67.冷や汗と自由
ドンドンと心臓を脈打つ音が大きくなる。マズイ、このままでは。
そんな時、下の階にノックの音が飛び込んだ。
「旦那様、お客様がお見えになりました。」
その声に、開きかけていた天井板はすーっと閉じていった。
「誰だ、こんな時間に。」
そう言うと声の主は部屋の外へと出ていった。
ふうー。一つ息を吐き、額の汗を拭う。あっぶねー。見付かるところだった。出入口があの天井板しか無いこの部屋じゃ、逃げようにも難しいからな。
さてと、とっとと出るとしよう。
下の階を覗き見て誰も居ないことを確認する。安全を確認し、その部屋へと降り立つと、直ぐに窓の外へと出た。後は来た道を戻るだけ、巡回する警備兵だけに注意し、庭を通り、屋敷の外へ。町の暗闇に身を隠しながら、俺は地下通路に入った。
よし、一先ず潜入調査は完了だな。手に入れたこの手紙をアースノー王に渡す。そして、グレス公爵の屋敷を調査するように誘導すれば、奴の悪事は表に出るだろう。
ただ問題もある。どうやって王に渡すかだ。俺はお尋ね者、王に会うのは至難である。人づてというのも難しい。どこの誰がグレス公爵に力を貸しているかも分からないこの状況では途中で握り潰されることも考えられる。やはりここはこっそりと潜入する他ないな。
取り敢えずはミルドに戻ってアン達と早く合流しよう。
俺は地下通路からアースノー町の外へと出た。外はまだ星が輝く夜中であるが、足を急がせた。グレス公爵がいつ手紙が無いことに気付くかも分からない。急がないと。
急いだかいもあってか、三日かかる道のりを二日半でミルドに辿り着いた。町の中、二人を探す。どこに居るだろうか?取り敢えず、情報屋の所へと行ってみよう。そう思い歩いていると、町の大通りでよく知った顔を見付けた。
「アン!」
「あ、クロ!お帰り。」
首を少し傾け、にっと笑うアンに
「ただいま。」
と伝えた。今回は特に何事も無く無事に戻ることができた。これも彼女が信じると言ってくれたお陰だろう。
それにしても顔も隠さず何故こんな人通りの多い所に?話を聞くと町の人達のお陰であった。この町の人達は皆一様にアンのことには口を閉ざし、匿い、守るようにと動いているらしい。それも彼女が町の人達に愛されているからだ。
こんな風に自由にしていられるなんてな。でも、これだけじゃまだ足りない。グレス公爵の悪事を知らしめて、本当の自由を掴まないとな。




