表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/32

27話 王宮

 


 ここはザガランティアの王宮。


 タイジュとギルバートは、その敷地内にある尋問室に向かっていた。歩きながら、ギルバートがヒソヒソ声で話しかける。


「おい、タイジュ。何で俺たちは案内されてんだ?暗殺容疑で捕まったバートン商会の関係者だぞ?しかも、俺は容疑者の一人なのに…」


「そりゃ、変装してるからだろ?」


「はあ?これが変装?ただフードで顔を隠してるだけだぞ?」


 タレースから戻ったタイジュは、ギルバートを連れて王宮に向かった。二人ともフードを被った姿だが、王宮の門番に何やら話をしただけで、タイジュとギルバートはすんなりと中へ通された。しかも、店主がいるという尋問室まで、案内されている。


 ザガランティアでは、国王暗殺計画などの重大事件は王宮の調査官が詳しく調べることになっていて、その容疑者は、調査が終わるまではこの王宮内にある施設に収監される。いま向かっている尋問室は、日本の裁判所にあたる場所だ。


 今日は尋問室に関係者が集められ、さらに詳しい話を聞く日だという。


(店主のオヤジは俺の恩人だ。無実の罪で捕まっているんだから、早く助けねぇーと。それに、アンナが提出したっていう手紙は偽造だが、それを調査官に出すってことは、よほど自信があるか、調査官も仲間なのか、どちらかだろう。どちらにしても、こっちは不利だ。国王暗殺なんて考えたこともないっていうのを証明する方が、難しいからな)


 タレースからの道中で、ギルバートはタイジュから、店主が捕まったと聞いた。なぜ早く教えなかったのだと責めるギルバートに、タイジュは教えなかったのは教える必要が無かったからだと言い、事の経緯を詳しく説明した。国王暗殺を計画した罪で捕まったというが、そんなことなど考えたこともない。しかし、それを証明するのはとても難しいことだと、ギルバートは理解していた。


 案内された部屋に入ると、広い部屋の奥には店主の姿が見えた。柵に囲われた場所にある椅子に座らされているが、比較的顔色が良く、元気そうだ。


(何日も捕まってるっていうのに、元気そうじゃねぇーか。ザガランティアの王宮の施設には拷問部屋もあるって噂なのに…。───はっ、まさか。拷問なんかしなくてもいいくらいの、はっきりとした証拠があるからか?有罪は決まっているから、拷問されなかったのだとしたら…)


 ギルバートの中に不安が広がっていく。


 タイジュは部屋に入ってすぐに置いてある椅子のひとつに座ると、ギルバートもここに座れという仕草をする。この椅子は関係者席のようだ。他にも何人か座っている。


 部屋の中央には、アンナと店主をつれていった役人が座り、その反対側には調査官と思われる怖い顔をした男が座っていた。


 ギルバートは隣に座るタイジュを見る。焦っているような感じはない。


(店主のオヤジが王宮に捕まったのは何日も前だ。そのままにしていたのは、調査官がちゃんとした調査をすると信じているからなのか?それとも他に何か助ける方法があるからなのか?)


 どちらにしても、タイジュは店主を取り戻すと言った。その言葉を信じるしかない。


 中央で、調査官が口を開く。


「それでは、国王暗殺計画を首謀したというバートン商会の店主について、話を聞かせてもらおう。まずは、そちらから」


 役人の男に話すように促す。


「はい。自分の隣にいるブロア家の教育係アンナが勇気を出して申し出てきたのです。真実に違いありません。ギルバートの手紙の筆跡は、本人のものです。ギルバートと隣国タレースの貴族が良からぬことを企んでいたのは明白。そして、ギルバートは店主の命令でタレース王国に行っていました。これは、店主とギルバートが共謀している証拠です」


「たしかにこの書簡の筆跡は、ギルバートのものに似ている。これはギルバートの部屋から見つかったというは真実なのか?」


 調査官はアンナを見る。アンナは悲壮な顔をして証言する。雇われている家の三男を訴えるのは心苦しいが、勇気を出して正義を執行した、そんな表情をしている。


(かなり演技が上手いな…)


 ギルバートは感心していた。


「ギルバート様は16歳から家を出て世界を旅していたと聞きました。その時にバートン商会の店主に会い、そこからバートン商会で働いているそうです。ギルバート様は、店主のことを恩人と呼んでいます。そんな店主に暗殺を命じられて断れないだけなのかも…。それでも暗殺を企むのは重罪です。私はこの王国のために、勇気を出したのです。ギルバート様には一刻も早く、罪を償ってほしいです」


 アンナは涙ながらに、ギルバートは悪くない、悪いのは店主であると言いながらも、ギルバートを早く捕まえろと訴えている。


(アンナに動揺した素振りはない。デヴァルのことはまだ知らないようだな…。まあ、あの騎士団の様子じゃ、タレースの王都に帰っても、まともな報告はできねぇーよな。化け物に大勢殺されました、なんて言えねーし)


「二人の訴えは分かった。だが、なぜ店主が王国暗殺を企むのだ?」


 調査官は役人の男に聞く。


「自分のようなただの役人には、理由など分かりません。ただ国王暗殺が成功したら、タレース王国での地位を約束してもらっているのでしょう。このザガランティアより、タレースの方が大国ですから、そちらに店を移すことを願っていたのでは?」


「ふむ。では店主はタレース王国での地位に目が眩んで、こんなことを計画したと?」


「貴族にしてやるとでも言われたのでしょう。ただの商人にとって、これほど魅力的な申し出はない。そして、タレースに店を移せば、もっと儲けることができますからね。店主は金と地位に目が眩んだのですよ」


 役人の男は、自分の言っていることにだんだんと熱が入り、終いにはそうに違いないと断言した。証拠などひとつもないのに。


「そうか…。だが、ひとつ確認したいことがある。先王様のことを覚えているか?」


 調査官は脈絡のない質問をする。男は一瞬驚くが、丁寧に答える。


「はい。先王様は、たしか20歳で王になり、25歳で崩御されました。お身体の弱い方でほとんど人前には出てこられなかったと記憶しております。崩御後すぐに幼い皇太子が即位され、それが今の王です。亡くなられたのは、もう20年以上前の話かと…」


「さすがタレースの間者スパイだな。よく調べている」


「なっ、何をいっているのですか?スパイとは誰のこと…」


 調査官の言葉に動揺した男は、思わずアンナの顔を見る。アンナは一瞬戸惑ったが、この役人の男がスパイ?という疑いの表情を素早くつくる。


(アンナは度胸もあるようだな。しかし、調査官は何が言いてぇんだ?)


 疑問に思うギルバートが見てる前で、調査官は言葉を続ける。


「バートン商会の店主が国王暗殺を計画するはずないのだよ。しかも、理由は貴族の地位や金がほしいからだと?───そんなことはあり得ない」


「そっ、それは…。一体どういう意味で…」


 ますます混乱する役人の男とアンナだが、その時、さらに驚くべきことが起こった。この尋問室に、王が現れたのだ。


 現在のザガランティア王、イスファールは25歳。まだ若いが賢王だと評判だ。その王が現れ、室内にいた者たちは騒然とする。

 騒然とする中、国王は店主に向かって歩いていく。そして一言こう言った。


「父上、こんなところで何をしているのです?」と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