創作童話「ほんとはね」
夜中に、「ウー、ウー」とうなり声がきこえてきました。
どうやら台所のほうからきこえてくるようです。
ぼくは、ふとんのなかで体がかたくなります。
「ウー、ウー」声のするほうへいってみたいと思うけど、体がうごきません。
つめたい汗がわきの下から背中のほうへ流れていきます。
とても気持ちが悪いです。
むりやり眠ろうとしたけど、気になって眠れません。
やだな…。
しょうがない、たしかめるか。
やっとのことで起きあがり、そろり、そろりと歩いて近づくと…うなっていたのは…冷蔵庫でした。
なーんだ、冷蔵庫か。
ぼくはてっきり…ばけものがいるのかと思いました。
するとこんどは「ジョロジョロ。ジョロジョロ」という奇妙な音が聞こえてくるではありませんか。
お風呂のじゃぐちをちゃんとしめていなかったのかな?
もう、お母さんたら。
そろり、そろり、まっくらなお風呂場へいってみると…。
じゃぐちはきちんとしめてありました。
「ジョロジョロ。ジョロジョロ」
ふりかえるとトイレから灯りがもれています。
バッとドアがあいて老人がでてきました。
「ギャー!」
「なーんだタカシ!おきとったかー」
「なんだ、じいちゃんか…」
ぼくはてっきり…。
ぼくがふとんにもどろうとすると「パーピー、パーピー」とへんな鳴き声がきこえてきます。
ついに、でた!とおもって、鳴き声のほうへ近づいていってみると…。
「パーピー、パーピー」ふすまの向こうからきこえています。
勇気をだしてふすまをあけると…。
老婆がいびきをかいてねているではありませんか。
「なんだ、ばあちゃんか…」ぼくはてっきり…。
やれやれ、タカシがふとんに戻ると、ふとんのなかになにかいます。
「ひゃあああ!」ふとんをはぐと、猫のタマがニャーと鳴きました。
タマか…。
タカシはタマをだいて眠りました。
「はやくおきなさーい!」
ぼくはすっかりねぼうしてしまい、お母さんに大声でしかられてしまいました。
けっきょくお母さんがほんとに一番こわかったようです。
(おしまい)