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75.絵と仕掛け

「あったよ、龍の絵!」

「本当か!」


 メルシュは自信満々に頷く。それではと俺達はメルシュの案内に従いその場所を目指した。

 歩いていた足は通路の途中で止まる。何も無い普通の通路のそこに一箇所だけ目の止まるものがある。それは丁度胸の高さほどに小さく彫られた龍の絵だ。

 これが話にあった龍の絵か。予想していたより小さいな。レンガ一つ分位のその絵は、精巧に掘られており、そこだけ異質であると感じられる。


「うん、この龍の絵、間違いないよ。」


 アンのお墨付きをもらい、俺達は安堵した。

 後は中に入る仕掛けを解くだけ。俺達はアンにそれを委ねた。

 アンはその龍の絵の前に立つと、右手を絵に添えた。そしてグッとその絵を押し込むと目の前の壁が動き、左右へと割れた。現れたのは人一人が漸く通れる程の幅と一メートル程の奥行き小さな通路。何も無いその空間に疑問符が浮かぶが、アンは任せてと親指をあげた。アンはその短い通路の奥へ至った所で屈む。そして両手をその壁の下へ入れると一気に押し上げる。シャッターの様に開いた壁は更に奥へと繋がる通路を出現させた。


「どう?面白い仕掛けでしょ?」


 確かに壁が持ち上がるなんて普通は分からないな。

 城の脱出口であるその通路はひんやりとしており、誰かが居る様子も無い。少し奥へ進むと人一人分であった通路は膨らみゆったりと寛げる程の空間もあった。ここなら拠点として申し分ない。

 メルシュは「よくやったよ、アン。」とアンの頭を撫で回している。本当、よく脱出口のことを思い出してくれた。一時はどうなるかと。

 俺達はその場を拠点として、準備を始めた。武器の手入れに、休養、そして地上に上がり侵入経路の確認と念入りに。

 グンジは地上に上がった際に情報収集をしていた。そこで手に入った情報によると、グレス公爵が抱えた十傑は五人。この前のアズとリズ、ラピスにシスカ、そしてゼロだ。アズとリズには深手を負わせたが、他はきっと俺達の前に立ち塞がってくる。用心しないとな。


「ねえクロ、ちょっと良いかな?」


 拠点で体を休めているとアン隣に座りが話しかけてきた。


「どうした、アン?」

「えっとね、クロとの旅もこれで最後なんだなと思うとなんだか話したくなったの。」

「そうか。そう言えば、いろいろあったよな…。」


 本当にいろいろあった。初めは俺が仕事としてアンを殺そうとして、でも何故か助けることになって二人各地を逃げ回って、メルシュが仲間になって。危なかったことも多くあったけど、時には笑ったりして何とかここまで来た。


「…前にさクロが言ったこと覚えてる?全てが片付いて、もしお城に居たくなかったらその時はってこと。私ね…。」

「戻ったぞ!」


 アンが言い掛けた言葉をグンジが遮る。


「ん、タイミング悪かったか?」

「ううん、大丈夫。上の様子はどうだったのグンジさん。」


 何でも無いよという風に返すアンだが、さっきの話、あれは…。いや、話の続きは全てが片付いたその時に取っておこう。俺はアンに続いてグンジの話を聞きに行った。

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