73.火と瓦礫
向こうも終わったみたいだな。さて、コイツらを暴れないように縄か何かで縛って…。
「クッソ、イッテーなオイ。」
リズが起き上がって叫ぶ。大分頭にきてるな。右手から血は流しているものの、まだやる気らしい。あの体で何ができるって言うんだ。
でも、気は抜けない。追い詰められた敵ほど何をするか分からないからな。俺達はリズの動きに注意しながらゆっくりと距離を詰めていく。
そんな時、リズは無事な左手で天井を指差した。すると天井、貴族街へと通じるあの蓋から火の付いた矢が一本放たれた。それは地面に突き刺さると火を走らせ、辺りのゴミを巻き込んだ。地面に油が染み込んでいるのか火は直ぐ様強さを増し、一面火の海と化した。
クソッ、これがアイツらがこの場に仕掛けた罠か。まさか地面に油を湿らせてるなんてな、ゴミの臭いに紛れて気付かなかった。
「皆、こっち!」
カナタがこっちだと手を振る。その誘導に従って俺達は走った。熱い。火の熱が背後から押し寄せてくる。なんか前にもこんなことあったな。あのときはあのオッサンにやられたんだっけ?今回もオッサンが公爵側にいるのかもな。いや、今は無駄なことを考えるのはやめておこう。早く逃げないと。
ここは地下だ。他に行き場のない炎は通路へと延びてくる。それによって酸素は大量に消費され、一酸化炭素も次々と作られていく。このままでは皆、地下いる人達もただじゃ済まない。
どうする、このままじゃ…。
「皆先に行け!」
グンジ!グンジは剣を抜き通路の壁側へ寄る。そして剣を振りかぶると力強く壁を叩いた。ミシミシと音を立てながら壁にヒビが入る。それは天井を伝い、反対側の壁に至った。次の瞬間、天井が崩れ落ち、走ってきた道を瓦礫が塞いだ。
「グンジ!」
巻き起こる土煙に咳き込みながら、後を振り返る。そこには服にかかった土を振り払うグンジの姿があった。
「これで一先ずは大丈夫だ。だが、他の通路から火が回ってくるかもしれん。手分けして道を潰すぞ!」
グンジの言葉に皆頷いた。アンは俺に付き、四方に分かれる。そこから俺は取り敢えず、壁伝いに右回りで走った。変に分岐していなければこれで全てを押さえられる筈。兎に角時間との勝負、急げ!
一つ、二つ、三つ…。走り、火が見えたら天井を崩す。その作業をひたすら繰り返した。ただ危険も大きい。たった今も寸前まで瓦礫が降ってきた。もし一歩間違えたら…。集中、集中。両手で頬をパンパンと叩く。そして再び足を動かした。
全て片付いたのはそれから一時間は経った後だった。皆息を切らし、その場に座り込んでいる。
「ハァー、キツかった。アイツらとんでもないことしやがるな。」
息を大きく吐き出しながらグンジがそう言う。
「本当にそうだよ。あたしらは兎も角、この地下通路の住人まで危険にさらしたんだからさ。」
「でもさ、私達も結構マズいことしてない?だってこの上貴族街なんでしょ?」
「「「あ!」」」
カナタの言葉に皆して顔を合わせる。確かにこの上は貴族街。天井を崩したってことは…。いや、何も考えないようにしよう。全てはアイツらが悪い。
ハァー、それにしても困ったな。拠点をどこにしよう。




