめは首を傾げ、相川は不審げな目を向けてくる。

 私は彼らに説明した。


「もうすぐこの学園でサイキックバトルが始まるの。いいや、学園だけじゃないわ。この街すら呑み込むような、そんな戦いが」


(サイキックバトル……!?)(ということは)(小沢は俺の能力を見抜いているのか)


 相川がわかりやすく動揺している。

 私は彼の心の声に「ええ」と言って頷いた。


「相川くんは条件付きの瞬間移動の力よね。今回の戦いにはきっとあなたの力が必要になるわ」


「えっ。ちょっと待って。ココ、何言ってるかわかんないよ。サイキックバトルって何? 戦いってどういうこと?」


「ゆめ。あなたには双子の妹がいること、知ってる?」


 ゆめは首を振った。

 あの時、確か嶋ゆなはゆめの記憶を奪ったと言っていた。だからそれは当然のことなのだろうと思う。


「あのね、こんなこと言っても信じてもらえないと思うけど、聞いてほしい。……ゆめは、ね」


 私は相川がゆめのことを好きなのを知っていた。

 いいや、違う。この世界ではまだ知らなかった。知ったのは、過去の時間でのことだから。


 相川たちは驚きながらも最後まで話を聞いてくれて。

 その結果、相川はゆめのために、ゆめは私のために手伝ってくれると言ってくれた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 俺は正直言って心音の話を全部信じたわけじゃない。

 だが、彼女の心に嘘はなかったし、ひたすらに必死だった。(付き合って)と言われた時はかなり困惑したが、それでも俺は心音の味方になることを決めた。


 だから俺は戦わなくちゃならない。

 そう、心音が言っていた敵の一人と――。


「秋村。俺と、戦ってくれ」


 俺が相手に選んだのは秋村だった。

 彼の能力はダークネスだと心音から聞き及んでいる。確かに秋村の心の中には底知れぬ闇が広がっていた。


「君、転校生の佐々木くんじゃないか。どうしたんだ? 戦うなんて急に物騒なことを言って」


 そんな風に言いながらも秋村はニヤニヤ笑っている。

 (こいつも超能力者か)(自分から俺に相手を挑んてくるとは珍しいな)(俺を能力者だと知っているということはテレパスか?)(でもそれじゃ分が悪い。何のために……)


 俺が秋村に戦いを挑む理由。それは――。


「俺が勝ったら、俺の味方になってもらう。そういう勝負でどうだ?」


 単純に数の力を増やすためだった。



 敵を減らして味方につける。

 本当はあまり選びたくない手段ではある。いつ寝返りがあるかわからない。

 「でも、私たちだけではどうしても戦力が足りないの。だから癪ではあるけど秋村くんも仲間に入れた方がいいと思う」

 心音がそう言っていたのを思い出す。だが、対面してみた印象としては、秋村はどこまでも利己的な奴だ。本当に味方に引き入れられるのかは謎だった。


 だが、秋村は意外にも乗り気で。


「もしも俺が勝ったら、どうなる?」


「その場合は……俺を好きなようにしてくれていいぞ」


 好きなように、と言っても俺を秋村がどう利用するのかはわからない。

 だがろくな目に遭わされないのはわかりきったことなので俺は勝つしかないのだ。


「いいだろう。その勝負、受けてやってもいいぜ」


 そこへ、どこからともなく箒を掃きながら用務員さんがやって来る。

 これが心音の言っていた秋津さん、か……。遮光器土偶のような眼鏡をかけているから間違いないな。


「勝負は清く、審か。正しく判つ、裁きの場。その勝負、わたしに任せなさい。君たちに相応しい舞台を提供しよう」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「……来たのね、市野村さん」


 あたしがいつものように屋上へ行くと、そこには先客がいた。

 キャンディをガリ、と強く噛み締める。なんとも形容できない怒りが込み上げて来た。


「なんであんたがここにいるわけ?」


 あたしをじっと見つめてくるのは、二年A組の小沢心音。

 そしてその背後に嶋ゆめがいて、さらに奥に相川という男子が立っていた。

 まるで待ち伏せしているみたいに。


「市野村さんに勝負を挑もうと思ってここで待ってたのよ」


 ガリガリガリ。棒付きキャンディを噛み砕いた。


「はぁ? 勝負って何?」


「あなたと私の命を賭けたサイキックバトルってところかしら」


 あたしは少しだけ驚いた。

 サイキックバトルという言葉を小沢から聞くとは思っていなかったからだ。


 あたしがこの学園で二番目に嫌っている人物――小沢心音はテレパスのくせにボンクラだった。

 この学園に複数の超能力者がいることだって知らないだろうと秋村は言っていた。秋村の言葉を鵜呑みにするわけじゃないけど、あたしから見ても小沢が他の能力者を把握している様子はなかったのに。

 でも、まあいい。本題はどうして小沢が急にあたしに勝負を仕掛けようとしたかってこと。


「勝負は受けてやってもいいけど、一体どういうつもり」


「市野村さんが私を嫌っていることは知ってるわ。そして、遠くない未来に私と敵対することも。だからその前に、芽は潰しておかなくちゃいけないでしょう」


「あんた、何を言って……」


「実力行使は好きじゃないけど、今だけは別。あなたにはたくさんの恨みがあるから」


 小沢心音はちょっと不気味に笑う。

 何か危険な感じがして、あたしがサッと警戒を強めた、その時だった――。


(たっぷり痛い思いをさせてあげる)


 あたしの胸の中に、小沢の声が響いて来たのは。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 相川とゆめに事情を打ち明けた後、思っていたよりすぐに市野村がやって来た。


 いつものように棒付きキャンディをガリガリ噛んでいるその姿はどの世界でも変わらない。

 彼女は私を見るなり嫌そうな顔をした。やはり心を覗かれるのが気に入らないのかも知れない。


 まあそんな敵対心はすぐに削いでやるつもりだが。


 市野村唯の能力は影縫いだ。

 影縫いは万能で、なかなか容易に勝てる相手じゃない。


 だから私は、思念波という攻撃手段を選んだ。


 前の世界――三十九回目の世界で、身体イメージを利用して痛みを与えたりしたが、それとは少し違う。

 実質、最終決戦の中では市野村にその方法は効かず、影に逃げ込まれてしまったということがあった。そもそも超能力を封じる電磁パルスが戦いの途中で壊れたのが敗因だったと思うが。

