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54.二人と提案

「大丈夫かい、アン?」


 息を切らした私をメルシュは心配そうに見る。


「うん、大丈夫。まだ動けるよ。」


 クロと別れてから四日が経った。

 クロが今まで見せたことが無い程焦りを見せたあの男の人。メルシュから話は聞いたけどあれがクロの師匠であるゼロ。一瞬しか見なかったけど荒々しくも禍々しくも無い雰囲気は私達を手に掛けようとしていたとは微塵も感じなかった。でもそれがあの人のやり口で、普通を装い溶け込み、気付かない内にやられてしまうのであれば…、そう考えると恐ろしくてたまらなくなる。クロはそんな人を相手に殿を務めてくれた。無事だろうか、またボロボロになってないだろうか、それとも…。日を増す毎に心の不安が大きくなる。お願いだから無事でいてと、そう願うのであった。

 ただこちらも休んではいられない。メルシュと話をして私達二人の今後の動きを決めた。まずはクロと合流する場合、何処にするかだ。クロと別れたあの場から考えるにメルシュの家が一番だと結論が出た。しかし、彼女の家の近くまで来たときにメルシュがふと違和感を感じたらしい。いつもと違うと。そこから注意深く辺りを見回すと王国兵士達が影に隠れ見張っているのを見付けた。これはまずいと、直ぐにそこから離れた。

 メルシュの家がダメ。次に考えられる場所は何処だろう?答えは直ぐに出た。ミルドの情報屋だ。今目標としているそこならばクロも気付く筈だと。

 ミルドを目指し、歩みを進める訳だけど、その足は重い。休みもそこそこに歩き続けた疲れもあるだろうけど、一番は心の問題。爪弾きにされたあの町にまた足を踏み入れないといけないと思うとどうにも心が苦しい。

 気持ちを切り替えないと。そうだ、少しならお母さんの所に行っても良いかな。私とお母さんの過ごしたあの家にはお母さんのお墓を立ててある。私が元気にやってるって、優しい仲間ができたって話をしたいな。

 メルシュに話してみたら、「そいつは行かないとね。あたしも紹介しておくれよ。」と言ってくれた。良かった。少し足が軽くなった気がする。


「見えてきたねえ。」


 メルシュが片手で日を遮りながら言う。私も同じ様に遠くを眺めてみると町が見えた。ミルドだ。

 町を外から見たことはお城に呼ばれた時の一度きり。だからまだあまり実感が湧かない。でも、戻ってきたんだ、この町に。

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