49.同じと格上
振ったナイフはあえなくゼロの持つナイフに受け止められる。
「育ての親にとんだ挨拶だな。」
「お前に育てられた覚えは無い!」
ナイフを押す反動で後ろに距離を取る。
ゼロは強い。世界最高の殺し屋としてその名が轟き、強さの底を俺は知らない。
ゼロは俺と同じくナイフ使いだ。その機動力を活かし、縦横無尽に攻撃を仕掛ける俺と全く同じ戦闘スタイル…。そうなるのも当然だ、俺がゼロに拾われた時、奴の戦闘スタイルをそのまま指導されたのだから。
しかし、同じが故に分かることがある。攻撃のパターン、間合いの取り方、呼吸のタイミング。同じだからこそ実力の差が出やすい。
経験、パワー、スピード、どれを取ってもゼロには敵わないだろう。普通の状態であれば。
限定解除にて、身体強化を行う。レンネを脱出するのに使った時間は一分三十秒程度。まだ行ける。
左右にステップを踏みつつ、間合いを詰めていく。時間は限りある。仕留めるなら一撃で…。今だ!
足に力を込め、ゼロの心臓目がけナイフを突き出す。取った!
そう思った。奴の服にナイフが刺さり、その感触も手にある。しかし、肉までは達しなかった。
「危ねえな。」
ゼロは何事も無かった様に俺の五メートル前方に立っていた。
何で、確かに奴の胸元までナイフを…。あの状態から避けられる筈が無い。
「ん?お前何でって顔してるな。何、簡単なことさ。」
その言葉の後、ゼロの姿は消える。一体何処へ?ぐはぁ。
気付いた時にはゼロは直ぐ近くにおり、奴の右拳は俺の鳩尾に入っていた。
「お前が俺より弱えんだ。」
足の力が抜ける。ヤバイ、俺ここで…。
いや、負けられない。こんな所でくたばる訳にはいかない。ぐっと足に力を入れ直し踏み留まる。そして再び距離を取った。
はぁはぁ。まだ鳩尾が痛い。何でさっきの攻撃を躱されたか、何で動きが見えなかったのか。それはゼロも自由に脳のリミッターを外すことができるからだろう。そしてその能力も向こうの方が上。打つ手は一つである。
服の内ポケットに隠した丸薬を一つ取り出し、口に含む。今度こそチャンスは一度きり。必ず仕留める。限定解除参。




