40.檻と一撃
シスカは殴った方向に飛んでいくが、直ぐに体を捻り、こちらに向き直る。しっかりとダメージは入ったらしく、フラフラとした様子だ。
「どうだ?ここいらで止めにしないか?」
俺のその言葉にシスカは不敵に笑う。
「ハハッ、甘いな。悪いけど、まだまだこれからだよ。」
そう言い、懐に手を忍ばせるシスカは両手に合わせて十本のナイフを出した。投げ飛ばされたそれぞれのナイフは十本の指により操作される。指先だけの操作ではあるが、正確に俺を狙い動く。それは例えるならナイフの檻、こちらに逃げ場など無い。
クソッ、全方向からの攻撃なんて厄介過ぎる。ナイフ二本の攻撃のときにいけると思った俺が甘かった。限定解除弐をもってしても避けきれない刃は俺を捉え、腕に足に傷を増やしていく。どうすれば…。
「終わりだ、ジン!」
逃げ場の無い俺の頭に向けて一本のナイフが飛んでくる。
マズイ、あれが当たれば確実に致命傷だ。もう出し惜しみをしている余裕は無い。限定解除参。
拳をシスカに向け突き出す。俺はただそれだけの動作をした。
しかし次の瞬間、ナイフと共にシスカは吹き飛び、地は抉れ、木々は倒れていく。一体何が起こったか?以前ライザーと対峙した時に奴はその剣技で衝撃波を起こしていた。今回もそれと原理は同じだ。だが威力は桁違いである。それは俺の動作速度に起因している。
俺の放った一撃は一万分の一秒の速さで行ったものだ。音速の三十倍の速さと言えば分かりやすいだろうか。兎に角その凄まじい速度で放った一撃により押しやられた空気が衝撃波となりこの結果を生んだのだ。
何故こんなことができたか?それは俺の使った限定解除参の状態に秘密がある。この限定解除参という状態は体に秘めた力を限界以上に引き出すことでパワーとスピードを途轍もない所まで高めるものだ。しかし、欠点もある。まず、この状態は一秒ももたない。体がついていかないのだ。それに限定解除参を使うと動けなくなる。限界以上の力が体を蝕むからだ。
その為今俺は地に伏している。いつ動けるようになるかも分からない。まあシスカも動けないだろうし、大丈夫だろう。
その時、ガサガサと草をかき分ける音が聞こえた。何だ?そう言えば熊が出るんだったな。このままはマズイか。
次の瞬間、現れたのは小さな女の子だった。
「誰か分からないが、すまない動けないんだ。助けてくれないか?」
「ジン=ブラックか。悪いけどお前は助けない。でも殺さないでいてあげる。お前を殺すのは師匠の役目だからな。」
師匠ってまさか!女の子はシスカの元へ歩いて行くと、倒れたシスカを背負い、森の奥へと消えていった。




