66.手紙と隠語
部屋へ侵入した時、確認したことがある。身を隠す場所についてだ。天井から床までざっと見渡し、見付けたのは天井の一画。天板の内、それだけ色が少し明るい。恐らく屋根裏に上がるためのものだろうが、都合が良い。
音を立てないように飛び上がる。天井板を押し上げ、梁を掴み、体をスッと持ち上げる。持ち上げられた体は屋根裏に隠し、天井板をそっと戻した。少しして部屋のドアが開く音が聞こえたが、こちらに気付いた様子は無い。
何とかなったな。暫くこのままじっとしているか。
じっとしていると、ふと、違和感を感じた。屋根裏、暗殺の仕事で幾度となく使っているその場所は普通、ちょっとした物置程度のスペースしか無いものである。だが、ここはそうではない。寝転がった体勢から上を見上げると普通の一部屋分は高さがあり、奥行きもある。更に周囲を確認すると机や椅子、書棚等家具も置いてあった。
ここは三階の部屋なのか?それにしてもドアが見当たらない。確かに外から三階建てであったのは見たが、ここは今上がってきた天井板からしか来れない隠し部屋なのかもしれない。
これは好都合。如何にも証拠がありそうな場所だ。音を立てないようにそっと立ち上がり、机の方へと歩み寄る。その机の上には一つ紙が置いてあった。何かの手紙の様で、内容は…。
手紙に出てくるの名はベンとアンナ。ベンはのんびりと過ごしている。何やら最近体の調子がおかしいと訴えるので、いつも通り薬を処方しやすい様に食事に混ぜて摂っているらしい。
アンナは隠れんぼをしている。あちこちを探してもなかなか見つからない程の隠れんぼの名人だ。ついこの前、見付けたと思ったけど、気のせいでまだまだ見付けられないかもしれない。…と手紙には書いてある。
この手紙、もしかしなくてもアースノー王と俺達のことだよな。これで隠してるつもりなのか、ちょっと笑いが出る。
この手紙によるとアースノー王は毒を盛られていて、俺達の行方は分かっていない、といった所か。
机の引き出しを開けてみる。さっきの様な手紙を探してみるが、見つからない。やっぱり見付かるとマズイものは燃やすなりして消してしまうか。
更にあちこちをあさる。だが、それらしいものは出てこない。仕方ない、この手紙だけでも持ち去るか。手紙を懐に忍ばせる。
さてと、後はここから出るだけだ。といっても出口は入ってきたあの天井板だけ。そして下の階にはまだ誰か居る。これは待つしか無いな。
そう思った矢先、天井板が浮き、下の階から明かりが漏れ込んだ。




