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08. 勉強会最終日

 

 ――試験前日


 ロゼッタ達は、生徒会室で黙々と勉強をしていた。


 その理由は、初めて生徒会室で勉強会をした後、カイルがある事を提案する。


「さっき思ったんだけど、明日も図書館が使えない可能性が有るから、明日以降ここで勉強会しない?」

「確かにそうですね。私はカイル様の意見に賛成です」

「俺は、何処でも構わない」

「……」

「ロゼッタ嬢は?」


 返事が無いロゼッタをカイルは心配そうに見る。


(別に生徒会室でも良いんだけど……これからも確実にカイルの横か前の席をキープしたい。あと、マリナがアスベルトから離れて座ってしまう可能性も有りそうだし……)


「別に構いませんが、席はこのままだと嬉しいです。もし、分からない問題が有った際に、質問しやすいので」

「……分かった。構わない」

「それじゃ、明日からの勉強会は生徒会室って事で!」


 アスベルトの言葉を聞いたカイルは、手をパンッと軽く叩き言う。


 そうして、翌日から生徒会室での勉強会が始まり、ロゼッタは斜め前に座っているマリナを横目で定期的にチラチラと見ていた。

 たまに悩むそぶりは見せるものの、彼女は誰かに教えてもら様な行動はせず、自分一人の力で問題を解いていた。


(今日まで見てきたけど、全然行動しなかった。って、事は今日行動する可能性大だよね。私の前世の記憶が正しければ、試験期間中は勉強会してなかったし)


 ロゼッタは、今までよりも注意深くマリナを横目でチラチラと見ていた。

 すると、マリナは人差し指を頬に当て悩み始める。

 何時もマリナは悩んだ後、自分で答えを解いてしまうためロゼッタは下手に動けずにいた。


 その時「あのー」とマリナの声がロゼッタの耳に聞こえてくると、彼女は直ぐさま自分の横に座っているカイルに喋りかける。


「あの、カイル様。ここの問題を教えて欲しいのですが……」

「え?」


 そこだけ時間が止まったかのようにカイルの動きが止まる。


「カイル様?」


 ロゼッタは不思議そうにカイルを見つめていると、少しドスのきいた声がロゼッタの耳に届く。


「おい。分からない問題が有るなら俺が教えてやる」

「――え?」


 ロゼッタは声が聞こえてきた方に顔を向けると、そこには眉間に少しシワを寄せているアスベルトの顔があった。


(何? って言うか、さっきアスベルトなんて言った?)


 するとアスベルトはロゼッタの心を読んだように、もう一度同じ事を言う。


「分からない問題が有るなら俺が教えてやる」


(えーと、つまり……アスベルトが私に問題を教えてくれるって事? いや、それって結構マズ。どうにかして、マリナの問題を手伝わせないと……)


 ロゼッタは、チラリとマリナを見ると、彼女は自分で問題か解けたのか"あー!”と言うように手をポンッと軽く叩くと、すらすらとペンを走らせる。


(え? 待って、さっきのはまさかのフェイント!? て事は次もあるって事だよね。いつマリナが動くか分からないから、早くアスベルトの申し出断らないと。でも、どうやって断れば……)


 ロゼッタは“う~ん”と言うように悩み始める。

 そんな彼女の姿を見ていたアスベルトの表情がだんだんと曇っていく。


 その一部始終を見ていたカイルが二人の間に入る。


「あのさ、ロゼッタ嬢! オレもそこまで頭良いわけじゃ無いから、アスベルトに聞いた方が良いと思うよ。だからごめんね!」


 そう言うと、カイルは直ぐに自分の教科書に目を落とす。


 カイルにああ言われ、アスベルトの申し出を断ることが出来なくなり、ロゼッタはマリナがいつ動くか分からないと言う不安の中、アスベルトに勉強を教えてもらうことにした。


「……アスベルト様、ここの問題が分からないので、教えていただけたら嬉しいです」


 ロゼッタはカイルに教えてもらうはずだった問題の箇所を指さして教えると、その場所をアスベルトは丁寧に教える。


「魔法属性についてか……まずは風魔法から、物体に風魔法をかければ速度があがったりする――」


 教えてもらっている最中もロゼッタはマリナの行動が気になり、ちょくちょくと彼女を見ていたが、その事をアスベルトに気づかれてしまう。


「おい! よそ見をするな。試験は明日からなんだからな」

「はい。申し訳ありません……」


 アスベルトに問題を教えてもらっている最中、マリナが再び悩んでいる姿は無かった。


(良かった。まだ、チャンスはある! あの感じだと、カイルに問題を見てもらうことは不可能そうだから、今度は質問じゃ無くてカイルが今勉強している所について教えてもらおう)


 しかし、あの悩んだ姿を見た以降マリナが再び悩む姿を見ることが出来ずに、勉強会は終わった。


(あれ? イベントは?)


         △


 ロゼッタは、モヤモヤした気持ちのまま邸宅の自室に居た。


(あの後、マリナが動かなかったって事は、最初のあの行動がイベントだったのかな?)


「あー、もう! ――でも、次のイベントが一番大切な所だから、今度こそちゃんと成功させないと! 私の今後の人生がかかってるんだから!」


 そう、次のイベントはロゼッタに取ってはとても大切な物だった。

 それは、マリナの選択でアスベルトルートに行くか、カイルルートに行くかの大きな分かれ道なのだ。


 また、今現在どちらの好感度か高いかも把握出来る。


 アスベルトの好感度の方が高ければ、マリナがアスベルトと密会していると言う噂が学校で流れ始め、カイルの好感度の方が高い場合は、マリナとカイルが一緒に市街地で買い物をしていたと言う噂が流れる。


 そして、どちらのイベントにもロゼッタは必ず登場する。


 アスベルトの時は、噂を聞いたロゼッタは自分の婚約者に手を出したマリナに激怒し、彼女を呼び出しほとんど人が現れない教室に彼女を閉じ込める。


 カイルの場合は、平民が嫌いなロゼッタは「あなた平民のくせに、ぶをわきまえると言うことを知らないのかしら? 恥という物を知りなさい!」と言いアスベルトのイベントと同じ教室にマリナを閉じ込める。


 そうして、マリナが閉じ込められた部屋に2人同時にやって来る。


 マリナが無事だと分かると、彼女と一緒に教室から出ようとするが、マリナは安堵から腰が抜けその場から立てなくなっていた。

 そこで、どちらに頼るかと言う選択肢が現れる。


 その選択肢こそが、どちらのルートに入るかの分かれ道。


 本来ならば、どちらのイベントもロゼッタは取り巻き達と一緒にするはずだが、前世の記憶を思い出したロゼッタは取り巻きを作ろうとしなかったため、一人で頑張るしか無かった。


 そのため、どうやってマリナを閉じ込めるか。また、どうやってアスベルトにだけマリナが閉じ込められている事を知らせるかの作戦を立てる。


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