46.怪しい話と警笛
レヴェリから薬を受け取る。受け取ったそれは作っていた時の強烈な臭いは無く、茶色の丸薬となっていた。
「それ一つで、飲んでから三十分は治癒能力を爆発的に上げることができる。使ったら、感想を聞かせてくれ。」
三十分。単純に限定解除状態での活動時間が六倍に増えるな。限定解除参ではどうだろうか。流石に無事では無いだろうが、使用後の回復は早いだろう。これで、もっと戦える。
「ありがとう、レヴェリ。」
それからレヴェリの家でゆっくりと茶を飲む。アンとメルシュが用意したから安心できる。
「それで、君達はこれから何処へ行くのかい?もう国中ろくにゆっくり休める場所は無いだろう?」
「ああ、もう何処行っても手配書が回ってて嫌になる。今は解決策を模索中さ。」
「そうか、なら一つ良いことを教えてやろう。君が指名手配される少し前に私の元にある依頼があった。依頼はちょっと特殊な毒薬の提供で、問題なのはその依頼元。今回の依頼元はアースノー内で王の次に力のある貴族、グレス公爵家だ。どうだい、何か臭うだろう?」
毒薬の依頼を公爵家が?俺が追われる様になる前というのが確かに気になるな。だが、関係あるのだろうか?偶々ということもある。今は保留だな。
レヴェリの家で寛いでいると、家のドアをドンドンとノックする音が響く。客か。レヴェリが出ようとする際に、俺達に向かって手をヒラヒラと振った。何だ?と思ったが、直ぐに理由は分かった。レヴェリがドアを開けるとそこには衛兵の姿があったのだ。
「失礼する。こちらに怪しい人影が見えたと情報があったので、調査をしている。主人は何か…お、お前は、手配書の!」
衛兵は俺を指差し叫んだ。マズイ、バレた!
事態に一早く気が付いたメルシュは飛び出し、衛兵にその右拳を繰り出す。そして、後ろに控えるもう一人の衛兵を巻き込み、向かいの建物まで吹き飛ばした。
「逃げるよ!クロ、アン!」
その言葉に頷く。
「ジン、また会おう。」
「ああ。」
挨拶も程々に、俺達は家の外へと飛び出した。
吹き飛ばされていた衛兵の一人は半身を起こし、持っていた笛を鳴らした。その音は大きく、町中に響き渡る。その音を聞いてか、辺りが騒がしさを増す。
ここに居ては衛兵がやって来る。どうする…。
「クロ、考えてる時間は無いよ!こういう時は正面突破さ!」
そう言ってメルシュは走り出す、町の出口の方へと。
仕方無い、やるしかないか!