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16.説得と質問

「ん、ううん、ここは?」

「目が覚めたか。」


 ハッと気が付き慌てるボウズ。


「大丈夫、何もしないよ。今降ろしてやるから。」


 メルシュが背中から降ろすと距離を取る。


「お前らおいらに何する気だ!」

「何と言われもな、強いて言うならお節介だな。」

「お節介?」


 首を傾げるボウズ。

 そう、お節介。ボウズの意思を聞かずに勝手にしてるのだから。


「もうすぐ山を抜ける、そこで夕食にしよう。ボウズも食べるだろ?」

「飯!いや、そんな言葉に…。」


 威勢良く強がるボウズからくぅ~と腹の鳴る音が聞こえた。顔まで赤くし正直なことだ。

 飯のため渋々と歩く様に見えてその顔は時折にっと明るくなる。何やら葛藤しているようだが、素直になれば良いのにと思う。

 山を抜け、平地に着くとそこで夕飯の支度にかかる。と言ってもやるのはメルシュとアンの二人で、俺はボウズと二人座って待っていた。料理ができるのを待つ間、ボウズと話をしてみた。ボウズの名はコツメ。元はここより北の町で暮らしていたが、両親を亡くし、盗賊に身をやつしたらしい。

 幼い子供が真面な仕事に就くのは難しいことを考えると仕方の無い選択ではある。


「コツメ、これから俺達はキングストの町へ行くんだ。そこに俺の知り合いが居る。そいつに話せばきっとお前でもできる仕事を教えてくれる筈だ。」

「オイラにでもできる仕事…。」

「そうだ、盗賊よりずっと良い仕事だ。どうだ行ってみないか?」


 あったばかりの何も知らない俺の話に少し戸惑いながらもコツメは確かに「行く。」と言ってくれた。

 行くと決まった訳だが、これで仕事が見付からなかったら…なんて弱気な考えじゃ駄目だな。俺のことを信用してくれたんだ、もし駄目だったとしても最後まで責任を持とう。

 キングストまで残す道は平原である。難所の山を越え後は安定した道を無理なく歩く。ここ数日でアンにも体力が付いたのか疲れた様子を見せない。頼もしい王女様だ。

 平原を歩いて三日、漸くキングストの町に着いたのである。遠目からでも分かるその町並みは全ての建物が白い壁に赤い屋根と統一感があり、とてもスッキリとしている。

 さて、カナタに会いに行きたいが、この町ではどうだろう、手配書は回っているだろうか。町の入口、検問の為列をなしている所、脇から観察する。見た所普通のようであるし、問題無さそうだ。

 列の最後尾に付き、順番を待った。やっと俺達の番まで回ったといきをと衛兵はギョッと目を丸くする。もしや…。


「あなたはもしかしてジンさんですか?」


 攻撃的では無く、ゆっくりと尋ねる様子の衛兵。何かあるのだろうか、だとしても素直に答えなくても良い。


「人違いだ。俺の名前はクロだ。」

「そうですか…。分かりました、キングストへようこそ。」


 町の中へと通しては貰ったものの警戒はしておいた方が良いな。

 町の中心部に一際大きな建物がある。ここキングストの町長の邸宅だ。何故ここに用があるのか、それは…。

 建物に近付いたその時、入口のドアが開く。中から現れたのは小柄で可憐な少女だった。

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