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14.山越えとイライラ

 朝になり、山を越える支度にかかる。ゆっくりでも一日あれば越えられる山だが、なんとか日が落ちぬ内に越えたい。

 山には整備された道があるにはあるのだが、一歩山に入り込むと生い茂る木々が影となり昼間でも薄暗い。初めの内はその薄暗いだけで良いのだが、奥へ奥へと進むごとにジメジメとした空気に当てられ薄気味悪くなってくる。本当隠れるにはうってつけな山だ。

 俺が前を歩き、後ろをメルシュ、間にアンを挟んだ隊列で警戒しながら歩みを進める。逃げて来た男の話では山の中腹辺りで盗賊が出たんだっけ。そろそろその辺りだろうか。

 右に左に視線を向ける。視界には何も映らない。聞いた噂話からして昨日襲ってきた盗賊が全員という訳では無いだろう。必ず居る筈だ。

 今度は耳に意識を集中する。鳥の囀る声、葉の揺れる音。何もおかしなものは無い。

 だが確かに何か違和感がある。見られているのだろうか。出てこないのなら無理に戦う必要も無い、このまま進もう。

 そろそろ山の反対側にかかる所だが、違和感は続いている。鬱陶しいがイライラしてもいけない。ここは休憩がてら昼食を取ろう。

 少し開けた場所に丁度良い石があったのでそこに腰掛ける。


「全く面倒だねえ、やるなら早く出て来て欲しいよ。」

「本当にな。」


 アンは何が何だか分からないといった様子だったので、ずっと付けられていたと伝えた。すると、恐ろしいと感じたのか少し青ざめている。これはまずいと、鞄に入れてあったサンドイッチと水筒を渡した。お腹にものを入れて少しは落ち着けば良いが。

 一息ついていたとき、突然ナイフが飛んできた。そのナイフは目の前の地面に刺さり、当たりはしなかったが、「きゃっ。」と小さくアンが悲鳴を上げる。

 遂に出て来たかと思ったが、それだけで次が無い。何がしたいんだ?


「おい、出て来い!居場所はバレてるんださっさとしろ!」


 ナイフを投げてきた時点でその方角から居場所は直ぐに分かった。そちらに目を向けると確かに何が居る。出て来ないのならこちらから行くか。ナイフを抜きチラつかせるとかさごそと物音を立てて犯人が姿を現した。


「おおう、や、やるか!」


 その声は震えており、大凡盗賊とは思えない気弱さを感じる。そして何より驚いたのが、出て来たのが齢十程の少年であったことだ。

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