17.相談と安堵
「ジン!」
少女は俺を見ると駆け出し、抱き付いてきた。
「良かった、ジン。私、ジンが殺されちゃうんじゃないかって心配で…。」
「カナタ…。心配してくれてありがとう。俺はこの通り大丈夫だから。」
肩までの茶髪に、細い体付きのこの少女こそ、ここへ来た目的のカナタである。
何故町長の家から出て来たのか、それは彼女が町長の一人娘だからだ。
彼女の父親はそれは誠実なよくできた人物であり、ここキングストを発展させてきた。しかし、その中でも町長の手の届かない所、手が出せない所がある。そんなときに彼女は影として悪の芽を摘むよう動いてきた。それ故に裏社会で敵を多く作ってしまう。だが、その敵すらも打ち負かし、裏社会で一つの地位を築いたのが彼女である。
カナタは一つ落ち着いた所で顔を真っ赤にし、俺から離れた。
「そ、そうだ。良かったら上がっていって、お茶をだすわ。」
俺達はその言葉に甘え、客間にお邪魔をした。
椅子に座り、カナタに経緯を説明する。彼女の所へもにも俺を殺せと依頼が来ていた様だが、彼女も断ってくれたらしい。やはりカナタを訪ねて来て良かった。
「それでなんだが、カナタにも協力をお願いしたいんだ。」
「勿論だよって言いたいんだけど、パパを放っておけないし、付いて行くのは難しいかな。」
「そうか…。」
「ごめんね。でも、何か他に手伝えることがあれば、できる限りのことはするよ。」
そうだよな、カナタは父親を助ける為に裏社会の住人になったんだ。仕方無いよな。
「そうだカナタ、ちょっとお願いがあるんだ。こいつに何か仕事を貰うことはできないか?」
俺はコツメを指してそう言う。
「この子に仕事?うーん、ちょっとパパに聞いてみるよ。」
「ありがとう助かるよ。」
横に座るコツメの方を向き、きっと大丈夫だと頷いて見せる。コツメも少し緊張した面持ちだったのが解れていく。付いて来ていたもののずっと警戒していたからな、この少しの変化も嬉しい。
それからカナタは父親の元へと向かう。俺達はと言うとそのまま部屋で寛がさせてもらった。「ずっと歩いて来たから疲れたでしょ。休んでて。」とのカナタの言葉にすっかり甘えているからだ。
「カナタは付いて来られないか。ちょっと残念だねえ。」
「ああ、でも敵に回らないでいてくれるだけでも助かったよ。」
「そうだねえ。あんたはともかく、あたしゃカナタには敵わないからねえ。」
「カナタさんってそんなに強いの?」
アンが不思議そうに尋ねる。まあ一見すると華奢な女の子だもんな。
「強いさ。カナタはねえ…。」
話の途中変な物音がした。硝子の割れる音だ。近い、となりの部屋か。