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41.帰還と心配

 シスカとの戦闘は終わったものの、体が言うことを聞かない。全身軋むような痛みがあり、指一本動かせない。本当に困った。腹は空くし、夕暮れ前には戻らねば二人が心配する。何とかしないと。

 俺が今できることは声を出すことくらい。ここで助けを求めていたら誰か来るだろうか。しかし、声を聞いて来たのが俺がお尋ね者だと知る者だったら…。博打だな。もう少し回復を待つとしよう。

 過去に限定解除参(サード)を使った時は一時間くらいはこのままだったな。気長に待とう。

 森の中、ただ一人寝転ぶ。木々の影に隠れたこの場所はヒンヤリとして気持ちが良い。

 そう言えば、二人はどうだろう。仕事上手くいってるだろうか。アンは正体をバレてないだろうか。じっとするのも落ち着かないもんだな。ああ、もどかしい。

 丁度一時間後、少しだけ体が動くようになった。これなら戻れるな。ゆっくりと立ち上がる。痛たたた!ズキズキとした痛みが全身を駆け巡る。これはキツいな。でも、早く帰らないと。一歩一歩確実に森の出口へと向かう。

 森を出る頃には完全に日は落ち、真っ暗になっていた。ふうっ、なんとか着いた。さて、宿へ行こう。


「クロ、こっちこっち!」


 宿へ着くと、宿の食堂でメルシュとアンが座っていた。俺は二人の居るテーブルの空いた席に腰掛ける。


「遅かったね。何の仕事してたの?」

「実は…。」


 話そうとしたとき、安心したのか気が緩み、そのままテーブルの上に突っ伏した。もうダメだ。メルシュ、後は頼む。すーっと意識が薄れていく。

 次に目を開けたのはベッドの上。窓から差し込む光からもう昼なのだと分かる。それにしてもお腹が空いた。昨日の晩から何も食べてないのもあるが、奥の手を使ったことで更に拍車がかかっている。早いとこ何か食べたい。

 そんな時、コンコンとドアをノックし、アンが部屋へと入ってきた。


「クロ、大丈夫?」

「ああ、痛たた。」


 アンの声に起き上がろうとしたが、痛みに体を捩らせる。


「無理しないで、そのままで良いよ。」


 アンが俺を止める。


「なんだかクロがいつもボロボロになって帰って来るから不安になるよ。いつかいなくなっちゃうんじゃないかって。」

「ごめんな。でも、そんなに簡単にくたばるつもりはないから大丈夫だ。」


 俯くアンにそう言葉をかけた。くたばるつもりはない。だが、この先戦うであろう奴らは強い。俺がもっと強くならないと。

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