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第7話 定期テスト

次の日、俺は学校に着くなり碧音に話しかけられた。


「啓介おっはよー!今日は元気?」


意気揚々と話しかけてくる碧音に対して俺は


「お前が話しかけるもんだから俺のテンションはガタ落ちだ。」


と返事をした。

なんでなんでと言ってくるが気にせず鞄から教科書を取り出した。


「啓介どしたの?勉強でもするの」


碧音が何も知らないといったような反応を示す。


「いや来週から定期テストだぞ、俺だってさすがに勉強しないとまずいんでな」


「…え?」


突然困惑顔を見せる碧音。

俺は何かおかしなことを言っただろうか。


「いやいや、聞かされてるだろ?来週からテストだから勉強するように、って」


「そんなの初耳だけど」


何という学校であろうか。

転校生に対して定期テストの存在を伝えていないとは…

だがこいつに限って勉強ができないわけではないだろう…と考えていると


「私、授業の内容全然わからなかったんだけど?」


こいつは俺が思っている以上に馬鹿なのかもしれない。

俺が通っている学校は学力的に低くない。

少なくとも俺は定期テストでは常に10位以内を死守し続けている。

俺がかしこいから感覚がおかしいというわけではなく、授業は馬鹿な奴に合わせたような内容になっている。

その内容が理解できていないというのはやばいどころの問題ではない。

最悪の場合、赤点を取ることになってしまうのだ。


「それはまずいな、今から期間は少ないが頑張れよ」


「えぇ!?待ってよ教えてよ!」


馬鹿(碧音)が懇願をしてくる。

しかし何度も言っているようにこいつは他人である。

俺がわざわざ勉強を教える義理はないのだ。


「いや教えてって、俺も自分の勉強があるし、お前の面倒なんて見てる余裕がねえよ」


当然の反応だ、テスト勉強は一人でやらなければいらない情報が入ってくるかもしれない。

以前綾子と勉強した時は綾子が静かだったおかげで勉強できたし、分からないところを教えあったりもした。

しかしこいつはどうか。

聞いてる限りでは俺がこいつにわからないところを聞く場面が来るとは思えない。

加えてこいつはうるさい。

授業中は静かにしているが、俺と話すときはテンションが高いのだ。

そんな奴と一緒に勉強しても俺のメリットに一切ならないのだ。


「おねがいだよぉー!このままじゃ赤点どころか0点とっちゃうー!」


「いやしらねえよ。っていうかそんなこと言ってる暇があるなら勉強したらどうだ?」


「一人でやって分かるなら頼んでないよ!」


「うっ…」


正論を言われてしまった。

この言い方から察するに本人はいたって真面目なのだろう。

しかし俺も譲れない。

たった一日、されどテスト前の1週間、テストの日が近づくにつれて日に日に緊張感は増していく。

だから…


「おねがいだよぉ…勉強教えてくれたら何でもするから!」


「やめろその言い方、誤解が生まれるだろうが!」


「てへっ」


何と可愛くないのであろうか。

容姿端麗な碧音が何でもすると言い出しては食いつかない男子は少ないだろう。

俺も男だ、変に誘惑されては乗りかねないのだ。

しかしそんなことになれば騒ぎになることは間違いない。

だから…


「お前の気持ちはよく分かった、だがな、俺も自分の勉強がある。だから、とりあえずあそこに集合だ、そこで詳しく話を聞いてやるよ」


俺も大事にされるのは嫌なのだ。

こいつに何をされるかわからない以上危険は排除しておく必要がある。

ゆえにこの提案に俺は乗るしかないのだ。


「やったー!ありがと啓介!」


「うるさいぞ、もっと静かにしろ」


そういっても話を聞かない碧音に俺はやれやれと額に手を当てることしかできなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺は碧音を青色の桜を咲かせた木の下に呼び出した。

ここであれば俺と碧音二人きりの空間になれる。

…これって思春期の高校生にとってウフフなシチュエーションではないか?と考えたが、相手は碧音だ。

残念ながらそんな気持ちは一切抱くことはない。


「ごめーん!まった?」


まるで恋人に会うかのようなテンションでこっちに向かってくる碧音。

俺は腕時計を確認すると


「まだここにきて二分くらいだ、来るのが遅ければ一人で勉強してたし、お前がどうとかあんまり関係ないよ」


と、適当に嘘をついておいた。

実際は15分ほど待ったのだが、言って気にされても面倒なだけだと考えた俺は嘘をついておいた。


「んで?何を教えてほしいんだ?」


「え?教えてくれるの?」


なぜそこに疑問を持つのだろう、ここに待ち合わせた時点で教えることは確定したようなものだっただろう。


「いやだって、話を聞くってだけだったから」


なるほど、聞くだけ聞いて教えないとでも思ったのだろうか。

確かに教えるつもりはなかったが、碧音は真面目にやっているようだったので、俺はその気持ちを無碍にしようとは思わなかったのだ。


「お前が真面目にやるって前提がつくがな。何か変なことを言い出したら終わるつもりだ」


意欲のある人間からのお願いならば教える義理がなかろうとも教えようと思う。

きっと人間として当然のことであろうと自分を納得させた。


「わかった!それで、テスト範囲に関しても詳しく教えてほしいんだけど…」


それから俺は3時間近くテスト勉強に付き合うこととなった。

こいつは俺の想像の何倍もバカで高2どころか中学レベルがそこそこであり、到底ついていけないレベルだった。

とてもじゃないが基礎を教えてる余裕もないのでやり方の暗記をする事にした。

暗記に関しては得意なのか、暗記科目は意外と何とかなりそうだが…


「改めて、数学が酷すぎるな」


「だって暗記じゃ無理なんだもん…」


「うむ……」


言いたいことは分かる。

数学は暗記科目ではない。

確かに公式は暗記だが、その公式さえ使えれば解ける問題など限られる。

故に複数の公式を使わされると途端にダメになるのだ。


「でもあれだぞ?うちの学校は頭が悪いわけじゃない。この程度出来ないと赤点確実だぞ?」


そう、うちの数学の先生はかなり酷いことをする。

テストで基礎問題を1割ぐらいしか出さないのだ。

まるでそんな問題出来て当然と言わんばかりの対応をするため、高いやつはとことん高く、低いやつはとことん低いのだ。

そんな中で基礎も怪しいとなると、いよいよ赤点だ。

俺はこいつが赤点を取ろうが関係ないが、こいつの真剣さが伝わってきたからには助けない訳にはいかなかった。


「うぅ……明日もお願い!数学を重点的に!!」


碧音が頭を下げてお願いしてくる。

まぁこいつも真剣だし、俺も基礎の復習になるから悪くない時間なのだ、断る理由もないだろう。


「別にいいが…これだけ教えたんだ、明日は数学だけでいいよな?」


「うん!いいよ〜、それじゃまたね!」


そう言ってこの場から走り去る碧音。

俺もその場から立ち上がると、気に向かってボソッと言葉を吐く。


「俺はいつまで、こんなことを続けているんだろうな」


と……

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