 ともかく、能力が使える状態の市野村には単純な攻撃では敵わない。だから精神的ダメージを与えることにした。


 それが思念波。脳内に直接呼びかけ、能力が使えなくなるほどに精神を惑わす。初めてなので成功するかは怪しかったが、意外にすぐできた。


(たっぷり痛い思いをさせてあげる)


 背後でゆめと相川の見守る中、私は戦いを開始する。


 異常に気づいたのだろう。市野村は慌てて影縫いの力を使って私の体の動きを縛ったが、こちらは微動だにせずに攻撃できるので有利だった。

 思念波を強めていき、市野村の脳へ強い負担をかける。


「う、ぐぇっ。やめっ……」

(やられる)(怖い)(とりあえず影へ逃げないと)


「今回は逃がしてなんてあげないわよ」


 向けるのは、今までの世界で受けた仕打ちの数々への強い憎悪の感情。

 怒りや悲しみ、憎悪は人の心に影響を与えやすい。それを増幅させた上で、強制的に脳内へ流し込まれた市野村は、精神が崩壊するほどの苦痛を受けたことだろう。

 そしてろくな抵抗もできないままで彼女は泡を吹き、意識を失って倒れることになった。


 そうして私は呆気ない勝利を掴んだ。

 ……ただしテレパシーの過度な使用により、私も倒れてしまったけれど。


「ココ! ココ! どうしよう、早く保健室っ」


 ゆめが慌ててそう言ったのが遠くで聞こえた気がした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ゆめ。小沢の言ってたこと、本当だと思うか」


 市野村と小沢がいっぺんに倒れ、保健室に連れて行った後、俺は嶋ゆめに尋ねていた。


「ココは嘘を吐くような子じゃないよ。だからわたしは、ココを信じる。……ココ、大丈夫かなぁ」


 小沢のこと以外は何も心配していなさそうな顔で、ゆめは保健室の方を振り返る。

 先ほど小沢に話された、彼女が『作られた人格』という話も、なんだかわかるような気がした。

 でも……正直認めたくはない。だって、それじゃあ、俺が大好きなゆめは。


「なあ、ゆめ」


「何?」


「俺のこと……どう思ってる?」


 気づけば俺は、そんな馬鹿な質問をしていた。

 なんてことを言っているんだ俺は。これじゃあまるで、恋愛感情のことを言っているみたいじゃないか。


「ご、ごめん。勘違いさせるようなこと言って。それはその、そういう意味じゃ」


「わたし、ともくんのことが好きだよ。たとえココが言ってた通りだったとしても……わたしはともくんのこと、好きだから。それだけは作られた気持ちじゃないと思うんだ」


 そう言ってニコニコ笑うゆめは、とても可愛くて。

 俺の頬は知らず赤く染まっていったのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 保健室で目が覚めたら、隣には匠がいた。


(あっ……匠)


(起きたか。熱があったから心配したぞ)


 匠から話を聞いた――と言っても一言も声は発していないが――ところ、私は屋上で倒れて、それから三時間も眠り続けていたみたい。

 横のベッドには市野村が寝ていた。かなりダメージがあったのか、うなされている。


(市野村をやっつけたのか)


(やっつけたのとはちょっと違うかな。精神に負担をかけて、『恐怖』に縛り付けられるようにしたの。これでもう私たちに手出しはできないはずよ)


(悪役がやりそうな手口だな……)


 匠の言う通り、私は多分、人としていけないことをしたんだと思う。

 でも構わなかった。だって市野村を放置していたら、私や、私の大切な人が被害に遭うかも知れなかったのだから。


(匠の方はどうだったの)


(秋村を倒した。と言ってもトランプ勝負だったけどな。一応、仲間に引き入れられた……と思う。まあ信頼するには値しない相手だとは思うが……)


(そう。良かった)


 私たちはたった一日で、この先敵対することになる人物のうちの二人――市野村と秋村を撃破するに至った。

 それはきっと、私が記憶を引き継がなければできなかった快挙だ。

 しかしそれを喜んでもいられない。だって私たちにはまだ、立ちはだかる障害がたくさんあるのだから。


(次やるべきは、武内先生たちを倒すこと。それに必要なのは――)



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 相川の瞬間移動能力を頼れば、ここに来るのは簡単だった。

 ――嶋邸。三十九回目の世界で私たちが最終決戦に挑む前、世界の真実を知らされた場所。

 そして嶋ゆなの住処だ。


 この戦いにおいて嶋ゆなの存在は欠かせない。

 いくら私の能力――強化版テレパシーとでも名付けよう――があったとしても、武内先生や城山恵理子、そして学園長に立ち向かうのは至難の業だ。


 だから今は一人でも多く戦力が欲しい。その意味でゆなは最優先で協力を取り付けるべきだと判断したのだった。




「……そう。そこまで知っているのね。で、私を頼ろうというわけなの?」


 淡々と、ゆめと同じ顔なのに双子とは思えない口調でゆながそう問いかける。


 現在、彼女と向かい合っているのは私、そして相川の二人だけだった。

 あえてゆめを連れて来なかったのは、ややこしいことにしたくなかったから。ゆめを置いていくのは心配だったので、匠と一緒に待たせてある。

 相川は「俺がゆめと待っていたかったのに」と不服そうに言ったが、瞬間移動の能力持ちが彼なので仕方ない。私だって、本音を言えば相川なんかより匠と一緒に来たかった。


 まあ、過ぎたことをぐだぐだ考えるのはこれくらいにしておいて、ゆなの話に戻ろう。

 本当はゆなに聞きたいことは色々とある。だが、それは全て後回しだ。


 私が先手を打って行動を起こしたことにより、状況は大きな変化を遂げているはずだった。

 いつも最終決戦までは数週間から二ヶ月ほどの月日の猶予があった。だが今回ばかりは全く違う。


 だから、


「あなたの剥奪の能力で敵対勢力の要、城山恵理子の電撃能力を消し去りたいの。あなたは私たちの味方……なんでしょう?」


「……その認識で、間違っていない。あなたが世界の真実を知っているというところは信用できるわね。手伝ってあげてもいいわ」


 嶋ゆなは眉一つ動かさないままで、こくりと頷いてくれた。

 彼女を頷かせるための言葉をたくさん用意していた私は、正直拍子抜けしてしまったのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 わたくしは学園長である城山峩朗の孫娘であり、エレクトロキネシスの能力者。

