47.出口と成果
喧騒が増す中をただ走る。騒ぎを目印に衛兵は所々から顔を出す。そして、俺達に気付くと走り、向かって来た。
襲い来る衛兵達全てを相手にしてはこちらも疲れると、時折脇道に入りながら躱していく。
それにしても数が多い。行く道の先々に必ず衛兵が居る。何故だ?いや、よく見ると何やら話をしながら追ってきている。こうなる様に誘導されているんだ。それに衛兵の方が地理がある。このままでは消耗させられて終わりだ。
「何を考えてるんだい。こういう時はこうだよ!」
そう言ってメルシュは目の前を塞ぐ衛兵を殴り飛ばす。そして、衛兵すらも関係無く、ただ真っ直ぐに突き進んで行く。
まるで戦車だな。だが、頼もしい。
メルシュを先頭に町の出口を目指す。このまま、このまま行けば…。
「指名手配犯め、覚悟!」
走っている道の脇から衛兵が飛び出して来た。衛兵は剣を手に、振ってくる。その軌道上には俺の直ぐ後ろを走るアンが。
危ない!そう思った次の瞬間にはアンがするりと剣を躱し、「ひい!」と血相を変えて走る速度を上げた。
アン…。訓練の成果か、こんな時だが嬉しく思う。
「クロ、にやけてる所悪いけど、マズイことになったよ。」
メルシュはそう言い、前方を指差す。そこには町の出口が見えた。見えたのだが、出口を塞ぐ様に衛兵が十数人立っている。このままじゃ出られないな。
勢いそのままの突破は難しいと足を止める。すると、後ろから追って来ていた衛兵も加わり完全に囲まれてしまった。
「あたしは前をやる。クロとアンは後ろを頼むよ。」
「分かった。」
「うん。」
緊張した様にアンも応える。
さて、一暴れするか!
ジリジリと間合いを詰める衛兵達。仕方無い、今が使い時だな。限定解除。
一段階目だけの力の解放、五分しか持たないこの状態だが、二分までならその後の活動に問題は出ない。だから今回は早さを求める。
足に力を込め飛び出す。間合いに入った敵から殴ぐる。身に纏う鎧のせいか、気絶させるまでには至らないが悶えてはいる。この調子で数を減らす。
アンの方も気に掛けて見てみるが、衛兵の攻撃を躱しつつ上手く立ち回っていた。やるな、アン。
「やるねえ、二人とも。じゃあ、あたしも!」
メルシュは右拳を振り上げた後、地面に向け力一杯振り下ろした。
おい、それは!俺は急いでアンの元に駆け寄り、その体を抱えると大きく上へ飛び上がった。
次の瞬間、地面は大きく割れ、衛兵達を巻き込んだ。残っていた衛兵の殆どが今ので沈んだだろう。全くやってくれる。
「メルシュ、やる時はこっちも気に掛けてくれ!」
「悪かったねえ、でも、良い仕事したろう?」
笑うメルシュ。反省してないなあいつ。
「ねえクロ。そろそろ下ろしてくれないかな?」
手の中のアンが俺を見上げて言う。ハッとなり、慌ててアンを下ろすと無性に気恥ずかしくなる。
「こんな時に何してんだい。ほら行くよ。」
メルシュの一撃で道ができたと、町の外へと再び駆け出した。