45.説明と調合
「どうしてだ?」
自分で提案をしておいて取り下げようとはどういうことだ?
「使えば使うほど早く死ぬからだ。通常損傷した細胞は修復しようと分裂を起こしていく。この回数が増えるにつれ細胞は劣化し、死滅していくのだ。さっき話した薬はその行程を過剰に起こすため、通常の数倍の負荷がかかる。つまり、早く死ぬのさ。それでも良いのかい?」
早死にか。イマイチピンとこないな。どれくらい生きれるか分かるものでもないし、今を生きるので精一杯で、後のことなんてあまり考えられない。それならば一つや二つくらいは許容範囲だと思える。
「他に良さそうな物はないか?」
試しに聞いてみる。
「無いな。」
即答か。それに「今は無い。」では無く、ハッキリと「無い。」と。レヴェリの知識、経験をもってもできないか。
「まあ、薬を試すなら渡すさ。私もデータは欲しいからねえ。」
「ああ、三回分程くれないか。」
薬はあくまでも最後の手段。基本的には使わないようにしよう。
「いいだろう。それにしてもおかしな奴だ、茶をあれだけ警戒したくせに薬の方は受け取ろうとするのだな。」
「まあな。お前は自分が気になることなら手を貸す。そういう男だろ?」
「ハハッ、違いないねえ。さて、薬を調合するとしよう。茶は…自分で用意するといい。」
俺は椅子に座り、アンとメルシュは台所でごそごそとしている。お茶だけでなく、軽食も用意しようとしている様だ。
レヴェリは棚から乾燥した茶色の草や赤い木の実等を取り出している。
「それにしても大変な目に遭っている様だねえ。今も国から追われているんじゃないかい?」
「本当、大変だよ。国だけじゃなくてさ、同業者からも狙われるし、たまったもんじゃない。お前も声が掛からなかったか?」
「声は掛かったさ。だが、君も私がどういう人間か知っているだろう?やりたい研究がまだ山のようにあるのに君みたいなのに時間は掛けたくないのさ。それに世間じゃ十傑なんて呼ばれてはいるが、単なる力なら私はそこら辺の人間と変わらない。君等みたいな超人を相手にしたくないよ。」
「そうか。」
レヴェリ=ベントル、彼も魔薬の二つ名を持つ十傑の一人だ。彼は自身の作り上げた毒薬や爆薬で多くの人を殺めてきた。しかしそれも、ただ研究結果を確かめたかっただけだという。純粋だが、それ故に恐ろしい。
レヴェリは薬の生成に勤しむ。草や木の実をすり鉢で粉にし、混ぜ合わせる。それを液体に溶かし、煮詰めていく。ぐつぐつと煮えるその液体は鼻を突く異臭を放ち、部屋に立ち込める。
おいおい、こんな臭いのを飲むのか!できあがる頃にはもう少しマシになっていて欲しい。
火を止めた液体に白い粉を入れ、固めていく。
「できた。」




