手を繋ぐ、雨が降りしきる中、時計の針が進む中、
今日は雨だ。
雨の中、俺は傘も差さずに通学路を歩いていた。
雨を弾く魔法ーー《雨消》
その魔法を発動している時だけ、俺は雨に濡れることはない。
「にしても、雨はやっぱ嫌いだ」
雨の日は相変わらず体が重い。
早く止まないか、と空を眺めていた。
「あ!雨宮くん、おはよう」
クラスメートの女子、晴野さんが傘も差さずに俺の方へと走ってきた。
晴野さんはびしょびしょに濡れている。
俺は晴野さんと一緒に屋根の下まで行き、ゆっくりと話していた。
「晴野さん、大丈夫?」
「う、うん。雨宮くんも傘差してないと思ったけど、なんか濡れてなくない?」
「魔法を使っててね」
この世界では、別段、魔法を使うということは特別なことではない。
魔法は日常茶飯事で、それほど不思議な光景でもない。
「晴野さんは魔法使わないの?」
「使いたいけどさ、私、魔法がそれほど上手じゃないんだよ」
「そうなの?」
「知ってるでしょ。私の魔法の成績。学年最下位だよ。だからいい加減、私も頑張らないとなって思ってるんだけどね……」
晴野さんの瞳は少し曇っている。
魔法を使えない、それが嫌なのだろう。
「ねえ晴野さん、手、繋ごうよ?」
「……な、何言ってるの!?」
晴野さんは驚いていた。
「俺の魔法は付与できる。だから少しでも俺の魔法を感じて、魔法が使えるようになってほしいんだ」
「そういうことなら……」
晴野さんの手は俺の手に少しずつ近づいていく。そして手と手が触れ合った瞬間、雨を弾く魔法が付与される。
手を繋いでいる間、俺の魔法は付与され続ける。
俺は晴野さんと繋がっている、そう感じていた。
「それじゃあ行こう。これで雨にも濡れないし」
雨の中、俺と彼女は手を繋ぐ。
温かい、不思議と温かい。
「雨か……。嫌いじゃなくなった、かもな」
「どうかした?」
「いいや。なんでもないーーただ、悪くないなって思ってな」
「何が?」
「ーー好きだよ」
晴野さんはにっこりと笑い、言う。
「私もですよ」
雨の中、俺と彼女は手を繋ぐ。
ーーああ。このまま雨が降り続ければ良いのに。。。