11.来客と決意
家に誰が居るか分からないまま入るのは危険だ。俺はメルシュの家の側に身を隠し、メルシュだけ先に家に入るよう頼んだ。
「誰だい?勝手に人の家に上がったのは?」
「メルシュ、悪いな勝手に上がらせて貰ったぜ。」
「なんだいフィストか。どうしたんだいこんな時間に?」
フィスト!奴が来ていたのか。
「いや~、ちょっと話があってな。ジンのことなんだけど。」
「そうか、やっぱりあんたの所にも来たんだね。」
「もってことは、メルシュの所にもジンを殺せって依頼が来たのか?なら話が早い、なあメルシュ俺と組まないか?」
「組むって、あたしゃその仕事断ったんだ。」
「なんで?結構な額の報酬だぞ。」
フィストは金に釣られたのか。まあ仕方ないこいつはそういう奴だ。
「あたしはねえ、馴染みのある友人を殺すほど人間捨てて無いんだよ。」
「そうかい、じゃあ忘れてくれ。悪かったな勝手に上がってよ。今度また酒でも飲もうや。」
「ああ、またね。」
そう言ってフィストは家を出て行く。見付からないようにこちらも少し移動しながらフィストが去って行くのを待ち、奴が見えなくなるのを確認し、俺は家に入った。
「フィストも俺を狙ってくるのか。まあ想像できたけどな。」
「あのオッサンはダメだね。金に目がくらんでるよ。」
「そんなに高額だったのか?」
「ん、まあね。あんたは知らなくていいよ。」
落ち着いた所でアンを倉庫から出してあげた。彼女も知らない誰かが入ってきたと思い、気が気でなかったらしい。それは可哀想なことをしたな。
「さて、ご飯にしようじゃないか。」
そういえば晩飯の前にカリーナさんを助けに向かったんだったな。道理でお腹が空いている訳だ。カレーを平らげ一息つく。
「クロ、ちょっと良いですか?」
「どうしたアン?」
「私に戦う術を教えてもらえませんか?私も戦えれば足手纏いな所も少しは変わるかなと思うんです。」
確かにアンも戦えるならこちらも多少余裕が出てくるとは思う。でも付け焼き刃では危ないし、どうしたものか。
「良いじゃないかクロ、教えてやりなよ。」
「メルシュ。そうだな、良いぞアン。後で特訓しようか。」
「ありがとうございます、クロ、メルシュさん。」
「アン、いい加減その敬語はやめないかい?あたしゃどうもかしこまったのが苦手でねえ。」
「はい、わかり…。うん、分かったよメルシュ。」