 わたくしこそ最強。物理的にも精神的にもあらゆるものを操ることができるわたくしに敵う人間など、この学園にはいない。

 雑魚どもはせいぜいわたくしを崇め、讃えていればいい。それが雑魚の務めというものでしょう。


 今まではその学園の秩序は守られ続けていた。

 だが最近、わたくしの耳に不快な噂が届いてくるようになった。


 ……この学園の中にテレパスが潜んでいるというのだ。しかも、一人の女子生徒を再起不能にしているという。


 教師の武内が言っていたから間違いない。

 彼は、お祖父様から信頼されている手駒の一人。テレパスを極度に嫌う彼は怒り狂っていたのを思い出す。



 わたくしも彼にまったくの同感だ。

 なぜなら、わたくしの心のうちが読まれるなんて決してあってはならないことだから。

 そうなる前に、一刻も早く討伐しなければならない。小沢心音、そして転校生の佐々木匠の二人を――。


「よう、ここにいたのか、城山さん。結構探したぜ?」


 小沢心音たちを探して学園内を歩いていたわたくしを、背後から呼び止める声がした。

 振り返ればそこにはヘラヘラした笑みを浮かべた男子生徒の姿がある。彼は確か……。


「秋村くん、だったかしら。あなたは確か二年A組の生徒ね。……わたくしに何かご用でも? わたくし、暇じゃないのだけれど」


「ああ。ちょっと頼み事をな」


「頼み事?」


「この学園にテレパスがいるって話、知ってるか? それを一緒に退治してほしい」


 ――この男、何が狙いなのかしら。

 わたくしは改めて彼を凝視した。何気ない風を装ってはいるが、あまりにもタイミングが良すぎる会話を振ってくることは充分に警戒すべき点だ。


 お祖父様は大抵の能力者を把握しており、当然ながらわたくしも知っている。彼はダークネスの能力者だったはず。

 彼は今のところ、武内の関係者でもなければあの謎の用務員との繋がりもない人間だ。そんな彼がどうしてテレパスを退治などと言い出しているのか、探りを入れる必要があった。


「あなたはどうしてわたくしなどに声をかけるのかしら。わたくしがテレパスの味方だったらどうするつもりなの?」


「そうじゃないっていう情報は得られてる。あんたは心の中を覗かれたくないんだろ、次期生徒会長候補さん?」


 ニヤニヤしながら秋村が言った。

 人のことを知ったように言うんじゃないわよ。電撃で今すぐ殺してやろうかと思うが、やめる。わたくし自ら手を下すほどもない。

 どうやってこの男を振り切ろうか、そんな風に考えていた時だった――。


「――剥奪」


 ごん、と鈍い衝撃が全身に走り、と地平ががたんと大きく傾いだのだ。

 かと思えばわたくしは全身を床に叩きつけていて、天井を見上げていた。そして一気に霞んでいく視界の中にとらえたのは――。


「ど、うして」


 瞬間移動能力者の相川智浩と、能力を持たないはずの嶋ゆめだった。

 いいや、違う。あれは嶋ゆめではない。彼女とはまったく違う雰囲気をまとっている。だれなの、彼女は……?

 なにはともあれ襲げきされたのはじじつ。電げきではんげきしなければ。そうおもっておきあがろうとして気づいた。のうりょくがつかえない。それどころか、しこうがにぶってきている?


「一瞬で気絶しなかったのね。さすが因子の子孫とあってしぶとい」


「でもその様子だともうダメだろうな。……せめて力を悪事に使わなければ真っ当に生きられただろうに」


「敵に同情する余地なし。そうでしょ、秋村」


「俺は別に敵だの味方だのという考え方はしてないからな」


「ふーん」


 なにか、こえがきこえてくる。でもいみはよくわからない。

 ここはどこ。わたくしは、わたしは、いったい――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 彼女の心を覗いても、そこはもう意味を持たない単語の断片が漂っているだけだった。


 廊下に横たわっている城山恵理子だったもの(・・・・・・・・・・)を見下ろし、私は黙り込んでいた。

 今まで何度も苦しめられてきた敵だ。常に私と敵対し、殺そうとしてきたし、実際殺された周回だってある。


 しかしそれでも、一人の美少女が涎を垂らして地を這う姿は哀れに感じてしまう。これがあの城山恵里子だっただなんて、思えない。


「能力を剥奪しただけで、こんな風になるの……?」


「人間として重要な根本が壊れたもの。あのキャンディ娘(市野村)と違って。あなたが彼女にした仕打ちはまだ生ぬるい方ということ」


「…………」


 改めて私は、自分たちがどれほど恐ろしいことをしているのかを知った。

 命を賭けた――多くの人々の人生を歪ませ、変えてしまうほどの大きな戦いに足を踏み入れているのだと。


 城山恵里子の能力を剥奪するにあたって協力してくれたのは、嶋ゆな、相川、そして秋村。

 秋村が気をひきつけている間に相川の能力で彼とゆなが背後に回り、能力を剥奪する。返り討ちに遭う可能性もあったが、どうにか無事でやり遂げてくれたようで良かった。


 相川と秋村が恵理子を運び出し、保健室へ連れていく。

 私とゆなは二人きり、廊下に残された。


「これで私の出番はおしまい?」


 ゆめにそっくりな瞳を私へ向ける、姫カットの少女、ゆな。

 私は「ううん」と首を振った。


「いいえ、まだよ。まだ、あなたにやってもらわないといけないことがあるもの」


「何?」


「決まっているでしょう。――ゆめの記憶を、返してあげて」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 心音たちが城山恵理子を処理する計画を立て、それを実行している間に俺に任されたのは仲間集め。

 だがそれは容易いことではなかった。人望がある心音とは違って、俺は転校生にしてブス男。女子にも男子にもろくに振り向いてもらえないような男だ。

 それでも頼まれたからにはやらなくてはならない。そう思った。

 いや、正直に言えば違う。俺は知らず知らずのうちに心音のことが好きになっていたんだ。


 心音の話では『以前』の俺も彼女が好きだったというが、きっとその通りなんだろうな。

 俺は心音に惚れてしまう運命らしい。まったく、そのせいでこんなことに巻き込まれていると思うと運命というのは厄介なものだ。


「はぁ……」


「どうしたんだ、テレパス(・・・・)


