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37. ラッ・ルリーベ

 ――茶会当日


 ロゼッタはキッチンルームにいた。


 マリナの事はまだ心の整理がつていないながらも昨日、彼女と一緒に作って冷蔵庫で保存していたラッ・ルリーベを選びながら水玉が描かれた透明袋に1個1個包んでから、小さな蓋つきの籠にそれを3つ入れて馬車に向かう。


 出発した馬車の中でロゼッタはソワソワしていた。


(今更だけど、本当に私の手作りお菓子で良かったのかな? カイルは喜ぶって言ってたけど、マリナじゃなくて私からだよ? やっぱり、今回作ったお菓子は渡さずに次回別のお菓子を渡す? でも、それだと感謝の気持ちと一緒に渡せなくなる)


 渡すか渡さないかを悩みながら、馬車に揺れること数分で城に着く。


 外は雨が降っているため、いつもの中庭では無く城内の部屋に案内され、侍女が扉をノックすると直ぐに扉を開けて室内に通される。


 中に入ると常にアスベルトがソファーに座った状態で待っていた。


 直ぐに駆け寄りアスベルトの顔を見ながら謝る。


「お待たせして申し訳ございません」

「いや、俺も先ほど来たばかりだから気にするな。それより、雨の中足を運んでくれてありがとう。座ってくれ」


 言われるがままテーブルを挟んで置かれている二人掛け用のソファーにアスベルトと向かい合うように座ると、ロゼッタは自分の横に置いたラッ・ルリーベの入った籠をチラッと見る。


(ここまで持ってきたのは良いけど、どうしよう!)


 未だにロゼッタは、アスベルトにラッ・ルリーベを渡すのか迷っていた。


「ロゼッタ。どうかしたのか?」

「え?」

「いや、すごく難しそうな顔をしていたから」


(私、顔に出していたの? ――……もういいや。せっかく昨日、頑張って作った物だし。それに、今後もう二度と渡すことはできないと思うから)


 彼女は、深呼吸をしてからテーブルの上に籠を置き「お口に合うかわかりませんが」と言いながら、籠をス―っとアスベルトの前に差し出す。


「これは?」

「この前のバンルテ村の事と、今までいろいろとお世話になっていたのでその感謝の気持ちです!!」

「!? 開けても?」

「はい」

「カップケーキ? ――ありがたく頂戴する」

「いえ。 あの、お早めにお召し上がりください。それと、要冷蔵でお願いします」


 その言葉を聞いたアスベルトは、彼女に少し待つように伝えるとラッ・ルリーベの入った籠を持って部屋から出ていく。


 彼が部屋から出たのを確認するとロゼッタは大きなため息を吐く。


「はぁー。アスベルトあれを見てなんて思ったかな?」


 それから、少し経つとアスベルトが部屋に戻ってくる。


「待たせてすまない」

「いえ」


 アスベルトが席に着いた直後に、部屋の扉がコンコン!っとノックされ侍女が長細い3段有るキッチンワゴンを押しながら入ってくる。


 そして、ワゴンに乗っている空のティーカップに紅茶を注ぎ入れてそれぞれの目の前に置く。

 それから、普段デザートを食べないアスベルトの前にデザートが乗ったお皿が置かれ、それを見たロゼッタは目を丸くして驚く。


 金色淵のお皿の上には、自分が持参したラッ・ルリーベが乗せられていたのだ。


「あの、それ……」

「あー。折角だから今回のデザートにと思ったんだが、ダメだったか?」

「いえ、そんなことは――」


(まさか、今日のデザートとして出されるなんて想像してなかった)


 チラッと自分の前に置かれたラッ・ルリーベを見る。


 侍女が部屋から退室するとアスベルトが口を開く。


「早速頂くとしよう」

「はい」


 そういうとアスベルトは、フォークを手に取りラッ・ルリーベを食べ始める。

 一口食べて直ぐに感想を言ってくれると思っていたが無かったためロゼッタは、自分から感想を聞くことにした。


「――あの、お味はいかがでしょうか?」

「ん? とても美味しいけど?」

「本当ですか!? 良かったー」

「ふっ。それにしても、これは君が選んでくれたのか?」

「え? 選ぶ?」


(うーん。何を渡そうかは私が選んだけれど、何を作るのかはマリナが選んでくれたから――。これって、多分作るって意味だよね)


「選んだのは私じゃないです」

「そうか――」


 彼女の言葉を聞いたアスベルトは少し寂しそうな表情を浮かべる。


「でも、君から貰えたのはうれしい。ありがとう」

「いえ。喜んでもらえて良かったです。昨日、頑張って作った甲斐がありました」

「えっ?」

「え?」

「――このカップケーキは、ロゼッタが昨日作った物だったのか?」

「はい。昨日、教わりながら作りましたけど?」

「!!」

「あの、アスベルト様? どうかなさいましたか?」

「いや。俺はてっきり君が侍女に頼んで買ってきてもらったのだとばかり……」


(まさかアスベルト、私の手作りだって気づいて無かったの? あっ。だからさっき選んだのか聞いてきたのか)


「いえ。お気になさらないでください。私も何も言わずに渡したので」

「いや、俺が勝手に手作りは貰えないと思っていたから。――ロゼッタ。俺のために作ってくれてありがとう。とても嬉しい!」


 口角を上げて喜ぶアスベルトを見て、ロゼッタの心臓はドキッ!とする。


          △


 それから、本日の茶会を終えたロゼッタはアスベルトと一緒に馬車が待機している場所まで来ていた。


「今日は、本当にありがとう。それと、気が向いたらで構わないからまた作ってくれないか?」

「え?」

「とれも美味しかったから。また食べたいと思って――」


 アスベルトの言葉を聞いて嬉しい反面、悲しい気持ちになり胸が苦しくなる。

 その後ロゼッタは、返事もできずにただ悲しい表情を浮かべながら馬車に乗り込み帰った。



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