42.やせ我慢と訓練
アンに頼み、食事を部屋で取らせてもらうことにした。兎に角大盛りが良いと念を押す。届いた料理は器に山が盛られていたが、それを十分と掛からず平らげた。
良い食べっぷりだとアンに笑われてしまったが、仕方がない。回復するにはしっかり食べて休むしかないからな。
それから三人集まって昨日できなかった話をした。俺がシスカに襲われたことを。二人を心配させてしまうかもしれないが、知らずに危険に遭うよりは断然良い。
二人に話したことで、今後の進路を変えることになった。森の中はやはり危険だ。シスカやラピスの様に森等障害物のある環境で力を発揮する奴ら相手では手負いの状態だとキツい。少し日数はかかるが、森を迂回してミルドに向かう。
こちらの話は終わり、今度は二人の成果を聞いた。二人とも上手くやったようで、潤沢とまではいかないが、暫く持つ程度には金も集まった。俺も稼ぎがあったら良かったが、暫くは二人には頭が上がらない。
話も終わり、村を発つことにした。二人はもう少し休めと言うが、長居もできない。いつ手配書がこの村に回ってくるかも分からないのだから。大丈夫だと立ち上がり、動き回って見せると、二人も渋々了解してくれた。
カキ村を発つと勇んだものの、やはり足は重い。二人を心配させない程度にゆっくりと歩く。
「クロ、荷物を貸しな。」
メルシュは俺の背負う荷物を強引に取り上げた。バレない様にやっていたつもりだが、彼女は騙せなかったらしい。「ありがとう」とただ礼を伝える。
「クロ、いいかい。無理をしなきゃいけない時もあるのは分かるよ。でも、今はそうじゃない。もっと甘えて良いのさ。クロ、あんたにはそういう所直して欲しいねえ。」
甘えるか…。確かにそう言うのは下手かもしれない。いつも気を張ってばかりだったな。でもそれは二人に対して失礼だったのかもしれない。頼り無いと思わせていたかもしれないのだから。
「ごめん、メルシュ。」
「分かってくれたならいいさ。」
再び歩き出す足は軽く、普段通りに近い。メルシュに重りを取ってもらったお陰だ。
さて、カキ村から森を迂回するルートだが、平坦な道であり、カキ村の反対の村までの途中、町や村などは特に無い。ゆっくりと体を回復させながら進むだけだ。
道のりの合間にアンの稽古をつけた。オベールの町から始めた稽古だが、それなりに身になって来ている。相手の攻撃を躱す訓練は、こちらの動きを見て適切な対処ができるようになってきたし、集中力も続く様になってきた。その辺のゴロツキならあしらえるだろう。
かなり慣れてきたと感じたところで稽古も次のステップへと進める。今度はナイフを扱う訓練だ。訓練と言ってもまずはナイフを持つことに慣れる様に指導する。ナイフも手の延長として自在に扱えなければ玩具も同然だからだ。料理をする時等、何かを切る時は勿論、ナイフを持つ時間を長くして、その手にナイフの感触をしっかりと植え付けてもらう。
その腕前はまだまだだが、いずれとなりで戦う日が来るかもと楽しみである。