「――!?」


 全然捗らない仲間集めのために廊下をとぼとぼと歩いていると、突然声をかけられたので俺は驚いた。

 これがもしも名前で呼ばれていたとしたらここまで驚かずに済んだだろう。だが、『テレパス』などと名指しされてしまえば、足を止めずにはいられなかった。

 しかもその声はこの学校の生徒なら誰でも知っているものだった。そう、転校してたった数日の俺でさえ。


「た、武内……」


「先生を呼び捨てにするのは良くないと思うぞ」


 若くして、学園長に次ぐ権力を持つ男――指導教諭の武内先生だ。

 彼は俺を人でも殺せそうなほど鋭い視線で睨みつけている。


(このクソガキが)

(テレパス)(人間の敵)(消し去って(・・・・・)やる)


 敵意に溢れる心の声がダダ漏れだった。隠そうともしていない。

 俺はここで、嶋ゆなと同じ『剥奪』という力を持つ男と相対することになった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「恵理子がやられたか……。なかなかのやり手のようじゃの」


 身長三メートル以上の巨漢の男――城山峩朗はボソリと呟いた。

 孫娘の狂った姿を見ても大して驚いた様子もない。それはきっと、彼が人間ではないからだろうと秋津は思う。


 もっとも、その秋津自身も人間であって人間ではないような存在なのだけれど。

 『結界』『時間の巻き戻し』『不死身』。一つの身に三つの超能力を宿し、永遠の時を生きる秋津はきっと、人間の部類ではないだろうから。


「盤面はひっくり返りつつありますよ。今度こそ、あなたは負けるかも知れませんな」


「さあ、どうだか……。そうだな、なら儂の方から出向いてやろうか。本当に相手の力が儂を打ち倒すに足るるかをな」


 学園長城山峩朗はニヤリと笑う。

 秋津はその姿を眺め、小さく嘆息してから、そっと学園長室を出た。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「姉さんの記憶を戻したところでどうなるの? 姉さんがそれで喜ぶとでも言うの?」


 嶋ゆなは信じられないものを見るような目でこちらを見ながら首を傾げる。

 彼女の心の声は、(何を今更)と明らかに否定的な色を帯びていた。


 それはそうだろう。ゆめの記憶を奪ったのは他ならない彼女自身なのだから。


 でも、と私は思う。

 ゆめは記憶を奪われ、偽の記憶を植え付けられて道具としてこの学園に送り込まれたのだ。

 ……このままだなんて許せるわけがない。


「返してあげて」


「姉さんのあの精神性は、記憶を奪っていわば『空っぽ』の状態だからこそ存在し得る。もしも戻したら、あなたの親友はこの世から消えてしまうのよ。それでもいいのかしら」


 静かな声で脅しをかけてくるゆな。

 それでも私は、屈しなかった。


「だって、ゆめはゆめだもの。ゆめ自身も、相川くんだってそう思ってるわ」


「……強情」


「そう。私、強情なの」


 私は基本的に、他の人のことを信用しない。

 だからこそ一度信頼した人への情は熱い方だと自覚している。親友のゆめのためなら命を張れるくらいの自信はあった。


「わかった。なら、姉さんの記憶と能力を戻してもいいわ」


「記憶と……能力? え、ゆめから能力を奪ってたの!?」


 私は驚愕した。

 だって能力を奪われた者の末路は先ほど目にした通りなのだ。でもゆめは、少なくとも精神が破壊されてはいない。

 困惑する私に、ゆなが説明してくれた。


「嶋家の者は特別なのよ。盗られたくらいで狂いはしない。でも期待しないで。姉さんの力は大したものではないから。……短期予知。未来をほんの一部だけ見る力。だけど短期と名のつく通り、たった数秒先の未来しか見えないので使い物にならないの」


 未来を見る、予知能力。

 三十九回も繰り返した世界の記憶を持つ私でも知らなかった、ゆめにかつて備わっていた能力。


 ゆなは使い物にならないと言ったが私は全然そうは思わない。

 だって――。


「どんな攻撃をされても、避けられるということでしょう。それはきっと大きな力になるわ」


「避け切れない大きな攻撃をされたら無意味」


「そんなことないわ。やられると思ったら、身を守る方法も見つかるかも知れないでしょう」


 戦いにおいて先読みというのは一番欲しい力。

 それをゆめが持っているとしたら……なんとも心強い。


「……姉さんの能力が役に立つか立たないかは実際試してみるといい。一度屋敷に姉さんを連れて行くわ」


 ゆなはこれ以上私と話す気はないとばかりに踵を返し、どこかへと歩き去って行く。

 きっとゆめのところへ向かうのだろう。私は彼女を追わなかった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」


 弱い自分がどこまでも情けない。

 同じテレパスでも心音は市野村を超能力で倒したと言っていた。なのに俺はただ逃げることしかできない。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 息が切れる。走るペースがだんだんと遅くなっていく。

 しかし完全に足を止めるわけにはいかなかった。なぜなら背後から凄まじい殺気が漂っているからだ。


(奪う)(消し去る)(子供一人に私が負けるわけがない)

(小賢しい)(鬼ごっこのつもりか)(そんなに足が遅くて私に勝てるとでも思うなよ)


 心の声の距離が、だんだんと近づいて来る。

 俺は周囲を見回した。ここは職員室の近くだ。武内の他の教員ももし敵側と考えるとするならば、俺に逃げ場はないだろう。

 どうしてわざわざこっちへ来てしまったかといえば、一心不乱に武内から逃れていたからだった。俺は攻撃手段を持たない。

 俺は心音と違って、テレパシーで攻撃するという手段を習得していない。


 とにかく今は逃げるしかない。どうにかこの場面を切り抜けないと――。


 などと思っていたら案の定、職員室から五人の人間が出て来た。

 一年生、二年生、そして三年生の担任教師だ。その中には俺たちのクラスの担任もいた。


 彼らが一体何の能力者かはわからない。だが確実に、六対一で敵うはずがないということだけはわかる。


「クソ、どうすれば……」


(ねえ匠。聞こえてる?)


