77.グンジとライザー
ふう、行ったか。さて、俺はこいつをどうにかしないとな。
「まさか止められるたあね。賊にしてはやるじゃないの。お前、名前は?」
「グンジ=ヒノモト。まあ、覚えてくれや。」
目の前のこいつ、ただ者じゃ無い。受け止めた剣の圧もそうだが、何というかオーラの様なものを感じる。確か王国騎士団副団長だったか、成る程無傷じゃ済まなさそうだ。
少し距離を置き、向かい合う。しんとした廊下、ライザーの呼吸でさえ分かる程に静まり返る。嵐の前の静けさとはこのことを言うのだろう、次に一歩踏み出した時が嵐の始まりだ。
両者動かぬまま時間だけが緩やかに流れていく。達人の域に至る者の戦いは何もその鋭さ、力強さを比べるだけではない。相手の動きを読むのもまた戦いである。その攻撃の手を数手、いや十数手を考え、それを上回る手で敵を仕留める。つまりは経験と発想力の勝負だ。
最初の打ち合いで腕力としてはほぼ互角というのが分かった。俺の殺し屋としての経験が上か、ライザーの騎士としての経験が上か…。ハハッ、手がザワついてきやがる。
グンジの額から汗が頬を伝い顎に至る。それは雫となってぽたりと床に落ちた。二人はそれを合図に動き出した。
動き初めは同時。鋭く振られた剣は首、胴を捉えた必殺の一撃と一撃。それは勿論、当たればの話。互いにそれを躱し、次の行動へと移る。
薙ぎ、突き、フェイント。あらゆる角度、手法で相手を上回ろうと攻撃する。立ち止まり考えていた策は既に尽きていた。後はひたすら剣を振り、その中で考え、即実行する。先に遅れた方の負けだ。
二人には言葉を交わす余裕など無い。廊下には打ち合う剣の音、飛び散る汗がその凄まじさを表していた。
マズいな。グンジは極限状態の中そう感じていた。そう感じるのは策が尽きたとかそう言うものでは無い。剣がマズいのだ。
剣を極めた二人の打ち合い。それにより使う剣に疲労が蓄積していた。
後数撃打ち合えば折れる。俺のこの剣は良い剣ではあるが業物じゃない。折れる度に新しく買い換え使っているからこそ分かる。後数撃で折れると。
そうなれば俺は切り伏せられて終わりだ。ま、やられるつもりはねえけどな。
剣が折れるという不安要素がある中、打ち合いは続く。ただグンジは投げやりに打ち合ってはいなかった。一瞬、ある一瞬を狙っていた。
そんな時、遂にグンジの剣は悲鳴を上げ、ライザーの剣を受け止めた箇所から亀裂が入り、折れる。それを見てライザーはニヤリと笑う。勝負有りだと。
だがその考えは間違いであった。グンジの攻撃は続いていたのだ。折れた剣を持ち、ライザーの懐に入る。折れて身軽になった一撃はライザーの頭には無く、その胴を貫いた。血飛沫を上げ、ライザーはその場に倒れ込む。
「まさか、やられるとはな。」
ライザーは口から血を垂れ流しながら言葉を紡ぐ。
「まあ、賭けだっだけどな。」
グンジの最後の一撃、あれはグンジならではの一撃であった。過去の戦いの中、幾度となく剣を折りながらも生き残ってきたその経験から出たもの。今回はそれが勝敗を分けた。
さて、ジン達の所に急ぐか。折れた剣を鞘に収め、グンジは走り出した。




