36.反撃と秘密
メルシュの叫びはこだまとなって下水道内に今も響いている。それに合わせ俺達の走る足音も反響し、かなりの騒音と化し、自らの耳をも襲う。片耳を押さえつつラピスの元へと急いだ。
遠くの方で足音が聞こえた。ラピスのものだ。俺達が走っていることに気付き距離を取っているようだ。アンがいることだ、あまり深追いはできない。ここは…。
「あんたは止めときな。ここはあたしがやるよ。」
限定解除を使おうとするが、メルシュに止められる。まだ全快でない俺を気遣ってのことだろう。俺は頷き、後ろへと下がった。
メルシュはそのままラピスへと向かっていく。距離は依然として開いている。このままではダメだ。しかし、メルシュも無策では無い。一度足を緩め、地面に向かい拳を突き出した。舗装された下水道の通路はその衝撃により大きく凹む。そして波及した衝撃は地を伝い、水路にも及ぶ。水は波となり、速度を上げながら前方へと吐き出されていく。さっきまでしていたラピスの足音は、波の音に飲まれ、数秒後壁にぶつかったのであろう、ドンという激しい音がした。
やったか?そう思ったが、まだ動けるらしく、ピチャピチャと音を上げながら逃げる音が聞こえた。
「ごめん、逃がしちまったよ。」
戻ってくるメルシュは申し訳なさそうにそう言う。
「いいさ。さっきのでそれなりにダメージはあるだろうし、直ぐには攻撃してこないさ。」
この暗闇の中逃げ惑うよりよっぽど良い。
また襲われてもと、急いで外まで歩いた。外はまだ昼間、明るい日の光に当てられ目が眩む。
さて、ミルドへはここから南に向かう訳だが、一つ難所がある。森だ。その森はかなりの面積であり、迂回するとなれば三、四日余計に必要となる。それを考えると通る方が良い。だが、例えばさっきのラピスのような奴にいる場合、森という場所は隠れ、敵を狙うのにうってつけである。用心しないとな。
「クロ、メルシュ。あのね、私の話を少し聞いてくれる?」
深刻そうな顔でアンがそう言う。
「どうした突然?」
「ミルドに行くときっと分かってしまうから、だからその前に二人に話しておきたいの。」
俺とメルシュは顔を合わせ、そして頷いた。




