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78.カナタとシスカ

 グンジを背にクロ達は先を急いでいた。パーティーホールは城の二階の中央にある。その為、この廊下の突き当たりにある階段を目指していた。

 誕生祭の参加者達は正面の大階段を使う為、その階段は手薄である。その筈なんだが…。

 走る廊下のその先に一人待ち受ける者の姿がある。それはとても見覚えのある若い女であった。


「今度は私の番だね!」


 カナタはそう言うと一人走る速度を上げた。対峙する女が投げるナイフを躱しては近付き、殴りにかかる。しかし、軌道を変えたナイフはカナタの前に現れ、それを阻んだ。

 そうこうしている内に俺、アン、メルシュは彼女達の横をすり抜け駆け抜ける。その場に残ったのはカナタともう一人…


「シスカ、久し振りね。」


 そう、この場に居るのはシスカであった。


「ああ、久し振りだねえ、カナタ。でも、いきなり殴りかかる何て酷いなあ。ククク。」


 シスカは顔を押さえて笑う。

 酷い、か。そんなこと言われても敵だしなあ。カナタはそう思っていた。

 カナタとシスカ、共に十傑に名を連ねる者どうし交流があった。共に仕事をしたときにはカナタが敵を追い詰め、シスカが投げナイフで作った罠で仕留めるという中々に相性の良い間柄で、こなした数もそれなりにあるほどの付き合いだ。

 だからこそカナタは分かっている。シスカの相手の仕方が。

 真っ向から行くのは最初の一回で終わり。また同じ様に攻めるとあの投げナイフの餌食になる。だからここはちょっと意地悪して…。


「ねえシスカ、相変わらずジンのことが好きみたいだね。」

「な、何だよいきなり。ジンに関してはそんなことないぜ、アイツはただのライバルさ。」


 少し慌てた様子のシスカ。それを見て攻撃を仕掛ける。左右に素早くステップを踏み、残像を残すその動きから蹴りを繰り出す。動揺を見せるシスカにはそれを捉えられはしない。咄嗟に両腕で体を守るようにしたシスカはカナタの蹴りを受け、少し後に仰け反った。だが、入りは浅い。

 平静を装ってるけど、隠しきれてないな。本当、普通にしてたらかわいいのに。


「分かってる、分かってるって。シスカの場合、変に拗らせてるだけでしょ?素直になったら良いのに。」


 とたたみかけるカナタのその言葉に


「煩い!黙れ!黙れ!」


 と隠しきれず慌てるシスカ。

 実際の所、カナタの話はシスカの急所を突いていた。それは何故か?少し昔の話をしよう。

 シスカは早くに親を無くした孤児であった。彼女は生きるため仕事を探していたある日、悪い大人に捕まったのである。幼子を奴隷として売り払おうとする外道達に。

 彼女はその日、生きる光を見失った。どうしよう、これから酷いことをたくさんされるんだと。

 しかし、塞ぎ込んでいた彼女にまた光が差し込んだ。シスカを捕らえていた外道達はある一人の少年によって殺されたのだ。その少年こそ幼き日のジンである。

 シスカは恋をした。ジンは私を助けてくれた王子様だと。だが、困ったことに彼は裏社会の住人。普通にしていれば、会うことはできないのだ。

 だからこそシスカは殺し屋となった。ジンに会い、共に並び立ち、シスカ=レンゲルという人間を見てもらうために。

 だが、再び困ったことがある。ジンとシスカでは殺し屋としての格が違った。片や十傑と呼ばれる程の少年に、駆け出しの少女。釣り合わないのである。

 シスカは努力した。一流の殺し屋になると…。ここまでは良かった。しかし、ここからが彼女の失敗の始まり。

 殺し屋を雰囲気でしか知らなかったシスカはやり過ぎたのである。ターゲットを殺し、それを見せ付けるように弄ぶ。それが正しいと思い込んでいた彼女は同じ様に殺しを繰り返した。彼女が間違いに気付いたときには既に遅く、狂った奴だという印象が知れ渡った後。仕方なく彼女は手法を変えず、仕事をこなすのであった。

 彼女の失敗はこれだけではない。恋をしたジンに対してもそうだ。ジンを目の前にすると決まって極度に緊張してしまい、本音が言えないのだ。取り繕うように仕事でのスタイルで話をしてしまう彼女はジンから狂人であると思われてしまった。

 仕舞いにはストーカーに近い存在となった彼女は今回の騒動でジンを探しては照れ隠しに戦いを挑んでいた。いやはや哀れな話である。


「殺す!殺す!殺す!」


 シスカは動揺を怒りに変え、ナイフを飛ばす。縦に横に糸を引くナイフはただカナタの体だけを狙っていた。

 効果てきめんだね。知ってたけど、これ程とは。まあ、ジンには教えてあげないけど。

 それとシスカの得意な線の攻撃じゃなくて、点の攻撃になってる。これじゃ避けるのは簡単、簡単。じゃあ、そろそろ終わらせようか。

 カナタは飛び上がりながら靴を脱ぐ。身軽になったカナタを知らないシスカはもう止めることができなかった。

 靴を脱ぎ、一秒もかかっていないだろうその間にカナタはシスカの居た場所に立ち、シスカは宙を舞っていた。


「これで終わりっと。ジン達を早く追わないとね。」

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