48.一休みと忍び寄る影
レンネの町を出てもその足は止めない。兎に角遠くへ、遠くへ、何も見えなくなるまでと。息を切らしながら先を急いだ。
だがそれも長くは保たない。徐々にアンのペースが落ち、離れていく。限界か。後ろを振り返ってみるが追っ手も特には居ない。俺達は足を止めた。
荒く呼吸をし酸素を取り入れる。汗が噴き出し、服を湿らせた。俺も思っていたより無理してたらしい、この有様だ。
辺りを見回し、丁度良い木陰を見付けたのでそこに腰掛けた。
「まさかこんなことになるとはねえ。」
メルシュが隣に腰掛けながらそう言った。
「本当、もう疲れたよ。よいしょっと。」
アンもゆっくりと隣に座り込む。
「でもアンがあそこまで動けるとは思わなかった。もう少し上のレベルで訓練しても良いかもな。」
「へへへ、そう言って貰えると嬉しいな。もっと頑張ろうって思えるよ。」
実戦はあれが初めてだった筈だが、臆すること無くしっかり対処していた。本当に賞賛するべきはその精神面だな。
初めてというのはどうしても手が鈍る。自分では分かっていたとしても思った通りには行かないものだ。だが、アンにはそれが無かった。今までの過酷な経験がそれを実現させたと考えると悲しいものだが、彼女を守る力となったのであれば良かったということにしておこう。
息が落ち着いた所で立ち上がり、先を目指す。体はまだ重いが長くは立ち止まれない。暫く進めばまた町があるが、その町の次はあのオベール。戻ってきたなと実感が湧いてくる。
「アン、ちょっと聞いてもいいか?」
「何?」
レヴェリが言っていたグレス公爵家についてアンに聞いてみる。今回の件、まだ黒幕は分かっていない。グレス公爵家がそうだとは分からないが、分かることは知っておきたい。
「ごめん、私もよく知らないんだ。お城に居た時もあまり人と関わらなかったから…。」
「そうか…。」
アンも知らないか。やっぱり情報屋の元を訪ねるしか無いな。先を目指そう。
「久しいな。」
突然背後から声がし、振り返る。な、何でこんな所に…。全く気配を感じなかった。って、そんな場合じゃない!
「お前ら逃げろ!」
「えっ!」
「良いから逃げろ!」
突然のことに戸惑うアンをメルシュが手を引き連れて行く。
俺はこいつの足止めをする。
「お前何でこんな所に!」
「何で?分かるだろう?お前を殺す為だよ。声を掛けてやった奴等が仕事しないからな、俺自ら来たのさ。」
「ゼロ!」
俺はナイフを抜き、飛び掛かった。




