表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/42

42. 学園祭2

 無事、演劇が終わって制服に着替え終えたロゼッタは、楽屋の椅子に座りながら先ほどの舞台の事を思い返していた。


(私さっき、自分の気持ちを乗せて告白したんだよね……)


「あれ? 今思ったけど、アスベルトって何気に勘が良かったよね? まさか、あの時想いを乗せてたこと、悟られてないよね……?」


 急に強い不安に襲われている最中、コンコンっと軽快に扉が叩かれる。

 一瞬ドキッとして、恐る恐る返事をすると勢いよく扉が開き、陽気な笑みのカイルが現れる。


「ロゼッタ譲。お疲れ様!」

「カイル様!?」


 現れた人物に驚き、先ほどの不安はどこかへ吹き飛ぶ。


「いやー。凄く良かったよ! 最後の告白シーンなんて2人とも迫真の演技だったから、これが物語だって事を完全に忘れて見入ってたよ。それにしても、5日間であの出来は本当にすごいと思う!」


 カイルは、喋りながらロゼッタに近づく。


「ありがとう、ございます」

「やっぱり、泊り込みで稽古してた甲斐があったね!」

「っ……!」


 ごく一部の物しか知らないはずの泊り込みの件を、カイルが知っていたことに驚き、思わず息をのんだ。

 そんな彼女の様子を見て、カイルは何かを察して口を開く。


「あっ。知ってたのは、アスベルトから直接聞いてたから! ところでさ、この後予定とか有る? 無かったら、オレ達と一緒に露店回らない?」


 カイルが言葉を言い終えた瞬間、再び楽屋の扉が今度は少し強めにノックされ、ロゼッタが返事を返す前にカイルが扉を開けに向かう。


「アスベルト、いらっしゃーい」


 “アスベルト”という単語を聞いた途端、ロゼッタの心臓の鼓動が早くなり、顔色もどんどん悪くなっていく。

 アスベルトは中に入った途端、顔色の優れない彼女の様子に気付き、すぐさま近づいて言葉をかける。


「大丈夫か?」

「ひゃっ!」


 驚きのあまり、変な声を出してしまったロゼッタはすぐに両手で口を抑える。


「なに? ロゼッタ譲、今の? かわい――」


 いつの間にかアスベルトの横に来ていたカイルは、喋っている途中で口を閉ざし直ぐに元の話題に戻す。


「それで、さっきの誘いだけどう? やっぱり予定とか入ってた?」

「いえ、予定は特に――」

「そっか。あと、伝えなきゃいけないことがあって……。マリナ譲は、歩けるくらいまでは治ったらしいけど、まだ無理はできないから今日は休んでるんだよね。だから――」


 カイルは、ロゼッタの様子に気づき言葉を止める。


(マリナ、やっぱり学園祭には来られなかったんだ。でも、怪我の具合が良くなってきてるみたいで、よかった)


 無意識に安堵の表情を浮かべ、心からほっとする。


 少し間を置いて、カイルが再び口を開く。


「それで、ロゼッタ譲。さっきの話だけど――マリナ譲が休みだからオレとアスベルト、そしてロゼッタ譲の3人で回ることになるけど。問題なさそう?」

「ロゼッタ。無理なら無理でかまわない。断ってくれても」

「そうそう。学園祭はまた来年もあるわけだし、また来年誘うよ。だから気軽に考えて」

「来年……」


 ぽつりと誰にも聞こえない音量で呟く。


(来年、私はもうここにはいないんだよね……)


 ロゼッタはチラッとアスベルの顔を見る。


(アスベルトに、私の気持ちが気づかれてないかって言う不安はあるけれど――)


「……ありがとうございます。せっかくなので、ご一緒させていただきます」

「本当に!?」

「はい」

「じゃ、時間もないからいこっか」


 カイルは、パンッと両手を叩き嬉しそうにそう言う。


 3人で露店をあちこち回り、一旦休憩するために空いているテーブル席に座っていると、カイルが唐突に席を立ちあがる。


「ごめん。ちょっとお手洗いに行ってくる!」


 そう言うと、カイルは足早にその場から立ち去った。

 2人きりになり、少しの間の後アスベルトが口を開く。


「ロゼッタ。舞台お疲れ様」

「有難うございます。アスベルト様もお疲れ様です」

「劇団の方たちも褒めていた。代役を引き受けてくれてありがとう。やはり、ロゼッタを選んで良かった。――俺は、いつも君に甘えているな」


 アスベルトは穏やかな笑みを浮かべ、優しい眼差しでロゼッタを見る。

 その仕草に、彼女の心臓が跳ね上がり、その動揺を悟られまいと慌てて話し出す。


「そう言えば、ロビンソンさんのお怪我良くなって良かったですね!」

「ん? あー。そうだな。――そう言えば、ロゼッタの怪我はもう治ったのか?」

「?」

「悪い。なかなかタイミングがつかめず……バンルテ村で怪我をしただろ?」


 今になって怪我のことを聞かれ、忘れていた出来事を思い出す。


「あっ。はい! もうすっかり治りました! あの時は、色々とありがとうございました」

「いや。それは俺の方が感謝している。……ほんとうに」


 その後の会話でも、アスベルトから劇のセリフについて何も触れられる事は無かった。

 しばらくして、カイルが戻ってくる。


「お待たせ! もう行く?」

「そうだな。ロゼッタまだ、見たいところは有るか?」

「いえ、特には……」

「じゃ、ぶらぶらして回ろっか」


 カイルがそう言うと、2人は立ち上がりアスベルトは彼の横に並んで歩く。

 そんなアスベルトの背中を見ながらロゼッタは、何も態度に出さない彼に少しショックを受ける。


 それから、学園祭終了まで一緒に露店を回った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