 そんな時、俺の心に直接語りかける声がした。

 しかし首を回してみても彼女の姿はない。勘違いかと思ったが、違った。


(今そっちに向かってるわ。その間、なんとか持ち堪えてほしいの。今からテレパシーでの闘い方を教えるから)


(心音、今どこに)


(時間がないでしょう。ちゃんと聞いて)

(人間はこの脳内の肉体と実際の肉体をリンクさせ、互いにフィードバックすることで身体を動かしている……そう用務員さんが言ってた。それを応用して、脳の一部に刺激を与えて痛みを与えるの。いいからやってみて)

(私は距離が遠すぎて攻撃できない。匠、お願い。頑張って)(死なないでいて)


 姿の見えない心音から大雑把な指示を受け、俺は困惑した。

 だが、戸惑っている暇などない。現に今目の前にいる五人の教諭がなんらかの攻撃を放とうとしている。

 俺はやるしかないようだった。


 教諭たちの身体イメージを探る。

 戦いの最中だからだろうか、現在活性化されているらしいその部分を見つけるのは難しくなかった。あとはただ、痛みを与えるだけ。


「――ッ!」


 力を込め、歯を食いしばる。

 すると次の瞬間だった。


 五人の教諭がいっぺんに倒れ、苦しみ悶えだしたのだ。


 今まで他人の心を読み取り、そのおかげで上手に生きてきた。力をうまく利用できていると思っていた。

 しかしそれは誤りだった。テレパスの真の能力はこれなのだと、今実感した。

 だが、


「それでもやれないのかよ……」


「いい加減覚悟をしろ、テレパス。お前たちにすでに逃げ道などないのだということを」


 たった一人、武内だけは鼻血を噴き出しながらも俺に襲い掛かって来る。


(ごめん心音。もう俺ダメかも――)


「ダメなわけ、ないでしょ!!!」


 避けられない。

 諦めかけた俺の耳に、そんな声が届いて。

 あともう少しで触れる距離まで来ていた武内の動きがなぜか、ピッタリと停止していた。


「さっきの程度で真の能力なんて甘いよ。テレパスの真の能力は、もっともっと凄まじいものなんだから。

 この程度で我慢してあげる私を優しいと思うべきよね、武内先生?」


 武内のさらに背後からひょっこり顔を覗かせた少女――心音は、可愛い顔でそんな怖いことを言って。

 俺はその瞬間、助けられたはずなのに思わず身震いしてしまった。



 武内とその他の教諭五人は、生徒に暴行を振るおうとしたとしてその日のうちに辞職となった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 小沢に負けてからずっと、あたしは嫌な夢を見る。

 いや、これはきっと夢じゃないんだろう。幻覚と幻聴に違いない。


 あたしは今、家のベッドで寝ている……はず。

 なのにずっと悲鳴や泣き叫ぶ声が聞こえて、目の前を存在しない怪物たちがうろつき回っている。

 これが小沢の能力だというのか。つい先日まであたしたち(他の超能力者)のことも把握していなかっただろう人間が、どうしてこんな力を。


「小沢、ムカつく。せんせぇ助けてよ……」


「俺はお前の先生じゃないが、助けてやってもいいぞ」


「……? あんた、誰?」


 最近ずっと誰も彼もが闘牛に見えてしまって判別がつかない。

 あたしが睨むと、牛はフルフルと首を振って言った。


「俺だよ俺。秋村郁人。唯お前、かなりこっぴどくやられたらしいな」


「……郁人、あんた、なんでここに」


 あたしが小沢にやられてからのことは風の噂で聞いている。

 郁人がテレパスのもう一人――佐々木に負けて、あっちの傘下に入ったというのだ。今まで一応味方してやっていたのに。

 裏切ったくせに今更、一体何を。


「小沢の能力を奪えば、唯のその異常状態も元に戻るんだろ。なら、一緒にテレパスをやっちまおうぜ」


「あんた、あいつらの仲間なんでしょ。あんたがエリを殺ったってのも聞いてるんだから。まぁ、あいつは超ムカつく女だったから別に嬉しいくらいだけどさ」


「そんなことまで知ってんのか。お前、耳早いな。……そんなことはどうでもいい。とにかくだ。今は佐々木の奴に負けたから表面上俺はあいつらに従ってるけど、このまま終わるのじゃ面白くないだろ。だから唯を誘いに来たんだ」


「っていうと?」


「言っただろ。テレパスをやっつけてやるんだ。俺としてもあいつらの存在はちょっと不愉快なんでな。

 きっとそれが終わったら武内先生もお前のこと気に入ってくれるぞ」


 牛はそう言って、ニヤリと嗤う。

 あたしは秋村郁人を名乗るその牛の言葉を、信じてみることにした。


「それ、悪くないじゃん。あたし乗っかってあげてもいいよ?」


 この時のあたしはまだ知らない。

 まさか先生がもう、すでに懲戒免職処分を受けた後だったなんて。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 順調に敵の戦力は削れている。

 秋村は私たちの仲間になり。

 市野村は私の能力によって精神を病み。

 城山恵里子はあの通り。そして武内先生は学園からいなくなった。


 たった一週間足らずでこれだけのことをできたのは、我ながらすごいと思う。


(ありがとうな心音)(心音がいなかったら俺はもうダメだった)


(匠は諦めるのが早すぎるんだよ、もう)(自分の命もっと大事にしてよね)


 そんなことを言い合いながらも、私は常に警戒し続けている。

 一瞬たりとも油断はできない。

 だって肝心要のラスボス(学園長)がいつ現れるかなんてわからないのだから。


 油断したら何もかもが台無しになってしまう。

 常に気を張り、細かなことにも注意して……。


(そうじゃないと、匠が、みんながまた死んじゃう)


 もう誰も失いたくない。だから私が頑張らないと。


(なあ心音)


(ん? 何?)


(……君、疲れてるだろ)


 その一言に私はギクリとした。


(疲れてなんてないよ。私はまだまだ頑張れる。頑張らなきゃいけないんだから)


 無理に笑って見せたけど、実際私は疲れているのかも知れない。

 最近、夜もずっとこの先のことを考えていた。眠っている間に何か大変なことが起こるんじゃないかと思ってずっと心が休まらないからだ。

 でも匠に心配させるほどのことでもない。これくらい、大丈夫。


(強がらないで。疲れたら、俺に全部任せてくれ)(俺、まだまだ頼りないし心音より全然弱くて情けなくてどうしようもない奴だけど、心音のこと守るからさ)


(ありがとう)(でも匠はもっと訓練した方がいいと思うよ。守ってもらうのは私より強くなってから。ね?)


