61.これからと空腹
騎士との戦いが終わり、俺達は墓参りをやり直した。幸いアンの母親の墓は壊れておらず、メルシュの一撃でできたクレーターは少しそれた場所に残っている。
俺は墓の前で再度アンを守ると誓った。本人の目の前でそれをするのは小っ恥ずかしいものがあり、言ったそばから顔が熱くなる。
「さてと、これからのことを話そうか。」
これからのこと。俺達が倒すべき相手はグレス公爵と判明した訳だが、ただ倒すのでは意味が無い。暴力を持って倒すだけならば、俺達は賊として更に追われるだろう。
ではどうするか?グレス公爵、奴が悪事を働いたという証拠を集め、それを公にすれば良い。
そう証拠だ。書面、物品、証言。そのいずれか、いや、複数のものを集められれば、そうすれば奴の悪事を曝くことができる。
証拠を集めるには、奴の家に侵入するのが一番だ。となれば…。
「俺が一人で行ってくる。二人はこのミルドで待っていてくれ。」
「クロ、それは!」
アンが言いかけた所をメルシュが止める。
「分かった、あたし達はここに居るよ。アンも分かってるんだろ?」
「う、うん…。」
これは潜入調査。三人より一人の方が身軽で行動がし易い。何より、そういったことに慣れてないアンを連れての潜入調査はより危険だ。それに今のミルドならば匿って貰える筈。これが最善だ。
残る二人にも大切な役目がある。それはカナタ、グンジの二人にここへ集まって貰う様手紙なり、何なり動いて貰う。
悪事の証拠さえ揃えば後は追い詰めるだけ。ただ簡単に押さえ込める訳では無いだろう。そのとき二人の力が必要になる。だからこそこのタイミングで呼ぶのである。
グレス公爵家、その邸宅はアースノーにある。言わば敵の本陣だ。
今まで俺を襲ってきた十傑はシスカ、ラピスそしてゼロ。味方の三人と中立のレヴェリを除けば残るはあの二人か。きっと居るんだろうな、その二人が。
考える程に気が重くなっていく。頭を振るい目的だけを残した。俺は証拠を掴む。それだけだ。
話は終わり、今日の所はとミルドで体を休めることにした。もう敵の居ないこのミルドでは宿を借りることができた。
借りた部屋に入るとすぐベッドに飛び乗った。一息つくと体の力が抜け、直ぐさま眠りに吸い込まれていく。これはもうダメだなとそれに従った。
目が覚めたのは夜中。お腹が空いたと自らが発した音で起きたのである。宿の食堂へ行ってはみるが、勿論しまっている。仕方ない、明日の朝まで待つかと自室に戻ろうとしたとき、俺居たの部屋の隣の部屋の扉が開いた。扉の向こうからひょこんと姿を現したその娘は俺に気付き
「誰?」
と聞き慣れた声を漏らした。
「アン、俺だよ。」
「なんだ、びっくりした。クロ、どうしたのこんな時間に?」
「それが…。」
言いかけたその時、溜まりに溜まった空腹が最大の音を響かせた。その音に二人して笑う。でもそれは少しだけ、他の客を起こしてはいけないとまた二人して口に人差し指を当てた。
俺が起きた理由に気付いたアンは部屋に戻ると買い溜めていた食料を持ってきてくれた。
「今はこれしかないけどガマンしてね。」
「ありがとう、助かるよ。」
「…ねえ、ちょっと外に出ない?」




