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33.  気持ち

 アスベルトが帰ってから数日が経ち、ロゼッタの足もだいぶ良くなってきて普通に歩けるようになった。

 学校もあと数日で始まるため城下に戻り事にしたロゼッタは、マリナに伝えるため彼女の部屋に向かう。


 ノックをするとマリナが扉を開ける。


「ファームス様。どうかなさいましたか?」

「あの、城下に戻ろうと思っております」

「そうですか」

「それで、馬車の手配をしようと思っているのですが、ロビンソンさんは馬車の手配とかはどうなさいますか?」

「アスベルト様に帰る時は、連絡して欲しいと言われているのですが……」


 マリナは少し言い辛そうにし、目線を横に向ける。


「その、ご連絡しづらくて――。どうやって帰るかは考え中です」

「そうですか」


(確かに、連絡して欲しいって言われても直接彼に繋がる分けじゃ無いから、やっぱり通信しづらいよね)


 ロゼッタは、マリナのために他の方法が無いかを考え始める。


「――あの、もし宜しければ私が手配する馬車で一緒に帰りませんか?」

「え?」

「ほら! ロビンソンさんにはいろいろとお世話になりましたから! でも、無理強いはしませんよ」

「いえ。お言葉に甘えて宜しいのでしょうか?」

「もちろんです」

「有難うございます。宜しくお願い致します」


 そして、ロゼッタは馬車の手配をするために通信室に向かう。

 通信に出た騎士に御者を呼んでもらい迎えの日程を決め、帰る日程をマリナに伝えるため通信室を出る。


 ――翌日のお昼、ちょうど昼食を食べ終えて休憩していた頃に迎えの馬車がやって来る。


 マリナと一緒に玄関を出ると、出入口で待機いていた御者が声をかける。


「お嬢様。お荷物お持ち致します」

「有難う。それと、彼女も一緒に城下まで帰るから途中で降ろしてあげて」

「承知致しました。お荷物をお持ち致しましょうか?」

「いえ。私は、大丈夫です」

「そうですか」


 帰りも行きと同じで休憩を挟みながら走っていたため、2時間半以上かけてようやく城下に着く。


 馬車はそのまま、マリナが生活している寮まで向かう。

 寮に到着するとロゼッタはマリナに話しかける。


「ロビンソンさん。長い間お世話になりました」

「いえ。ファームス様のお役に立てて嬉しかったです」

「……あの、どうして?」

「ファームス様には恩義があるので」

「恩義?」


 疑問に思ったロゼッタはその言葉を口に出していた。


「ファームス様のおかげで学園生活が楽しくなったんです!」

「私のおかげ?」

「はい。光属性だと分かって“次の年からはライトミネス学園に入学するように”と通っていた学校から言われ、とても不安だったんです」

「……」

「ライトミネス学園は、貴族の方達が沢山通っている学園だと知っていたので――」

「……」

「入学式の時、慣れない空気で疲れてしまって中庭で休憩をしていたら、ご令嬢の方達に声をかけられて――。“誰か助けてっ”っと心中で思っていたのですが、誰も助けてくださらず……。諦めていたときに、ファームス様が助けてくださったんです!」


 ロゼッタは、その時のことを思い出し心が痛くなる。

 しかし、マリナはそんなロゼッタの心を知るはずもなく話し続ける。


「それから、お声を掛けたかったのですが、なかなか勇気が出なくて――。でも、閉じ込められ事件があって、ファームス様とお話しすることが出来て正直、嬉しかったんです」

「っ……」

「それからお話しする機会が増えて、学園生活が楽しくなったんです。自分勝手ですよね。ファームス様にとってはきっと嫌な記憶のはずなのに」


 マリナは少し涙目になりながら下を向く。

 そんな彼女を見ていられずロゼッタは直ぐに否定の言葉を言う。


「そんな事無いです!」

「え?」

「――私も、その……あの事件が無ければあなたのクッキーが食べれなかったので」


 ロゼッタの言葉を聞いたマリナは、一瞬ポカーンとした顔をしたが直ぐに笑顔になる。


「そう言っていただけると嬉しいです。やっぱりファームス様はお優しいですね。私、もう降りますね」

「えー」

「では、次は学園で」


 言い終わるとマリナは馬車から降りていく。

 彼女が降りて少し経つと馬車はロゼッタを乗せファームス家に帰る。


 屋敷に着くと母親が急いで玄関まで出迎えてくれた。


「おかえりなさい! 心配していたのよ。別荘に着いたきり連絡が無かったら」

「申し訳ございません」

「でも、無事で良かった。あなたに聞きたいことが有るのだけれど後日にするわ。今日はゆっくり休みなさい」

「有難うございます。あの、お父様は?」

「あの人は、今日明日家にいないわ。用事で郊外に行ってるから」

「そうですか――」


 △


 翌日、ロゼッタは部屋でゴロゴロしていると侍女が現れる。


「お嬢様、奥様がお呼びです」

「分かった。直ぐに用意するわ」


 身支度を整えて、侍女に案内されながら母の待つ部屋に向かう。

 中に入ると空いているソファーに座るように言われ、ロゼッタはそこに座る。


「お待たせ致しました」

「昨日、あなたに言ったこと覚えてる?」

「はい。私に聞きたいことが有るとか」

「あなたに聞きたいことはいくつか有るのだけど、バンルテ村はどうでしたか?」

「……とても、のどかな村で空気がおいしく、また行ってみたいと思いました」

「そう」


 その言葉を聞いた母親の顔は少し緩ませ、再び質問をする。


「ところで、お手伝いさんを手配してくださった方は知っているの?」

「はい」

「そう。王太子殿下と王妃様には感謝しないとね」

「王妃様に?」


 ロゼッタは首をかしげながら聞く。


「えー。王太子殿下に人を探すように命じてくれたのは王妃様だから」

「そう、だったんですね」

「ところで、殿下が探してくださった方は知っている人だったの?」

「え?」

「だってあなた、知らない人と2人で数週間も一緒に暮らすのは無理でしょ?」


 そう言われ、ふとマリナのことを思い出す。


(確かに、あの時はマリンリーズの事で頭がいっぱいでそこまで考えて無かった。けど、お母様に言われて、来てくれた人が知らない人だったらきっと、数週間も一緒にはいられなかったかもしれない)


「はい。顔見知りの方でした」

「そう。なら良かったわ」

「っあ。お母様、それとお願いが有りまして――」


 その後、ロゼッタは自室に戻り花瓶に生けているマリンリーズを見つめる。


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