03. それは私の役目
中庭に再び着くとそこには、椅子から立ち上がっているマリナと彼女の前に複数の令嬢が立っていた。
その中で、他の令嬢より一番前に立っていた人物がマリナに向かって喋る。
「あなた、平民なんですってね。しかも田舎の。良くこの学園に入学出来たものね。どんな手を使ったのかしら?」
「……」
「もしかして、人様には言えないような事からしら?」
「……」
「あら? 何も喋らないのね。もしかして、田舎の平民は言葉も分からないのかしら?」
そこ言葉を聞いた令嬢達はクスクスっとマリナを馬鹿にしたように笑う。
「はぁ。私の役をとらないでよ」
その一部終始を見ていたロゼッタは誰にも聞こえない声で呟くと、マリナと令嬢達が居る方に向かっていく。
「あなた達、そこでいったい何をしておられるのですか?」
マリナを罵っていた令嬢が声の聞こえてきた方を振り向くと、そこには眉間にシワを寄せ令嬢達を睨んでいるロゼッタが居た。
そんなロゼッタを見るなり令嬢の顔色がどんどん青ざめて悪くなっていく。
「ッヒ! ファームス様、私どもは――これで失礼いたします」
言い捨てるように言うと、令嬢達はマリナとロゼッタを置いてその場から素早く去って行った。
そんな彼女たちの姿が見えなくなると、先ほどまで黙っていたマリナが口を開いた。
「あの! 先ほどは助けていただきありが――」
マリナが最後まで喋り終わる前に、ロゼッタは彼女の言葉に被せて入った。
「別に、あなたを助けたくて助けた訳ではありません。私のためにやった事です」
「でも、もしそうだったとしても、感謝しております。ありがとうございます」
マリナは深々と頭を下げてお礼を言う。
しかしロゼッタは、この流れからいかにマリナを虐めている風に、アスベルトに見せれるかを考えていた。
(アスベルトは今どこらへん? あの子達のせいで私の計画が台無し。もう良いわ、どうせ直ぐ近くまで来てるでしょ)
「これだから、田舎者は―」
「そこで何をしている?」
ロゼッタが何かを言おうとしていた矢先、アスベルトの声がロゼッタの耳に届く。
(え? アスベルトは一体いつから見てたの? でも、この場面だけを見ていれば勘違いをしてくれるはず)
マリナはロゼッタに頭を深々と下げており、ロゼッタは考え事をしている時に無意識で腕を胸の前で組んでいた。
端から見れば、マリナがロゼッタに必死に謝っている場面にも受け取られる。
アルベルトはロゼッタに近づくと直ぐに今の状況を説明するように求めた。
「ロゼッタ、何をしていた」
「アスベルト様……別に何も……」
「何も?」
ロゼッタの答えを聞いたアスベルトの眉間が歪む。
(ここまでのやり取りはゲーム通りね。後は退散するのみ!)
「まーまー。そんなに怒んないであげてよ。ロゼッタ嬢もきっと何か訳が有ったかもしれないし!」
アスベルトの後ろから鮮やかな赤髪に茶色い瞳の男性、カイル・ハワードが笑みを浮かべながらひょいっと現れた。
(あれ? カイルがこんな事を言う場面は無かったはず……。さすがに挨拶無しで退散はまずいか)
「カイル様。お久しぶりです」
「ロゼッタ嬢久しぶり。元気だった?」
「はい。おかげさまで」
カイルは基本的にチャライキャラだけど「いざ!」と言う時は頼りになる人物だし、好きになったら一途なのをロゼッタは知っているため、絶対にマリナをカイルルートには行かせないと心に決めていた。
「あれ? そこのかわい子ちゃんは?」
いつの間にか顔を上げていたマリナにカイルが気がつく。
「あっ! 初めましてマリナ・ロビンソンと言います」
男を虜にするような、かわいらしい笑顔で挨拶をする。
(この笑顔を見れば、アスベルトもイチコロのはずだわ)
チラッとロゼッタはアルベルト達の顔を見てみると、アスベルトは真顔でカイルはニコニコしていた。
想像していた表情とは違っていたが、本編ではそれぞれの表情が分からなかったため“貴重な体験をした”と彼女はそう思った。
そして、今が退散のタイミングだと思い軽く挨拶をする。
「それではアスベルト様、カイル様。失礼いたします」
そのまま渡り廊下に向かって歩いていると後ろから「おい! まだ話が――」とアスベルトの声がロゼッタの耳に届いたがそのまま離れていった。
去った後で、マリナが余計なことを言っていないか心配になったが、今戻るとアスベルト達にまた会ってしまうと思い戻ることを止め、今日の授業は無いため帰ることにした。