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18. 市街地視察

 市街地は、両サイドに建物が有りその前に食品や飲食物、衣類や小物雑貨等それぞれ系統が違う露店がずらりと一列に並んでおり、大人が7人ぐらい横に並んでも歩けるような大通りになっている。


 そして、今日は休日と言うことも有り、老若男女問わず多くの人で賑わっていた。


「凄い人ですね」

「あー。そうだな……」


(こんなに人がいっぱいだと、アスベルトとはぐれちゃいそう……。マリナと遭遇するまではぐれないようにしないと!)


 ロゼッタがそんなことを思っていると、左手を誰かに優しく握られる。


「え?」


 ロゼッタは直ぐに握られた自分の手を見る。

 すると自分の手より少し大きな手で握られていた。

 その手の人物を確認するため、相手の腕を下から上えと辿るとアスベルトの顔が目に入った。


「え? アスベルト様?」

「……この人だかりだ。もし君がはぐれた時、この中から探すのはまず不可能だ。だから、はぐれないようにしたくて手を握った――」

「――確かに、この中から探すのは難しそうですね……」


 ロゼッタは、アスベルトの提案に乗ることにした。


 そのまま手を握られながらロゼッタは、自分から近い方の露店に軽く顔を向け置かれている商品を見ながら歩いていると、前方から香ばしい甘い香りが鼻に届く。


(甘い、美味しそうな匂い……)


 すこし歩いていると、その匂いはどんどん濃くなっていく。

 すると、匂いを出している露店を見つける。


(ここかな?)


 ロゼッタは先ほどよりも顔を露店側に向けて見る。

 そこには、10㌢ぐらいの長さの丸形をした香ばしく焼き上げている生地の食べ物がずらりと並べれていた。

 それはまるで、ベビーカステラを長細くした感じの食べ物だった。


(美味しそう……。食べたいなー。でも、さすがに今は無理だから、アスベルトと分かれた後買って帰ろうかな)


 ロゼッタは今すぐ食べたいと思ったが、さすがに視察中しかも平民の格好をしているが王太子のアスベルトの横で、食べ歩きなんて絶対にできないと思い、帰り一人になった時に買って帰ることにした。


 しかし、ロゼッタの思考とは裏腹にお腹は正直で、お店の前でアスベルトにも聞こえるような大きな音でグー、ギュルーとお腹の虫がなる。


「……」


 ロゼッタは一気に顔が赤くなり目を閉じながら俯く。


(あー。何でお腹が鳴るのよ。恥ずかしい……)


「――食べるか?」


 アスベルトの言葉が耳に届きぱっとアスベルトの顔を見る。

 彼の表情はロゼッタのお腹の虫の音を聞いて笑ったり、呆れたりもしていなかった。

 それどころか、少し嬉しそうな表情をしていた。


「……」

「あれが食べたいんだろ?」


 ロゼッタはアスベルトに言われ、どう言うか迷ったが正直に答えることにした。


「――はい。食べたいです……」


 ロゼッタの返事を聞いたアスベルトは「ちょっと待ってろ」と言うと、手を放し彼女が食べたいと言ったお菓子が売ってある露店に向かった。


 アスベルトが戻ってくると手には、紙袋に包んだ菓子が2個握られていた。

 その1個を少し離れていた護衛に毒味として与える。

 与えられた護衛はそれを一口食べ、アルベルトに「美味しいです」と伝えると、そのまま最後まで食べきった。


 毒が入っていないことを確認すると、アスベルトは手に持っていたもう一つのお菓子をロゼッタに渡す。


「宜しいのですか?」

「かまわない。食べたかったんだろ?」

「はい」


 ロゼッタはコクンと頭を振ると、アスベルトに差し出されているお菓子を受け取り“ぱくっ”と食べ始める。


(美味しい、生地がふわふらしていて結構弾力もある。匂いも良いし、幸せ)


 ロゼッタの顔は、だんだんと緩んでいき幸せそうに食べていく。


「そんなに美味しいのか?」

「はい。もう、とっても美味しいです!」

「そうか……」


 それを聞いたアスベルトは少し口角を柔らかく上げる。


 ロゼッタが食べ終わると、アスベルトは再びロゼッタの手を握り大通りを歩いて行く。


 少し歩いていると、前方に黒髪で見たことのある雰囲気をしている人物が、苺やオレンジと言ったフルーツを扱っている露店の前で食品を真剣なまなざしで見ていた。

 ロゼッタはそれがマリナだと直ぐに分かった。


(思ってたよりマリナの登場が早い……)


 ロゼッタはじーっとマリナを見ていると、用が済んだのか大通りの方に向きを変えようとしていた時、視線が合う。

 マリナはロゼッタ達の存在に気が付くと、笑顔になりそのまま近づいてくる。


「アスベルト様とファームス様。ごきげんよう」


 声を掛けられた事によって、アスベルトもマリナの存在に気が付く。


「君も来ていたのか?」

「はい。アスベルト様達も来られていたのですね?」

「あー。俺たちは市街地の偵察で……君は?」

「私ですか? 私は、今度ミニケーキを作ろうと思っていまして、それに使うフルーツを見に来たんです」

「そうか――」


 マリナはアスベルトにニコリとしながら伝える。

 二人の会話を聞いていたロゼッタは、できるだけ二人の邪魔をしないように無になっていた。

 そんな時、マリナと目が合い微笑みかけられる。


(え?)


「それにしても、やっぱりお二人は仲が良いのですね」


 マリナの言葉を聞いたロゼッタは、今自分がアスベルトに手を握られている事を思い出し、直ぐに離れようと腕を少し上げて引っ張ろうとするが、アスベルトの力が強く上手く離れることが出来なかった。


(何で? 普通、好きな子が目の前に居たら、誤解されないように直ぐに手を離すでしょ? アスベルト、何考えてんの?)


 ロゼッタは、アスベルトの横顔を見ているとその視線に気づいたかのように、顔を向けられ目が合った。


「っ……」


 ロゼッタは、恥ずかしさのあまり直ぐに目をそらす。


(――でも、マリナが現れた以上、私はここで帰させられるんだよね……)


 そんな事を思っていると、横から落ち着いた声が聞こえてきた。


「おい! 行くぞ」

「え?」


 手を未だに握られていたため、アスベルトに引っ張られる様にして再び歩き出す。

 ロゼッタは、自分が思っていた展開と違う行動をするアスベルトに戸惑う。

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