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07. 勉強会2

 翌日の放課後。


 生徒達が帰る準備をしている教室の中、カイルはロゼッタの席までやって来る。

カイルの存在に気がつくと、ロゼッタは帰る準備をしていた手を止め彼を見る。


「?」

「ロゼッタ嬢、ごめん。教員に呼ばれてた事すっかり忘れてて……今から行ってくるから、アスベルトと一緒に図書館へ先に行っててくれない? マリナ嬢も何か、用事が有って少し遅れるみたいだから」


「じゃ」と言うとカイルは、直ぐさま教室から出て行く。


「え? ちょっ!」


 カイルの後ろ姿を見ながらロゼッタは誰にも聞こえない声で呟く。


(いきなり、アスベルトと一緒に図書館へ行けって言われても……それに、きっと私と一緒に図書館に向かうの嫌だと思うんだけど。――もしかして「先に行け」って言われるかも)


 そんな事を思いながら、ロゼッタは鞄を持ち廊下側にあるアスベルトの席に向かう。


「アスベルト様。カイル様からその……」

「カイルから事情は聞いている。先に図書館へ行くか」

「え? あっ、はい」


 考えていた答えと、返ってきた答えが違っていたため、ロゼッタは少し戸惑う。


 そんなロゼッタを気にすること無く、アスベルトは教室から出て行く。

 ロゼッタはその後を追って教室から出ると、アスベルトは少し前を歩いていたため“横に並ばれるのはさすがに嫌だよね?”と思った彼女は、少し離れた場所から彼の後ろを歩いく。


 すると、アスベルトは急にその場に止まりロゼッタが居る後ろを向く。


「おい! 何もたもた歩いている。さっさと行くぞ」

「あっ。はい!」


 走ってアスベルトに近づき横を歩く。

 少し歩いていると、ロゼッタは何かに(つまず)いてしまい前に転けそうになる。


「えっ!?」


 次の痛みを彼女は想像していたが、その痛みは無く反対にお腹に何か有るのを感じる。


「おい。大丈夫か!?」

「っ!」


 耳近くで声がし、声の方を向くとアスベルトの顔が近くにありロゼッタはドキッと心臓がはねる。


 今の体勢は、アスベルトが片腕手でロゼッタのお腹に腕を回して、転ばないように支えいる状態。


 ロゼッタは恥ずかしさのあまり耳まで赤くする。


 アスベルトは直ぐに彼女を立たせると、ロゼッタは赤面している顔を見られたくなく、直ぐに頭をさげお礼を言う。


「あっ! 有難う。ございます!」


 そしてそのまま地面を見ながら、再びアルベルトの横を歩きながら図書館に向かう。


        △


 図書館の中に入ると今日もたくさんの生徒達がいたため、ロゼッタは直ぐにアスベルトと一緒に受付に向かい、昨日と同じ中年男性に4人で座れるテーブルが無いかを聞くと、男性は直ぐに調べ始める。


「お待たせいたしました。――申し訳ありません。ただいま4人ご一緒で座れる席が無い状態です。2人ずつならご案内可能なのですが……」

「2人ずつですか……」


 男性の言葉を聞いてロゼッタは有る事を思いつく。


(2人ずつって事は、私とカイル、アスベルトとマリナで分かれて勉強すれば良くない? そしたら、イベントがいつ起きるか分からないけど、今日は安心して勉強に集中出来るし) 


「あの、アスベルト様。私はカイル様と一緒に座るので、アスベルト様はロビンソンさんと一緒に――」

「いや、他の場所を探す」

「え?」

「行くぞ」


 そう言うとアスベルトは直ぐに図書館の出入口に向かい、その後をロゼッタが急いで追う。


 沈黙が続く中、図書館の出入口付近で2人が来るのを待っているとマリナ、そして少し遅れてカイルがやって来る。

 2人が到着するや否や「空いている席が無かった」とアスベルトが伝えると、カイルは少し考えた後「じゃ、教室はどう?」と提案をする。


「いや、教室は難しいな」

「そっかー。じゃ……生徒会室とか? この前「部外者だから」ってロゼッタ嬢に断られたけど……」


 カイルはロゼッタの顔をチラッと見る。


 もともとロゼッタは、アスベルトとマリナがそこを使うと思っていたから、断っただけだったので正直今は何処でも良かった。


「別に、私はそこでも構いませんわ」

「私は何処でも大丈夫ですよ」

「俺もそこで構わない」


 カイルの提案にそれぞれ賛成をする。


 生徒会室に入ると、真ん中に8人が向かい合って座れるテーブル席と、大きな窓がたくさん有り室内に夕日の光が差し込んでいた。


(誰も、居ない……)


「テスト1週間前と期間中は、誰も使わないから好きな席座って良いよ」


 とカイルがロゼッタ、マリナに向かって説明をする。


(いや、好きな席って言われても……カイルの後に座ろうかな?そしたらカイルの横をキープして作戦実行しやすいし)


 ロゼッタにはカイルの横に座らなければならない理由があった。


 ――昨夜、学校から帰って来たロゼッタは邸宅に着くなり、直ぐに自室に籠もると、今度はいかにしてカイルの選択を無くすかを考え始めた。


(カイルが、口を滑らせなけらばこんな事考えなくて良かったのに……)


 ロゼッタは「はぁー」と深いため息を着く。


「カイルの選択肢が無ければ良いのよね? ――そうだ!」


(マリナが問題に悩んでいる姿を見たら、私がマリナより早くカイルに質問するって言うのは? そしてら、カイルの選択肢は無くなるはず。 そうなったらアスベルトに聞くよね? 多分)


「よし! これでいこう!」


    △


 ロゼッタはカイルが座るのを待っていたが、中々座る気配が無かった。

 するとアスベルトがロゼッタに向かって言う。


「おい。 座らないのか?」

「え? あっ、はい」


 アスベルトに言われロゼッタは渋々席に座ると、その目の前にアスベルト、そしてアスベルトの横にマリナが座り、マリナの前にはカイルが座る。


(良かった。カイルが横に座ってくれて……それに、マリナが斜め前に居るから悩んでるの直ぐに分かりそうだし)


 しかし、その日マリナが悩む姿を見ることは出来なかった。


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