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62.夜と心残り

 もう夜も深く、宿の外は暗い…かと思ったが、あちこちで光が灯り、町はまだ眠っていない。歓楽街のあるこの町はきっと眠らぬ町なのだろう。

 通りには酒に酔った男共、また客を誘う際どい服装をした女達が歩いている。アンもこの町の出身、きっと慣れている筈だが、連れ歩くには少し戸惑う。

 そんな俺に気付いてか、彼女はすっと前を歩き「こっち。」と手を引く。彼女の歩くがままに付いて行くと、騒がしくしていた辺りを抜け、静かな公園の様な場所に出た。

 適当な場所を見つけそこに腰掛ける。


「なんだか二人きりって久し振りだね。」

「メルシュと会う前だから本当かなり経つな。」


 ハハハと笑う彼女。


「クロ、ありがとね。」

「何のことだ?」

「うーんと、いろいろかな?あの日会ったのがクロじゃなかったら、きっとこの場に、こんな風に帰って来られなかったんだろうなってそう思うんだ。」


 あの日…。俺にとっては心にしこりの残る日だ。目の前の、このアンを殺そうとした日。まだその日のことを謝れてもいない。日だけが過ぎ、どんどん伝え辛くなっている。今になって思う、何故あの日、あんな出会い方したんだろうと。


「あの…。」


 俺が言いかけたとき、アンは被さる様に


「お昼にクロがまた一人で大変な所に行くって聞いたときね、私ドキッとしたの。クロがまたボロボロになっちゃうって。もしかしたら今度は帰って来ないんじゃないかって。なんかごめんね、いつもボロボロになってもちゃんと私達の所に帰ってくるのに。全然信頼してないみたいで。」

「…。」

「だからね、私考え方を変えたの。クロは大丈夫。また無事で帰ってくる。そう信じようって。だから、クロ、私は信じて待ってるから。」


 信じる。信じる、か。これほど嬉しい言葉は無いな。


「分かった。ちゃんと戻ってくるよ。」


 そう言って俺はまた謝りそびれたのだった。

 翌日、早々に腹ごしらえをした俺は直ぐに支度を整える。


「それじゃ、行ってくる。」


 見送る二人を背に俺はアースノーに向け歩みを始めた。

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