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43. 手紙

 学園祭が終わって数日後の朝。


 いつものように、教室の自席に座っていると休んでいたマリナが姿を現した。

 その姿をロゼッタは目で追う。


(マリナ登校できるようになったんだ)


 そして翌日の下校、自宅に帰るために馬車の待機場まで来ると、少し離れた場所から誰かの「――待って!」と言う声が耳に届き、声が聞こえたに目線を向けるとカイルが全速力で走ってこちらに向かってくる。


「っ!?」


 自分以外、他に居ないため彼が来るのをその場所で待つ。

 ほどなくして息も切らしていない彼がやって来る。


「良かった。間に合った――。はい、これ!」

「あの、これは?」


 目の前に察しだされた封筒を見ながら言う。


「さっき、時間が有るときに渡して欲しいって頼まれた手紙」

「手紙?」

「そう。早く渡した方が良いと思って」


(誰から?)


 そう思いながら、ロゼッタはその手紙をとりあえず受け取ることにした。


 帰宅するとすぐさま自室に向かい、ソファーに腰掛けカイルから渡された封筒を開封して読み始める。


『ファームス様へ


 マリナ・ロビンソンです。


 お声を掛けることもはばかられる身ですが、どうしてもお礼をお伝えしたくてお手紙を書いております。


 まずは、舞台お疲れさまでございました。

 ファームス様が代役を引き受けてくださったと伺いました。

 短い稽古期間しかない中、代役を引き受けてくださってありがとうございます。


 どうしても最後まで参加することができず、降板することとなりファームス様には大変ご迷惑をお掛けしてしまいました。

 この場をお借りして、お詫び申し上げます。


 ただ、短い稽古期間でしたが予想以上の舞台だったとお伺いしました。

 学園祭の時、お休みをいただいていて実際に拝見はできませんでしたが、その舞台観てみたかったです。』


 それからマリナの手紙は少し続き、そのまま読み進め最後まで目を通す。


(マリナ……)


 そのもらった手紙を机の引き出しに大切にしまい、静かに引き出しを閉める。


 それから翌日。


 一日の授業が終わり、帰ろうと廊下を歩いていると隣組の教室前であまり顔の知らない令嬢達が固まっておしゃべりをしていた。

 特に気にせず通り過ぎようとすると、そのうちの一人に声を掛けられる。


「ファームス様! 帰り際に申し訳ありません。少しお時間宜しいでしょうか?」

「? ……ええ、大丈夫です」


 令嬢達の後を着いていくと、食堂へと辿り着いていた。


「場所を移動していただき、有難うございます。廊下だと他の方達のご迷惑になると思いまして……」

「ファームス様。立ち話も何ですし、あちらのお席に腰を下ろされませんか?」


 そう言われ、令嬢達の様子をうかがいながら丸いテーブルの席に座る。

 全員は座れないため、座れなかった令嬢達はテーブルを囲むようにして立つ。


 はたから見れば、何事かと目を引くような光景だったが、あいにく食堂には第三者の姿はなくその様子を目撃する物は誰一人もいなかった。


「ファームス様。舞台お疲れ様でございました」


 椅子に座っている令嬢の一人が最初に話し出す。


「正直、驚きましたわ。まさか、あんなに仕上がっていたなんて」

「そうですわよね。私もレミュカ様以外“短期間でセリフ等を覚えられる方はいらっしゃるの”と、思っておりました」

「代役のこと、知らない人が聞いたらきっと驚かれますわ」

「この場には居りませんが、レミュカ様も想定外だったと仰っておりました」

「そうそうレミュカ様と言えば~」


 それから令嬢達は、ここには居ないレミュカの話で盛り上がる。

 しかし、レミュカの事をあまり知らないロゼッタにとっては、どう反応すれば良いのか分からなかった。


 △


「あら、もうこんな時間」

「あっという間でしたわね。そうですわ! あの、よろしければ明日中庭でランチ致しません?」

「明日、暖かいそうですしね。きっとランチ日和ですわ」


 令嬢の一人がそう言い終えた直後、視線が一斉にロゼッタへと注がれる。

 その視線を浴び、了承するしかなかった。


「かまいませんわ」

「では、明日のランチタイムは中庭と言うことで」

「明日のランチは持参ですわね! 楽しみ」

「それでは、帰りましょうか!」


 令嬢の言葉を聞いて、ロゼッタは慌てて口を開く。


「ごめんなさい。私は後で帰りますので、皆さんは先にお帰りになられてください」


 ロゼッタが、そう言うと令嬢達はロゼッタに「ごきげんよう」と伝えて帰っていく。

 皆を帰らせた後、数分その場で腰を下ろしていた。


「――もう、さっきの令嬢達は帰ったかな?」


 彼女達と顔を合わせるのは避けたかったため、ロゼッタはゆっくり歩きながら外に出ると、すっかり日が落ちていた。


 馬車の待機場に着くと時刻が遅いこともあり、残っていたのは3台の馬車のみ。

 しかし、その中には自分を迎えに来ているはずの馬車の姿は無かった。


「あれ?」


(なんで居ないの? このままじゃ家に帰れない)


「とりあえず、職員室で通信機を貸してもらって迎えに来てもらわないと」


 職員室に向かうため、来た道を引き返している途中で、ふと足を止める。


「いや、待って。授業が終わってだいぶ時間が経ってるから、もしかしたら職員室に誰も居ないって言う可能性もあるよね?」


(でも、このまま待機場に居ても迎えは来ないし、行ってみないと何も変わらないよね)


 そう決意をして職員室へ向かおうとした時、前方から誰かがこちらに向かってくるのが見えた。

 その人物との距離がどんどん近づくにつれ、次第に誰なのか見当がついてくると、向こうから声をかけられる。


「あれ? ロゼッタ譲? どうしたの。帰ったはずじゃ?」

「カイル様――」


 カイルに事情を説明すると、屋敷まで送り届けてもらうことになった。



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