 そう。私は匠より強い。

 だから今回は匠を守るのは私だ。前回と同じ末路は、絶対に辿りたくない。

 どんなに苦しくても、辛くても、耐えなくちゃいけないんだ。


(あ、れ)


 そうして決意を新たにしようとしたちょうどその時、私は全身に力が入らないことに気づいた。

 もしかして敵の攻撃? やばい。もしそうなら、匠を逃がさないと……。


 そこで私の意識は途切れた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「心音、無理し過ぎなんだよ」


 たった数日の間に二度も学園内で倒れるなんてまったくどうかしていると思う。

 俺を守ろうだなんて思っているが、まずは自分の体を心配してほしい。こんなことで倒れたら本末転倒だろうに。


 保健室のベッドの上で横たわる心音は、安らかな寝顔をしている。

 今の彼女からは何かに取り憑かれたような使命感も感じられず、年相応の普通の少女に見えた。


「ごめんな。きっと俺のせいで、心音は消耗してるんだよな」


 ことあるごとに心音の思考にちらつく、俺の死に様。

 彼女が言う『前回』で、俺は心音を庇って死んだ……らしい。俺が誰かを庇って命を捨てるほどの勇気のある男とは自分で思えないのだが、心音が嘘を吐いているとは今更思わない。


 心音は俺を死なせたくなくて、必死だ。

 それはわかっている。だが、今の俺には彼女の不安を払拭してやる術がなかった。

 だって武内との戦いの時でさえあんなことになったのだ。正体の知れぬ学園長とやらと戦った時、無事でいられるとは思えない。


「……浮かない顔をして、何かご不満でも?」


「不満ってわけじゃない。ただ心音のことが心配で……ってゆなさん!?」


「声が大きい。ここは保健室。弁えて」


 考え事をしていたらいつの間にか誰かが割り込んで来た。視線を上げると、すぐそこに嶋ゆなの姿があった。

 一体いつ保健室に入ってきたのだろうか。気配が全くなかったことに驚きしかない。


「嶋家の者なら気配くらいすぐに消せるわ。何でもなことよ。そんなことより、話がある」


「話……?」


「姉さん――嶋ゆめについてのこと。話すより見てもらう方が早いか。……入って来て、姉さん」


「わかったよ〜」


 この場に似合わぬ明るい声で答え、扉を開けて姿を現したのは心音の親友のゆめだった。

 しかし俺は彼女に若干の違和感を覚える。二、三度心音とゆめと三人で帰ることがあり、その時はひだまりのような邪念のない心根で驚いたものだが……少しだけ、あの時とは違う。

 言葉では言い表せないが、何らかの変化が生じているのは確かだった。


「ココ、倒れちゃったか。そっか最近疲れてたもんね。ここまで運んでくれてありがと、佐々木くん。

 佐々木くん、びっくりしてるみたいだね? 実はわたしもちょっとまだ慣れてなかったりするの。でも大丈夫。わたしはわたしのままだから気軽に接してね」


「ああ」


 俺は頷きつつ、ゆめの隣のゆなに視線で問いかける。

 「ゆめに何をしたんだ」と。


(姉さんの記憶を戻した。ただそれだけよ。でもまさかここまで変化が小さいだなんて、私も驚きだわ)


 ゆながあえて心の声で応答したのだろうその言葉に、俺は息を呑むしかなかった。

 心音の話で、(ゆめの人格はゆなによって手が加えられている)と教えられたが、本当に人間の記憶を抜いたり入れたりできるものなのか。


 でもゆめの心を深く読めば、すぐにわかることだった。

 ゆめの中になかったはずの記憶がたくさんある。嶋家についてのこと、ゆなのこと、その他等々……。

 これほど記憶内容が増えれば、人格が大きく変わっても不思議ではない。なのに何なのだ、この変わらない笑顔は。


「姉さんは昔からそうなのよ」


「言ったでしょ、わたしはわたしだって。あ、そうそう。それに大事なことが一つあるんだよね。実はわたし、超能力者だったの! これからはココたちのために一緒に戦えるよ!」


 自慢げに胸を張るゆめは確かに可愛い。惚れる相川の気持ちもわからなくはない。


「……じゃなくて、今、なんて言った?」


「え? だから、わたしも超能力使えるようになったって言ったの。短期予知だって〜。なんかよくわかんないけど未来が見えるってすごいよねぇ」


 まるで日常会話をしているかのような軽さでそう言って、ゆめはニコニコと笑った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ……最悪だ。

 あんなに強がって見せたくせに、倒れるなんて最悪過ぎる。どうやって顔向けしたらいいのかわからない。


 帰り道、私は匠とゆめの生暖かい視線をたっぷり浴びながら恥ずかしさに身を捩っていた。

 ちなみにゆめの記憶の件はすでに知らされた後だ。それだけではなく、約十秒後の未来が本当に見えることがわかって驚いた。

 間違いなく言える。ゆめは私よりずっとすごい能力を持っていると。


「そんなことないって〜。ココはわたしのこと買い被り過ぎだよ」


 記憶を取り戻したことでゆめが変わるんじゃないかと心配していたけど、この様子だと杞憂だったようだ。

 ゆめのこういうところが好きだから変わらないでいてくれて良かった、と心から思った。


(心音はほんと、ゆめのことが好きなんだな)


(当然でしょ。私のたった一人の親友なんだから)


 最悪な気分も、ゆめといるうちにどんどん晴れていってしまうから不思議だ。

 ゆめの人格は作られたものなんかじゃなかった。本当の本当に、まっさらで綺麗だった。


(あれ? 何か視えた)


 と、その時、ゆめがふと首を傾げた。

 何かと思って心を覗けば、そこにはとある脳内イメージが浮かんでいた。


 そこに映るのは、ゆめの目の前に立つツインテールの少女。

 棒付きキャンディをガリガリやっているその姿には見覚えがあった。あり過ぎた。


 ……まさか。

 認めたくない事実に思い至ったのと、声がしたのはほぼ同時だった。


「あのさー、友達ごっこしてるとこ悪いんだけど、『あ〜幸せ〜』みたいな顔すんのやめてくれる? 牛のくせにさぁ。牛なら牛らしくモーモー鳴いてりゃいいでしょうが」


「牛に見えてるのお前だけだから通じねえよ、唯」


「郁人はうるせえのよ! 黙ってて! とにかく小沢を殺す。殺してやるんだからっ」


 路地の角から市野村と秋村の二人組が飛び出して来て、私たちに先制攻撃を仕掛けて来たのだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 秋村が裏切る可能性は考えなくはなかった。

 だがまさか、市野村を連れて来るなんて。再起不能にしておいたはずなのに……!


