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31. マリンリーズ

 ロゼッタはやっとの思いで、2つ岩まで来ることが出来た。


(やっと登れた-。疲れた……)


「お疲れ様です!」


 先に到着して2つ岩の真ん中で立ったまま待っていた、エリオスがロゼッタ達を労う。


「待たせてすまなかった」

「いえ、大丈夫です。では、手分けして探しましょうか」


 マリナから、マリンリーズの特徴を教えてもらった護衛兵達は、それぞれ探しに向かった。

 護衛兵達の姿が見えなくなると、エリオスはロゼッタとアスベルトを見る。


「あの、殿下とファームス様は先ほど到着されたばかりでお疲れでは有りませんか?」

「そうだよね。2人は少し休憩してから探す?」

「……」


 エリオスの言葉を聞いたカイルが提案する。


「私も、今回は人手も多いのでファームス様達が少し休憩をなさっていても問題無いと思います」

「カイル達はああ言っているがどうする?」


 アスベルトがロゼッタに問う。


(確かにマリナが言ったように今回は人手が多いいけど、それでもし見つからなかったらきっと後で後悔すると思う)


 ロゼッタは、自分の性格の事を考えて決める。


「いえ。私は大丈夫です」

「そっか。アスベルトはどうする?」

「俺も別に大丈夫だ」

「じゃー。オレたちも探しに行こっか」


 それから数時間がたっても、誰も見つけられずにいた。


(どうしよう。もしかして、今回もダメなのかな?)


 不安になっていると、ふと近くで探していたアスベルトに目が留まる。

 その横には、しゃがんでいるマリナも一緒にいた。


 ここからでは、アスベルトの横顔しか確認出来ないが、とても嬉しそうな顔でマリナと会話をしていた。。

 それを見たロゼッタは無意識に目を地面にそらす。


 すると、ガサガサッと落ち葉を踏む音がロゼッタの耳に届く。

 その音はどんどん大きくなっていき、気がつくと誰かの足元が視界に入る。


「ロゼッタ、ちょっと来てくれないか?」


 声をかけられその人物を見ると、少し嬉しそうな顔のアスベルトがいた。

 訳も分からず彼の後を着いていくと、そこには笑顔のマリナが立って待っていた。

 どうやら、先ほどまで彼らが居た場所らしい事が分かった。


「ファームス様!」

「何か、ご用ですか?」

「あそこらへんの地面を見て頂けませんか?」

「??」


 マリナが指さす方の地面を見ると、白い花が一輪だけ咲いていた。


「!!?」

「あれがマリンリーズです」


 マリナに白い花がマリンリーズだと聞き、急いで近くによりしゃがむ。

 マリンリーズは、蕾を中心に何枚も隙間なく波形の白い花びらだった。


 ロゼッタは再び立ち上がり、直ぐに後ろに来ていたマリナの顔を見てお礼を言う。


「見つけて頂いて、有難うございます!」

「いえ。見つけたのは私では無く、アスベルト様なんです」


(アスベルトが――)


「アスベルト様、本当にありがとうございます!」

「いや。俺は何も……」


 3人で話していると、少し離れた場所にいたカイルが現れる。


「何々? みんなして嬉しそうにして?」

「実は、マリンリーズが見つかったんです!」

「本当に!? どれどれ?」

「こちらの白い花びらの花がそうです」


 ロゼッタは、手をマリンリーズに向け場所を伝える。


「へぇー。これがマリンリーズ。見つかって良かったね」

「はい!」

「てか、よく見つけたね」

「アスベルト様が見つけてくださったんです」 

「そっか――。ねーね」


 カイルはロゼッタの耳元に顔を近づけ、アスベルトに自分の口元が見えないように手で口を隠しひそひそ話をする。


「アスベルトに何かお礼とかするの?」

「え? はい。そのつもりですけど……」

「何か考えてる?」

「いえ、まだ――」

「そっか。もし困ったらいつでも相談して」

「はい。有難うございます。


 カイルが離れると視線を感じ、彼女がそちらを見るとアスベルトが少し不機嫌そうな顔をしていた。


「っ目的の花も見つかったし帰るか」

「そうですね。私、エリオスさん達に伝えて来ますね」

「すまない」


 帰ると言われ、ロゼッタは急いでしゃがみ花茎からマリンリーズを摘む。


(お願いするのは、別荘に帰ってからでも良いよね)


 △


 下山して少し経った頃、ロゼッタは石に右足を滑らせ転んでしまう。


「いっ!」

「ファムス様、大丈夫ですか!?」


 後ろにいたマリナが駆けつけて声をかける。


「はい。なんとか」


 立ち上がろうとすると、両手と両膝そして、右足首に痛みを感じる。


「いたっ」

「無理はしないでください……。足を少し見せてもらえませんか?」

「あっ。はい」


 ロゼッタの両膝は擦りむいていて、右足首は少し腫れ内出血をしていた。


「誰か呼んできますので、少々お待ちください」


 マリナは、そう言うと山道を降りていった。

 言われたとおりその場で待っていると、マリナと一緒にアスベルトがやってくる。


「大丈夫か? 彼女から事情は聞いた。まだ、痛むか?」

「少し――」


 すると、アスベルトはロゼッタの方に背中を向けながらしゃがみおんぶの体勢をとる。


「え?」

「足、痛むんだろ?」

「でも――」

「良いから」

「……」


 躊躇しながらもロゼッタはアスベルトにおんぶしてもらう。

 そして、おんぶしてもらいながらマリナと一緒に下山する。

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