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15.子供と勝負

「子供?」


 身に纏う服装から盗賊なんだろうとは思うが、何で子供が一人で出て来るんだ?いやでも、さっきの下手な追跡から考えると納得か。


「殺されたくなかったら金目の物を置いていけ!」


 口上だけはいっちょ前らしい。だが、ナイフを持つ手は震えている。初めて人を襲うのだろうか。


「ボウズ、そのくらいにしろ。怪我するぞ。」


 注意をしてみるが「うるさい。」と跳ね返る。

 考えてみるにこいつは昨日の五人の仲間で、仲間が全員やられて仕方無く一人でこんなことをしているって所か。こいつはまだ幼く、幾らでもやり直しがきく。俺のようにならなくていい。よし、上手いこと説得してみるか。

 そう考えていると俺の隣からクスクスと笑い声が聞こえた。アンでさえこの様子なら、こいつには盗賊なんて似合わないということだな。じゃあ早い所終わらせてやろう。

 手に何も持たずゆっくりとボウズに近付く。そう、普通に歩くように。


「く、来るなあ!」


 必死になってナイフを突き出してくるが、その刃を片手で掴む。勿論手を切らない様に。そのまま強引に奪い取るともう片方の手でボウズの頭をチョップした。


「こら、危ないだろう。」


 ボウズは「いってー!」と叫び頭を押さえる。少し強めに叩いたからな、その分効くことだろう。


「何で襲ってきたんだ?」

「あんたらが弱そうに見えたんだ。」


 弱そうに、か。まあ見た目で言えば若い男女のグループ。そこまで強くは見えないかもしれないが、こんなボウズに言われるとはな。


「で、その弱そうな奴等に負けた訳だ。どうだ?こんな盗賊みたいな真似もうやめた方が良いんじゃないか?」


 諭してみるが、首を縦に振らない。


「ダメなんだ。おいら一人で生きてくにはこれしか無いんだ!」


 そう言い、また攻撃の構えを取るボウズ。

 そうだよな、幼いながら一人で生きて行くにはなりふり構ってられないんだよな。俺もそうだった。本当にどうしようも無くその言葉の意味が分かる。

 だが、出会った人間が違う。俺が出会ったのはあのクソッタレな師匠。お前は俺達だ。きっと違う道に連れて行ってやれる。そう思うのだが、言葉にしようとすると安っぽ過ぎて駄目だ。


「ボウズ、もう一度相手をしてやろう。お前が勝ったなら金をやる。それで負けたら俺の言うことを聞くんだ。」


 ナイフをしまい、構えを取る。初めに動いたのはボウズだった。無謀な突撃だが、それに対しこちらは動かない。繰り出される右拳をギリギリの所で躱し、カウンターにボウズの腹に一撃を入れた。


「俺の勝ちだな。ボウズ、俺達と一緒に来い。盗賊なんてしなくても食う道を教えてやる。」


 ボウズは既に気絶しており、その言葉は届いたのかは分からない。だが、届いていようがいまいが勝手に連れて行ってやる。

 ボウズの体をメルシュに受け渡した。


「クロ、優しいんですね。」


 アンは笑ってそう言う。


「優しいもんか。あたし達は今お尋ね者なんだよ。危険な道に引きずり込んだんだから。でも、嫌いじゃないよ。」


 とメルシュも笑った。

 優しい、か。なんだか久し振りに言われた気がする。殺し屋に優しいって、なんか似合わないけどな。

 ボウズを加え、山道の続きを歩く。何とか日暮れまでには麓に着くだろう。

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