 まさに油断。

 学園外で戦うことになるなんて。この可能性もしっかり考えておくべきだった。自分の考えの甘さに反吐が出そうになる。

 秋村のダークネスと市野村の影縫いはどこまでも相性が良さ過ぎる。


 ダークネスで闇を作り、それを利用して市野村が直接的ダメージを与えてくる。

 私は思念波を飛ばしそうとするが、ダークネスの能力によってブロックされて届かない。逆に、秋村のどこまでも深い闇に引き摺られそうになる。


「あぁ……うぐっ」


「よくもやってくれやがったわねぇ、小沢! あたし今超ムカついてんの!」


 止まらない追撃。

 どうしよう。このままじゃ保たない。


「秋村、何で裏切ったんだ。俺との勝負を忘れたのか!?」


 匠が叫ぶ。秋村はニヤッと笑った。


「さてな。仲間になってやるとは言ったが、裏切らないと言った覚えはないぞ?」


 戦いが加熱する。

 数はこちらの方が多い。だが匠はまだテレパシーが使いこなせていないし、ゆめは攻撃力としてはゼロだし、私だって限界がある。


(誰か。誰か誰か誰か誰か誰か――!)


 その心の叫びが聞こえたのだろうか。

 私が想像もしていなかった人物が、人気のない路地裏に現れることになる。


「校外で勝負を仕掛けるのはあまり賢明ではないな」


「秋津さん……!」


 正体不明の用務員、秋津さんだった。


 秋津さんは何の能力を持っているのか、私にはわからない。

 ただ言えるのは、彼が私たちの味方であること。それと、絶対に市野村たちの暴挙を許さないであろうことだ。


(消える……!)


 ゆめが心の中で声を上げる。

 同時に市野村はわかりやすく激昂した。


「何よおっさん。あたしらはあたしらの戦いしてんのよ! 邪魔すん――」


 そして。


「消去」


 どこへともなく掻き消えた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 結界能力を応用すれば、存在の抹消など容易いこと。

 正しくは抹消ではなく異次元に飛ばしているだけなのだが、その点を詳しく説明する必要はないだろう。


 だが、と秋津は思う。

 たった今自分は生徒たちのサイキックバトルに介入した。例えそれが規則を破った者への処罰のためだとしても、先ほどの行動は明らかにテレパスたちの味方をしたことになる。

 自分はこれから公平な存在としてはいられなくなった。だから当然、敵対する者も現れるということになり――。


「……来たか」


「よもやお前がテレパスの味方をするとは思わなんだ」


 異次元生命体(学園長)が、秋津がテレパスに力を貸すのを認めない『悪役』として、やって来た。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 市野村たちが消えた。

 そう思って安堵したのもほんの束の間だった。


「次から次へと何なの……?」


「面目ない。先ほどの介入により、ことを早めてしまったようだ」


 秋津さんがボソリと呟く。

 彼は私たちを背に庇うようにしながら、とある人物と向かい合っていた。それは、


「そう怖がらずとも良かろう。楽に逝かせてやるのでな」


 巨人かと思うほど背の高い、初老の男性。

 学園長城山峩朗に他ならなかった。


 何の準備もないのに最終決戦にいきなり突っ込んでしまったことを悟り、私は戦慄する。

 その場に座り込んで動けなくなってしまった。


 私はすでに、先ほどの戦いでかなり消耗している。

 勝てるのかと問われれば間違いなく否だった。


「なんでこんな時に……」


 万全の状態でも勝てるかわからないというのに。これから人員を集めて挑もうと思っていたところだったのに。

 ああ、せっかくここまで来たのにここで終わってしまうの? それとも秋津さんが撃退してくれる?

 ――否。きっと秋津さんはそこまでしてくれないだろう。彼は不正や不平を正す存在であって、都合のいい人間ではないのだから。


「ゆめ、小沢、佐々木!」


「姉さんたち、まだ無事のようね。とりあえずここではダメだわ、避難なさい。早くこちらへ!」


 絶望しかけた時、そんな声がして。

 私、匠、ゆめの三人は、相川の瞬間移動でいつの間にか嶋ゆなの屋敷へやって来ていた。




「どうしよう……」

「まだ諦めないで。なんとか勝つ方法はあるはず」

「そうだよ。わたしたちの力を合わせれば、きっと!」

「でも明らかに人数が足りないだろ。学園長の力が底知れないだけじゃなく、向こうにはまだ手駒があるかも知れないんだぞ」

「そうだ、電磁パルス! ゆなさん、確かこの屋敷に電磁パルスがあるでしょ。それを持って来て、学園長と戦おう。それさえ壊れなければ大丈夫だから!」


 それからの作戦会議は非常に慌ただしく進んだ。

 とにかく私たちはみんな必死だった。一体何が起きているのかわからなかったし、勝てるとも思っていなかっただろう。

 それでも負けたくない、こんなところで死にたくないという気持ちが原動力になった。


 電磁パルスを用意して敵を待ち受ける。

 私たちが逃げたことに気づいたのだろう、学園長たちの差し金と思われる超能力者軍団が一斉に嶋邸へ襲い掛かって来た。

 しかしそれも電磁パルスさえあればなんてことはない。ただひたすら、立ち向かった。思念波を飛ばし、痛みを与えて、悶え苦しませる。


 だがこんなのはまだ序の口だった。


「コソコソと逃げ回りおって。探したぞい、テレパスたちよ」


 学園長がやって来て、拳の一振りで嶋邸を破壊。

 崩れ落ちる屋敷の中から命からがら脱出した私たちは、学園長と対峙することになる。


 今までの三十九回の繰り返しの世界の中、一度も殺れたことのない最大の強敵と。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 拳が、足蹴りが、次々と飛んで来ては私たちを襲う。


(右! 左! あ、そっち! ココ、危ない!)


