13.盗賊と夕食
「た、助けてくれ!」
男はこちらの後ろに隠れるように回った。
前方からは武装した盗賊達が五人、嬉々とした表情で走ってくる。おそらく良いカモが増えたと思ったのだろう。
だが、ただでやられてやる義理は無い。こちらも武器を手に取った。
襲いかかる盗賊共を対処しつつ、アンや男に攻撃の矢が向かない様、牽制する。守りながらの戦いは経験が薄く難しい。
メルシュとアイコンタクトをし、俺が守りを務め、彼女が敵の掃討に当たった。一撃の破壊力のある彼女の攻撃なら早くことを沈めてくれることだろう。
敵は三人と二人に分かれ、二人の方が俺に向かって来る。
敵の攻撃は一定のリズムを持っている。一人が攻撃したら、間を取らずもう一人が攻撃をするといった単純な連携だ。つまり、リズムを少しでも崩せたのなら、連携など脆く崩れる。
斬り掛かる敵に一歩踏み出す。振り下ろされる剣は俺の真横を通った。びっくりした様子の敵の一人に身を寄せる。もう一人の敵は勢いの付いた腕を必死に抑えようとするが、既に遅い。止めきれなかった剣がもう一人の胴に入ったのである。
俺は悶える敵一人を押し退け、もう一人の心臓目掛けてナイフを突き出した。
謝りはしない。仕掛けてきた時点で命のやり取りは始まっているのだから。
さて、メルシュをと思ったが、向こうも丁度片付いたところである。この程度の相手にそこまで手こずりはしないか。
「アン、もう大丈夫だ。」
「う、うん。」
ぎこちなくだが頷いたアンを見て少し落ち着く。
「あんたも無事かい?」
メルシュが後ろに隠れていた男に尋ねる。
「あ、ああ、助かった。それとすまんかったな巻き込んでしまって。」
「いいさ、皆無事なんだ。それより奴等はどの辺りで出たんだい?」
「山の半分といった所だ。奴等こっちが一人だと見て襲って来やがったんだ。」
山の半分。そこに盗賊達の根城があるんだろうか。なんにせよ明日登る時には気を付けないとな。
それから男はお礼にといくらか金を渡し、町の方へと帰って行った。金策に苦しい俺には嬉しい臨時収入だ。
辺りが暗くなり出す頃、夕食の準備を始める。メルシュが仲間に加わったことで料理がかなり豊かになった。依然アンと二人の時を考えると、二人ともそれ程料理の腕が無く、いつも肉と野菜を煮込んだスープだけだったのでかなり嬉しい。
アンもメルシュに「今度料理を教えて。」と話していたので、その内更に美味しくなった彼女の料理も食べられることだろう。
さて、夜も深くなってきた所だが、ここからが一番気が抜けない。この暗い状況こそ盗賊が動きやすいのだから。何も無いと良いんだかな。