64.ゴミと屋根
ゴミの上、グショリという嫌な感触を覚えながらも歩く。ゴミを捨てるであろう木の蓋の丁度真下まで来た。見上げるがなかなかに高さがある。普通には上がれないな。
辺りに散らばるゴミを見る。その中には食べ物の残りである生ゴミの他に壊したであろう家具まである。これらを積み上げていけば…。
俺はゴミの山の頂上に壊れた家具等を乗せていく。椅子に机に、どんどん積み上げていくが、ゴミの数は山ほどある。不足することはないだろう。数日では無く、きっと何年もここへ捨てられ続けたのだろうな。
作業を始め小一時間、漸く天井に届くまでになった。額には汗が滲み、服にはすっかりとゴミの臭いが移ってしまった。
このままじゃ屋敷に侵入できない。少し外の風に当てて臭いを消さないとな。
ともあれ今は外に出てみることだ。積み上げたゴミの上、俺はその頂上から天井に見える木の蓋をそっと持ち上げた。そこから日の光が差し込み、目を細める。慣れてきた目からは外の様子が窺えた。
近くに人は居ない。だが、この場所から少し離れた辺りに大きな屋敷が幾つか見える。ここは確かに貴族街の様だ。
更に周囲を見渡し、人が本当に居ないと確認して外に出る。直ぐ様近くにあった植木の陰に身を隠し、また辺りの様子を見る。
外に出ることはできた。次はグレス公爵の家がどこかを探さねばならない。この町の情報屋を探そうにも伝手がないことには時間がかかる。そうだな、公爵と言えば貴族の階級でも王族に次ぐもの。その家はさぞかし大きいものだろう。ということで兎に角デカい家から侵入した方が早い。
我ながら凄く雑な考えだと思う。だがあながち間違ってもいない筈だ。
近くにある木々からそのまた近くの屋敷の屋根に飛び移る。
ふう、風が気持ち良い。さてと、どの家が一番それらしいだろうか。屋根伝いに歩き回った。
下の通りにはまだ昼間ということもあり、人通りもそれなりにある。歩く人々は空を見上げながら歩く者はいないが、それでも見つからぬ様にと、屋根の死角に身を潜めながら探していく。
暫く歩き回ると恐らくそれだろうという屋敷が一つあった。その屋敷は庭が広く、門を潜っても暫く進まないと屋敷に辿り着かないというもので、その屋敷もまた他と比べるまでも無いほどに大きいものであった。
庭が広いというのが面倒だ。屋敷に入るにしても警備の目を盗んで少しずつ進まねばならないだろうからな。
だがそれは、日が沈んでからの話。今はここ屋根の上で一休みをしよう。