 ゆめの心の悲鳴が聞こえる。

 私は彼女の短期予知によって得られた脳内画像を元に、学園長の攻撃を全てガードした。絶対に誰の命を奪わせてはやらない。守り抜いてみせるのだ。


(でもこれじゃあただの時間稼ぎでしかない……。思念波も通じない、身体ダメージを与えるのもダメ、一体どうしたらいいの!?)


(心音。諦めるな。俺がいる。俺と二人で倒すんだ)


 匠の心の声が、私を支えてくれる。

 そのおかげでなんとか膝を屈さずにいられた。


(ありがとう匠。何か考えがあるの?)


(あるにはある。だが、危険は伴うけど……)


(構わないわ、やりましょう!)


 私は目を輝かせ、頷いた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「どんな小細工をしても無駄ァ! 今回のお主らも儂には敵わぬようだなッ!」


 一体、この世界は何度目なのだろうか。

 それを城山峩朗に知る余地はない。知るつもりもない。


 いずれ峩朗を消し去ってくれるはずの少女――小沢心音の今回の奮闘ぶりは凄まじかった。

 かなりいい線まで行っていたと思う。それこそ、秋津がテレパスたちに直接的に手を貸そうと思う程度には成長していた。

 だがあと一歩、力が足りない。


 宇宙から渡来した因子である峩朗を消し去ってくれるのはどうやら今回ではないようだった。

 テレパスたちは血反吐を吐き、すでに倒れる寸前だった。


「残念だが、お主らにはやり直してもらう。今回は、終わりだァ!」


 拳を振り上げ、今度こそテレパスの少年の脳天に打ち込もうとした――その瞬間だった。


「終わるのはあんただよ、学園長。……生憎、俺が死ぬと悲しむ子がいるんでな」

「私たちの勝ちよ――!」


 峩朗の体は天高くへと吹っ飛んでいた――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



(テレパシーは直接人間の脳に作用するって言ってただろ。あれを応用して、互いの能力の限界を引き出せないかと思うんだ)


(……そんなことが)


(できるかも知れない。できないかも知れない。できなかったらそこまでだ)


 そして私たちは、テレパシーを限界まで使った。

 今まではダメージを与える時とは反対に、人間の脳の機能を活性化させ、力を引き出させるのだ。


 それはいわば短時間での進化だった。


 限界を超え、血反吐を吐きながら、限界のさらに上を行く。

 頭がガンガンして倒れそうになった。だが、まだ学園長の猛攻は止まっていない。気をしっかり保たなくては。倒れれば負けだ。



 ――想像を絶する苦しみの末、成功させた瞬間、全ての力が解放されるのを感じた。

 万能感とでも言うのだろうか。全ての痛みが遠ざかり、体の中から力が湧き上がる。


「残念だが、お主らにはやり直してもらう。今回は、終わりだァ!」


「私たちの勝ちよ――!」


 私は絶叫し、学園長の股間を思い切り蹴り上げていた。

 それだけで学園長は軽く吹っ飛び、見えなくなる。飛んで飛んで、どこまでも上昇して、やがて見えなくなった。


 「きっと宇宙の彼方に飛ばされたのでしょう。今も宇宙を漂っているでしょうね」と後にゆなは語る。

 激戦の割にはあまりに呆気なさすぎる終幕だった。


「……終わった、の……?」


「どうやら、その、ようだ、な……」


 私たちは倒れ、そのまま半日以上眠り続けたという。

 ゆめ、ゆな、相川の三人に全て後始末を全て任せてしまうことになったのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 城山峩朗が地球を離れ、宇宙に吸い込まれていく様を見送りながら、秋津は「はぁ」と静かに息を吐く。

 彼が望んでいた完全消滅という形とは違ったが、長きにわたって続いたサイキックバトルが終焉を迎えたことに間違いはなかった。


「……だがまさか、たったこれだけの時間でそれを成し遂げるとはな」


 想像以上の奮闘を見せたテレパスの少女に思いを馳せる。

 これから彼女はどう成長していくのだろう。あのレベルにまで達したのだ。正直、次なる地球の脅威となりかねない。

 しかし、


「彼女に限ってそれはない、か……。問題が起こればその時点で対応することにしよう。次の学園長の座を継ぐべくは私だな」


 地球の守護者(・・・・・・)は、新たに生まれた超越者を静かに見守ることに決めた――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 あの壮絶な戦いが幕を閉じて、一夜明けた。

 当たり前のように朝日が昇り、いつもと変わらない一日が始まる。

 学園に通い、勉強をし、友達と過ごす。そんな高校生の普通の日常が戻って来たのだ。


「……まるで何事もなかったみたい」


 でももちろん、変わったことだってちゃんとある。

 例えば、学園長が元用務員の秋津さんになったこととか。

 例えば、なぜか私が生徒会長に抜擢されたりとか。

 例えば、相川とゆめがいい感じになって、カップル成立したこと。

 そして――。


(なあ心音)


(何、急に改まって。もしかして告白?)


(――! 先に人の心読むなよ!)


(だって私、テレパスだし? でも忘れないで、先に告ったのは私だからね。だから匠は返事をする方でしょ)


(そうだな。じゃ、改めて)

「俺も君と付き合いたい。君のことが好きになったんだ」


 恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、心の声ではなく、皆にも聴こえる普通の声で、そんな嬉し過ぎることを言われた。

 ありがとう、とか、私も大好き、とかたくさんの言葉が浮かんだけれど。

 私が返せたのはたった一言だけだった。


「……遅過ぎるよ、匠」


 涙が頬を伝った。




〜END〜

 これにてリレー小説『サイキック学園』完結です!

 最終話がめちゃくちゃ長くなってしまいました。すみません……。



 ここまでお読みくださった皆様、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました!

 初めてのリレー小説、とってもとっても楽しかったです!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] お疲れさまでした〜! バトルが一番多い回で燃えました。 柴野さんらしい書き方も好きです(*´ω`*)
[良い点] すべてをよく纏めた、渾身の最終話だったように思います。 [気になる点] 股間を……(*´﹃`*) [一言] お疲れ様でした!(*^^*)
[良い点] お疲れ様でしたー。 良く纏めましたね。 とても面白かったですし、本当に参加できて光栄でした。 ありがとうございましたm(_ _)m
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